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3話


「えっと……ここら辺だよな」


 俺は他県にある取引先の工場で打ち合わせするため、一人でその付近まで車で来ていた。


「──お。あった、あった。良かった……」と、工場を見つけると、車を停める。時計をみると、まだ30分も余裕があった。


「さて、どうするか……どこかで時間潰しできる所あったかな?」


 ──とりあえず俺は、車を動かし来た道を戻ってみる。すると古びた木造の建物が目に入った。俺はとりあえず駐車場に車を停めてみる。


 車から降りて、店に近づくと骨董屋と書かれた看板が目に入った。骨董か……興味がないけど、フラッとみて戻ったら丁度いいくらいかもしれない──俺はそう思って店の中に入った。


「いらっしゃいませ」と、カウンター越しに、店主と思われるシワシワで白髪の老人が話しかけてくる。俺はペコリと頭を下げ、奥へと進んだ。


 壺……掛け軸……鎧……色々と置いてあるけど、どれも高そうだ。ゆっくり歩きながら見ていると、機械式の古びた腕時計が目に入る。


 スゲェー、中が見えてカッコいい……俺は今ある時計で満足していたが、その腕時計が気になり、見入ってしまう。


 周りに誰も居なくて暇だったのか、店主が近づいて来て「あんた、その時計が気になるのかい?」と、話しかけてきた。


「あ、はい……」

「ほぅ……」と、店主は白い髭を撫で始める。


 そういえば値段を見てなかったけど、これいくら何だ? ──ゲッ、10万って高ッ! 俺が逃げようとゆっくり動き出すと、店主は髭から手を離し「あんた、これが気になるっていう事は過去に未練でもあるのかい?」


「え……?」

「この時計は1回のみ、過去に戻れる不思議な時計なのだよ」

「はい?」


 何だこの人……色々いって買わせようとしているのか? ヤバいやつだな。俺が時計に目をやると、店主は時計を手に取る。


「もしあんたが買ってくれるなら、5万円に負けるけど、どうする?」

「え……半額じゃないですか。良いんですか?」

「えぇよ」

「えっと……ちゃんと動くんですか?」

「もちろん、動くよ」


 動くのなら、たとえ不思議な力が無くても、1個ぐらいこういうの持っていても面白い気がする。


「──今から取引先と打ち合わせなので、ちょっと考えさせてください」

「はいよ」


 店主はニコッと微笑むと、時計を商品棚に戻す。何だか怪しい気はするけど、時間はあるんだ。ゆっくり考えればいい。


 ※※※


 打ち合わせが終わり、俺はコンビニでお金を下ろすと、急いで骨董屋に向かった──思った以上に打ち合わせが長引いてしまったけど、開いてるかな?


 休憩時間にあの時計を調べてみた。まったく同じものはなかったけど、似たようなタイプは中古でも10万以上はしていた。だったら5万はお得だし、本当に過去に戻れる機能があるのなら……。


 俺は駐車場に着くと、直ぐに車から降りて骨董屋に駆け寄る。ドアに手を掛けると──骨董屋はまだ空いていた。


「良かった……」と呟きながら、中へと入る。


「いらっしゃいませ──あぁ、さっきのお客さんか」

「あの……さっきの時計、まだあります?」

「あぁ、あるよ。ちょっと待ってくれ」


 店主は取っておいてくれたのか、カウンター越しでしゃがみこむ──と、黒の収納ケースを手に持ち立ち上がった。


 パカッとケースを開くと「こいつで間違いないかね?」


「はい、大丈夫です」

「じゃあ、約束通り5万円ね」

「ありがとうございます」


 会計を済ませると、店主は「じゃあ、説明書が付いてないから、説明するぞ」と言って時計の説明を始める──。


「分かったかい?」

「はい」

「最後に大事な事を伝えておく。このタイムリープ機能は一回だけと説明したけど、その他に一回、誰かが行った事ある年には行けないって事だ」


 中古品だから誰かが行った事のある年は使えなくなると? なんか凄い設定だな。


「えっと……それはどうやって見分ければ良いんですか?」

「なに、行きたい年に合わせてタイムリープ機能を発動させるボタンを押してみればいい。反応が無ければ、そこは外れだ」


 なるほどねぇ……まだ信じてはいないけど、俺が行きたい年が使われていたらショックだな。


「悔いのないように使ってくれよ」と、店主は言うとケースの蓋を閉め、俺に渡してくれる。


 俺は受け取り「ありがとうございます」と返事をすると、店を出た。



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