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四苦八苦の余裕のファック  作者: キユ
序章
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5.ギフト

          



 話が終わった後、シエルと共に部屋を出て、下の階の食卓に向かうと一人老いたお婆さんがいた。おそらくシエルの祖母なのだろう。すでに椅子に座って俺たちを待っていたようだ。


 食卓は漠然としていて薄暗く、ろうそくの光が唯一の光源だった。

 

 すでに机には3人分食事が置かれている。俺の分も含まれているのだろうか?


 「ほらほら、ノアも座って!」


 シエルはすでに座っており、シエルの隣の席に座るよう促してくるので隣に座った。俺の分の食事もあるみたいだ。


 おばあさんは、ゆっくりと手を合わせ食事を始めた。それに続きシエルも食べ始めたので、この世界にはいただきますのような食事の時の挨拶はないようだ。


 「はじめまして、シエルの祖母のヨミジと申します。シエルから道端で倒れてたと聞きましたが、もう体の具合は大丈夫ですか?」


 「はい!お陰様で」


 「それはよかった」


 ヨミジさんは、シエルに似て優しい性格のようだ。どこか雰囲気が似ている。


 「それで、ノアさんはどこから来たのですか」


 「ノアはねー!異世界から来たんだよ」


 俺ではなくシエルが答える。よほどその話をヨミジさんにしたかったのだろう。目が星の形をして輝いている。


 「本当なんですか?」


 「はい、魔術とかは存在しない世界ですけど」


 ヨミジさんは驚いた顔をして俺に詳細を尋ねようとするが、シエルが後で詳しく話すからと代役を買ってくれた。


 俺も二度も同じ話をするのは疲れるから、それを気遣ってくれたのだろう、ありがたい。


 「ごほん、失礼。話はシエルから聞きます。ノアさんも疲れてらっしゃるだろうから」

 

 「分かりました」


 「ノアさん、これからは我が家にお住みください。異世界から来たのなら住み家もないでしょうから」


 「ありがとうございます!」


 そうこう会話してる内に、俺は食事を取り終えていた。今日は話してばっかりでもう眠い。

 

 「では食事も取り終わりましたし、今日はお休みなさってください。シエルの隣の部屋に客人用の部屋が有るますので、そちらで」


 「じゃあ行こっか」


 そう言い、シエルが客室用の部屋へと案内する。部屋にはベットと机が置いてあった。長年誰も使用してないようだが綺麗に掃除されていた。


 「おやすみ、また明日ね」


 シエルははそう言い、ドアを閉めて自室へと戻った。俺は電気を消し、ベットに転がってもう寝ることにした。


 いざベットに入ると様々な感情が押し寄せてきた。死んでしまった喪失感、転生して皆んなを探す使命感。そして、明日からどうすればいいのかという不安など。だが、眠かったので無理にでも目を閉じて紛らわせた。


 そのまましばらく目を瞑っている内に、俺は眠りについた。



  ―――――



 目を覚ますと、死ぬ前にあの残念天使にあった白い空間にいた。


 「……なんでまたここにいるんだ」


 俺の転生は成功してるのでここにくることはないはずだが、なぜ俺はここにいるのだろうか?


 「ごめんね、私が呼んだの!」

 

 振り向くと、そこには残念天使が立っていた。やっぱり犯人はこいつか!


 「で、何の用?」


 「君が私の体に転生したから、私のこと心配してないかなって思ったの。でもその様子だと気にもとめていないみたいだね」


 確かに俺が残念天使に転生したら、残念天使の魂はどこに行くのか気にならなかった訳じゃないが、こうして目の前にいるからには問題なだろう。


 「私はもう天使たちの中で残念天使というレッテルを貼られちゃってるの。だから別の種族に転生して、今度は残念っていうレッテルを貼られないようにしたいなぁと思ったの!だから身体を譲ったんだよ!」


 「悪いがお前は何に転生しても残念っていうレッテルを貼られるよ。それに、お前が性別男にしたことは一生恨むからな」


 「譲っても私の身体だからさぁ。君にいたずらされると思うと男にしたほうがいいかなって!」


 「いたずらって、そんなことしないよ。多分……」


 「ほらやっぱり。はぁ、まあ君も頑張ってね。もう私の転生も完成するみたらいだし君とは最後のお別れになるから」


 「ああ、お互い頑張ろうぜ」


 そう言った直後、意識が遠くなっていく。


 (ああ、やな感覚だなぁ)


 そう思った途端、俺の意識はなくなって倒れてしまった。


 ―――――

 

 朝、晴れの日差しの眩しさで目を覚ます。


 どうやらあの残念天使は夢に入り込んできたようだ。人の快適な睡眠を邪魔しやがって。

 

 下の階に向かうと、既にヨミジさんとシエルは食事を取っていた。


 「おはようノア」


 「おはようございます、ノアさん」


 「ああ、おはよう」


 俺はそう言い椅子に座り、食事を始めた。 


 「ノアさんは今日、魔力を測りに行くそうですね。もし測定に行くのなら、バベルの塔の一階層で測ることができますよ」


 「バベルの塔……ですか」


 「はい、あそこの一階層は魔道具師登録所ですから」


 バベルの塔、世界の管理者がいる塔らしいが、その一階層に魔道具師登録所なんてよく作れるよな……とんだ恐れ知らずだ。


 「その後は、旧魔術図書館に行ってみるのがよろしいかと。あそこには世界の古き神話などがありますので、勉強になると思います」


 「はい、そうさせてもらいます」


  ――――――

 


