【削除済み】千夜異世界物語::三千世界線
車に5人乗っていて海がきれいだからと2人降りました。
私はケトルを沸かしていてタラコうどんを食べました。
日本海にこんな綺麗な海はありません。
私は怖くなったのでうどんをひたすらむさぼりました。
まるで、海は波立つウユニ塩湖のような美しさでした。
車はタイルアートが施されたバカでかいゲートをくぐると、なにかありそうで特に何もありませんでした。
私は外の景色の美しさを享受し、外へ出るでもスマホを弄り倒すこともなく、淡々と景色を眺めていました。
ここで、夢はそろそろ終わる予定でしたが、一向に終了処理が走りません。
起きたら蝉の大合唱拷問が再開されるので、これでも良いのだと思いました。
車内には、YouTuberの運転手と私の隣には知らない女性――運転手のなんらかの関係があるであろう――がおりました。
彼らは私とは違って陽気な人間でありました。
なぜ、行動を共にしているのかさっぱりわかりませんでしたが、
私は"また"流されてついていったのです。
「綺麗じゃねー」
「ほんまやなー」
「アポカリスット飲むかー?」
彼は少し右を向いており、私に聞いているようでした。
私は、微笑を浮かべ、ご厚意に甘んじる。
「ありがとうございますー」
それから10分ほど車を走らせた後、目的の海水浴場へ到着しました。
沖には人工フロートが浮いており、ここよりもずいぶん栄えているのが見て取れました。
私は、そのフロートを見やり、ある冒険家が書き残したツイートが脳裏に浮かんでいました。
ジャバラフロート。名産品はジャバラと桃、そして砂金。またの名を楽園と呼ぶ、"理想郷"である。
「報告は誤りだからだ。あの島には絶望しかない」
「隠匿通信を解析されたらしい。ドローンが俺を探している」
「もうダメpppoi」
彼がここへ戻ってくることはありませんでした。
「おーい!なにしとんじゃー?」
――我に帰ると、彼らが呼んでおり彼方へ駆けだしました。
彼らと瓜割りゲームを楽しんだ後、今では貴重な花火を楽しんで青春の一ページを飾った。
――――
「ずいぶんと、この国も狭くなってしまいましたね……」
海面上昇でヒトの住む場所は、動物と同じになり、新たな土地開拓を人類に強いられたのだ。
異世界と混じりあい、向こうの海水が流入した事案から20年が経過した。
生態系は破壊され、漁をするにも海上護衛が必要になってしまった。
「この世界が吹き飛ばんかっただけ儲けもんじゃけん」
そういう考え方もあるのか。
確かに、別の世界と繋がっただけマシだったのかもしれない。
宇宙空間に放り出される可能性すらあることを考慮すると、まさに幸運だったと考えることもできるのだ。
「なーんもなくておもろないわ」
彼女の言う通りである。
娯楽はやや衰退し、生きるための労働時間が増加した。
こうして、我々は退屈な日常から抜け出すために、一攫千金のためにここへ来たのだ。
そう、我々は遊びに海に来たわけではない。
ジャバラフロートへ向かうべく、民間護衛艦6隻、万全を期して強襲揚陸"艇"まで用意したのだ。失敗するわけにはいかない。
――――
第一次異世界事変で世界はさらに様変わりした。
戦後の混乱に乗じて、あまりにも有耶無耶になったものが多すぎる。
民間護衛艦と一部名を変えたのもそのせいである。
ただ、彼らは道中を護衛してくれるだけで、それ以外は不干渉なのだ。
よって、民間護衛艦と呼称される所以である。
「本日は、よろしくお願いいたします」
「はっ、貴殿らの航路に幸運あらんことを」
民間護衛艦の皆さんは、半数以上が海外――今は死語?――の人が占めていたが、流暢な日本語で話してくれました。
出発式が始まる――。
「
この度は、海上護衛をしていただき誠にありがとうございます。
まずは荒れ模様の海でなく、ほっとしているところでございます。
さて、事前に用意しました作戦要綱をご覧ください。
A地点では、ご存知の通り海獣が多く、危険な海域です。
皆さまのお力添えいただけるおかげで突破が可能となります。
B地点では、潮が荒いため、また航路が狭いため陣形変更となります。
C地点からは、霧が濃くなってくるため、再度陣形変更および手筈通りでお願いいたします。
D地点では、海獣との交戦が避けられないことでしょう。
どうか、無事に通過いたしましょう。
E地点が目的地。ジャバラフロートですが、ここからは我々の仕事ですので、待機願います。
最後に――我々は、ジャバラフロートと平和的な解決を努めることをここに宣誓します。
同じような悲劇を繰り返してはなりません。
20XX年7月21日、サルベージプロジェクト一同
」
はー、マイクを持つ手が震えていたが、どうにか読み上げることができた。
出発する前からどっと疲労が溜まってしまった。
まばらな拍手が送られる。
私の方はまだよい方で、彼ら――YouTuber――の目的は極めて不純なものであった。
彼らは、動画ネタのために乗り込むだけなのだ。
それが悪いと責めることもないが、民間護衛艦サイドからすれば、
我々は一緒くたのチームであり、ただ金とコネを積んだ一般人であるからだ。
――――
出発式が終わって、先頭の艦に乗り込む。
金を払っているからと言って、機密事項は撮影不可で、目隠しをしたまま一区画へ案内される。
そこは普段空き部屋であろう居住区画であった。
部屋には急ごしらえのテーブルとパイプ椅子が用意されていた。
いよいよ、A地点の海域に近づいていた。
警報が鳴り響く。
「戦闘準備、よーい」「戦闘準備、よーい」
どうやら戦闘は避けられないようであった。
「魚雷命中確認よし!」「魚雷命中!」
「敵、沈黙確認!」「よし!」
艦内放送と外の光景を見るも、片舷で起きているようだった。
おお、さすが対獣装備なだけある。あっさりと倒して、まもなくB地点を通過……いいや、C地点の目前に到着していた。
赤い霧が目前に迫っていた。艦内の揺れを強く感じる。
視界は当然悪く、進む速度が遅くなる。霧の中に入った途端、身体の熱っぽさを感じたくらいで、服用していた対処薬で発作を抑えた。
艦内で一人暴れた程度で、それ以外は順調な旅路であった。
D地点に差し掛かると――なんだあれは!?
陸上型がいるなんて聞いてないぞ!そんな私の心配をよそに一斉射撃をお見舞いし、海獣は呻きながら倒れた。弱くない?
海獣はどこかヒトを思わせるようなフォルムであり、気の毒に少しだけ思った。
ヒトの真似事か、まるで――フロートを建設しているように見えた。
――――
そうして私は1時間ほどで、ジャバラフロートへ足を踏み入れ――えっ?
次の瞬間、帰りの旅路であった。
手にしていた手記には、こう書かれていた。
「和平および交易の交渉は無事成立。彼は幸福そうであったため、そっとしておくことにした」
は?書いた覚えがないが、私の筆跡であることは確かだった。
――その後、彼を名乗るアカウントが無事を知らせたが、本人か定かではない。
「あー!?ワシらの動画撮れてないじゃけん!?どうなっとんじゃー!」