⑥
「王命を無視し、罪のない王女エカチェリーヌを弾劾し死なせた。その責任をとる覚悟はあるのだろうか?」
「聖女ユリの命を狙ったのです! 王女といえど」
「いつから聖女はそこまで偉くなったのだ? 我が国の創設の神話を知らぬというのか? 創造神に愛されているのはユリではなく、王女エカチェリーヌではないのか?」
激怒する国王に言葉を連ねる元婚約者。その両親は子を守ることを諦め保身に走る。
「王女を貶しめ、失わせた罪は大きい。そなたらを」
『ちょっと待って国王』
突然天から声が響いた。
「ん? なんの声だ?」
「創造神よ! あたしを守りに来てくれたんだわ!」
「なんだと!?」
臣下たちが神の圧で膝をつく中、平然と立った国王は創造神に問うた。
「王女エカチェリーヌを貶めた偽聖女を捌いているのだ。創造神といえども」
『その子、聖女。で、その男、勇者。もうすぐ魔王が復活するから、この世界に必要なんだよ』
「は?」
「ほ、ほら! あたしは聖女よ!」
「僕が勇者……?」
喜びに沸く二人を横目に、創造神は国王に言った。
『魔王討伐の成功を願ったのは他でもないエカチェリーヌなんだ。それさえ終われば、煮るなり焼くなり好きにして構わないから』
「……では、魔王討伐を成功させれば、二人の罪を無罪とする。ただし、失敗すれば即死罪だ」
国王のみに言葉に喜ぶ二人。国王の真意を悟ったそれ以外の者は、二人から距離をとる。
「今日から死に物狂いで修行するように」
そう言って、奴隷用リングを持ってくるように指示した国王。どこにいるかわかり生死を握るリングを二人につけさせた。
「あたしは聖女よ! 絶対魔王を倒してみせるわ!」
「ぼ、僕が勇者……ユリと愛し合うのはやっぱり運命だったんだよ!」
「ひぃ、ひぃ、ひぃ、き、聞いて、ない、わ。聖女の、修行が、こんなに、きつ、い、なんて、ひぃ」
「君の、せい、だ、あのまま、いけば、勇者、なんて、なら、なくて、すんだ、のに」
お互い罵倒し合う聖女も勇者。
「前の聖女様と勇者様もこなした修行なのです。そもそも、きちんと聖女と貴族子息として訓練をこなしていれば、こんな大変に感じていないはずですよ?」
指導役の激しい訓練に、聖女と勇者はこんなはずじゃなかったとお互いを罵るのだった。