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「今日は、ダンジョンを生成していこうと思いますわ!」
“異世界の姫”というアカウント名で、イリアが動画を投稿し始めた。わたくしが、いちいち驚くのが面白いということで少しずつだが、伸び始めました。
「しかし、わたくしはエカチェリーヌ・ラ・ロメルス。映えあるロメルス王家の第一王女! 注目なんてお母様のお腹の中からされ続けているわ! この程度の登録者数でわたくしが満足するとお思い!?」
『さすが姫様』
『志が高い』
『無理じゃね? うける』
「ということで、今日はロメルス王家の秘術。ダンジョン生成をしていこうと思いますわ!」
『AIの加工技術はここまできたのか』
『手から火を出してみたり、部屋を水浸しにして下の階の住人に怒られたり、草原を燃やして消防に怒られたり、そこから路線変更して地球の物に驚く姫君路線できて……ここまで長かったな』
『やってることが迷惑系Vtuberというか、犯罪なんだよな』
「今回は下準備は抜かりないですわ! 潤沢な資金を使って、この辺りの森を買い取りましたの!」
『クソ田舎』
『坪単価いくら?』
『森を買うってなるとかなり金かかるんじゃない? 姫様何者?』
「ちなみに、わたくしのメイドがしっかりと経費として計上してくれているから、税金対策もバッチリですわ!」
『メイド有能w』
『動画編集もメイドの仕事なんだろ?w』
『というか、姫君が国に収める税金の対策するとか矛盾w』
自然豊かな空気の美味しい森ですわ。撮影もイリアがしてくれていて、わたくしは意気揚々と魔術の下書きをしていきます。
「ここに入口を作って、」
『本物の魔術みたいw』
『地上部分しか書いてなくない?』
「地下は異空間につながるから、このままでいいんですの! さぁ、わたくしの魔力と一滴の血を」
「姫様! 血はNGです! 規約違反でBANされます!」
『メイドちゃん』
『声可愛いメイドちゃん』
『メイドちゃんの顔も見たい』
『てか、姫様16歳の未成年なんだろ? 土地の権利は誰にあるの?』
「こ、こほん。では、血以降の部分だけ美しい森林の光景をお楽しみください」
べ、別に前世では16歳だったから、この世界の肉体が18歳でもサバ読んだとかにならないですわ! 問題ありませんの!
サクッと魔術の大切な部分を終わらせて、王家の秘伝の呪文を唱える。呪文は流石に公開できないと思ったため、その間だけイリアが声を被せて“王家の秘伝の呪文を唱えています”と隠してもらった。
ごぉぉぉぉぉお!
『なんだ!?』
『地震!?』
『結構デカくね?』
『姫様の呪文と同時に地震が来るとか、姫様持ってるな』
『ニュース速報出た?』
『え、まだ来ないんだけど』
『南海トラフ?』
『静岡住みだけど、そこまでデカくないぞ?』
『北海道住みだけど、南海トラフにしては北海道揺れすぎ』
「できましたわ!」
無事に完成したダンジョンに、わたくしは満足げに胸を張ります。
『臨時ニュースです! 先ほど、日本全国で地震のような揺れを感知しました。現在、地震かどうか調査中です。気象庁からの発表をお待ちください』
『ニュースきた』
『沖縄も揺れたんだけど』
『台湾からみてるけど、台湾は全く揺れてない』
『え、謎の揺れって何?』
『日本だけってこと?』
「ダンジョンを生成する際、国全体が揺れるのは常識でしょう? 皆様、何を騒いでいらっしゃるのかしら?」
わたくしが首を傾げて、画面に向かってカーテシーをする。
「それでは、皆様。次回はこのダンジョンを探索していこうと思いますわ! チャンネル登録、どうぞよろしくお願いしますわ。ごきげんよう」