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2話

 俺は一晩、明美ちゃんに告白するか悩んで、告白することを決める。お互い部活をしているので、終わってから教室で待ち合わせする事にした。


 落ち着かなくて早めに部活を切り上げ、誰も居ない教室で待っていると、教室のドアがガラガラ……と開き、明美ちゃんが入ってくる。


 窓際で立っていた俺は、ゆっくり明美ちゃんに近づいた。明美ちゃんも、ゆっくり俺に近づき「お待たせ、話って何?」と言って、向き合うように立ち止まる。


「えっと……」


 おそらく他の生徒は部活か帰っているから誰も入ってこないとは思うけど……落ち着かないから早めに「その……明美ちゃんは──好きな人いる?」と切り出した。


 明美ちゃんは突然、そんな事を聞かれて困っているのか眉を顰める。そして俯き加減で「──うん、いるよ」と答えた。


「そっかぁ……」


 いる……のか──でも、それが隆や他の男だとは限らない。俺はゴクッと唾を飲み込み、自分であって欲しいと願いながら「俺……中学の時からずっと君の事が好きだったんだ」と告白する。


「え……」と、いきなりの告白に明美ちゃんは声を漏らし目を丸くして固まった──そして口を開くと「ありがとう……でも、ごめん。私、隆君が好きなの」


 予想はしていたものの、自信もあっただけにショックが大きい。俺は何とか「──そう、仲いいもんね」と返した。


 明美ちゃんは顔を上げ、ニコッと微笑むと「うん。あ……隆君の事は、まだ内緒にしててくれないかな?」


「もちろんだよ」

「ありがとう! 話っていうのはそれだけかな?」

「うん、ありがとう」

「うん」


 明美ちゃんは返事をすると、小さく手を振り、教室を出て行った──。


「はは……そうだよな」


 俺は空笑いをすると、ゆっくり歩き出す──廊下を出ると……廊下で立ち止まっていた弥生さんと、ぶつかりそうになってしまった。


「あ、ごめんね」と、弥生さんは言って廊下の端による。


「いや、大丈夫」


 俺がそう返事をして、歩き出すと、弥生さんは「あ……」と、声を漏らしながら俺の方へと手を差し出した──が、直ぐに引っ込めた。俺は足を止め、「どうしたの?」と声を掛ける。


「あ……ごめん。あのね──私いま、二人のやり取り聞いちゃって──」

「あ~……そっか。教室のドア開いてたもんね。はは……恥ずかしい所、見られちゃったな」


 俺がそう答えると、弥生さんは黙って首を横に振り、俯き加減で「そんな事ないよ。私にはそんな勇気すら無いから、行動を起こせるだけで凄いと思う!」


「ありがとう」

「うん……」

「それじゃ俺は行くね」

「うん、また明日ね」

「うん」


 俺は弥生さんを置いて昇降口へと向かって歩き出す──弥生さん、慰めようとしてくれたのかな? でも、ごめん……初めて口に出して告白したいと思う程、明美ちゃんの事が好きだったから、しばらくは元気なんて出ないよ。


 ※※※


 月日は流れ──俺は商社に就職し、営業マンとして働いていた。出張や顧客とのやり取りで、クタクタになりながら帰る。そんな毎日の繰り返しで、恋愛の“れ”の字もなく過ごしていた。


「今日も疲れたな……」っと呟き、俺はスーツを着たままベッドに横たわる──ドキドキする事もないし、何かつまらねぇな……と思いながら、天井を見据えた。


 ──こんなんだったら学生時代に戻りたいな。戻るなら……やっぱ高校かな。そういえば、あのとき好きだった明美ってどんな顔していたっけ?


 俺は起き上がり──本棚の前に立つ。アルバムを手に取ると埃を落とした。せっかくなので一枚一枚、ゆっくりとめくり……同級生の顔を思い出していく。


 ──あ、そうそう。明美、こんな顔をしてた……やっぱり可愛い顔しているな。


 大人になった明美はどんな顔をしているんだろ? あの頃はあまり化粧していない感じだったし、今はもっと美人になっているんだろうな。


 次のページをめくると、真っ先に目に入ったのは……弥生さんだった。あれ……こんな感じだったっけ? 黒髪のポニーテールにクリッと可愛い瞳、プクッと柔らかそうな唇……美人でフワァっと優しそうな表情をしている。


 ──考えたら俺……高校の時は昭美さん一筋で他の女子の事は見てなかった気がする。気になった俺はページを次々とめくり弥生さんを探し出した。


 真剣な表情でバレーボールをする弥生さん……眼鏡を掛けて真剣に授業を受けている弥生さん……真面目そうなのに、クラスメイトと、おちゃらけて楽しそうにしている弥生さん……アルバムの中だけでも、様々な弥生さんを見る事が出来た。


 ──俺はアルバムをソッと閉じ、元の位置に戻す。そして、ベッドの前に立つと、ゆっくり座った。


 今こうして冷静に振り返ってみると、弥生さん、優しくて良い子だったな……彼女は、皆にそんな感じだったのかな? それとも俺だけ?


 もしかして、俺の事を好きだったからだったりして? ──って、勘違いで痛い目に合っているのに俺は何を考えているんだ。


 ──まぁでも、もし過去に戻れるなら聞いてみたい気がする。


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