 食後すぐ、俺とシエルは家を出て、バベルの塔に向かった。距離は結構あったが、初見の景色を眺めながら歩くと意外と楽しかった。


 途中、道無き道で魔物を見る機会もあった。

 おそらく低レベルの魔物だったのだろう、あまり迫力はないが、初めて魔物を見たという感動がある。


 「ここがバベルの塔、大きいでしょ」


 「間近で見るとすごい迫力だな」


 俺たちはバベルの塔にたどり着いた。


 家のすぐ近くは田舎なので畑ぐらいしかなかったが、塔に近づくにつれその景色は変わっていき、バベルの塔周辺は随分と人口が多い地帯に属していた。


 バベルの塔の入り口近くには茶髪の係員の女性が立っており、入り口へと案内してくれた。


 この世界の住人は、黒髪以外にも赤や青、白や金といった様々な髪の色の人がいるようだ。


 バベルの塔の入り口は、迷宮の入り口のように古代的だった。鼠色の扉には何か彫刻されている。大きな光を纏った存在と、それを崇める民たちが描かれている。まるで、神を崇める信者のようだ。


 係員が扉の隣の石碑に何かを打ち込むと、ギシギシという音が鳴り、ゆっくりと扉が開く。


 バベルの塔に入ると、酒場とギルドの二つに分かれていた。


 正直、歴史的な建造物の中に酒場をつくるか?と思ったが、ここには目を瞑っておこう。

 

 ギルドには魔道具師登録受付所と、攻略受付所の二つの受付があり、攻略受付所の前には冒険者らしき装備をした集団が受付をしていた。


 「あの攻略受付ってのは何?」


 「あれは最上階に登ろうとする人たちのために設けられたカウンターだね、最上階にいる管理者を連れてくるって依頼書が冒険者ギルドにあって、報酬がレベル6魔道具なものだからしょっちゅう来るの」


 レベル6魔道具の価値はそれほど高いということなのだろう。レベル神なんてどれだけの価値がするか想像もつかないな。


 俺は魔道具師登録受付で魔道具師登録してもらうことにした。本当は魔術師になりたかったけど、魔道具師が現在の主流なら、魔道具師になるのが最も力をつける近道だ。

 

 「こんにちは、魔道師登録所へようこそ。初めての方ですか?」


 「はい。」


 「でしたら、こちらの測定魔道具で魔力値を測ってもらってから、ギフトの有無を検査してください」


 「ギフト?」


 「ギフトは世界で数百、数千万人に一人が持って生まれる特殊な能力のことだよ」


 「そんなのがあるのか」


 「うん、私も持ってるし」


 えっ、シエルは持ってるの……数十万、数百万に一人しか持ってないのにそのギフトを持ってるの、すげえ。


 「ではこちらから。魔力値は魔道具と同じレベル0からレベル(ゴッド)で判別されます。また、ギフトは持っていれば白く光り表示されるようになっています」


 受付の係員にそう言われて、俺は受付に置いてある測定器に手を当てた。

 

 測定器は、宙に浮いた立体のキューブの上に魔法陣らしきものが乗ったもので、いかにも異世界って感じだ。


 俺は測定器に手をかざした。


 しばらくするが、測定器はまるで反応しない。

 故障でもしていたのだろうか?


 「故障じゃない。……ということは、魔力測定不可!?こんなの初めてですよ!?」


 興奮して昂った係員の言葉を聞いて、周りがざわめきだす。大抵は称賛するものだが、中には何かの間違いだだ!と測定器の故障を訴える者もいる。


 「故障じゃないよ。ほら、私が測ったらちゃんと出るし」


 そう言いシエルが手を翳すと、確かに文字が刻み込まれている。また、測定器は光り輝いてことから本当にギフトを持っているらしい。


 二人連続すごい数値を出したらかえって故障という説が有力になるかと思いきや、故障だと唱えていた人達は、次第に数を減らしいていった。


 「あのギフト待ちのシエルさんが言うなら間違いないわ」


 「シエルさんの連れだ、特別な力があっても不思議ではない」


 そんなシエルを高く評価した声が聞こえる。

 どうやらシエルはこの辺りでは有名人らしい。


 「ところで……俺ってギフト持ってるんですか」


 「少し待ってください、ギフトの有無だけを測定する魔道具をとってきます」


 そう言って、係員はギフトの有無だけの検査機を取りに行った。


 (まぁ、仮にも天使に転生したんだから、魔力が多くてもおかしくはないが、測定不能って、具体的にどのぐらいの魔力持ってるか分からないんだよなぁ)


 「持ってきました」


 「ありがとうございます」


 魔力値測定器とほとんど変わらない形状の測定器を持って、係員の女性がやってきた。


 俺は測定器に手を翳し、その反応を待つ。

 周りの人達は皆、俺の測定を見ており、だいぶ緊張する。


 しばらくして、測定器が光り出した。その光はシエルの時よりさらに強く、眩しかった。


 「測定器に反応あり。……ギフト持ってるみたいです」


 「本当ですか!?」


 見ればわかるのに思わず聞いてしまう、何せすごい確率だからな、それでどんな能力なんだろう?


 「能力は『具体化(エンボディメント)』ですね」


 「『具体化(エンボディメント)』?」


 「は、はい。カードに能力が書いてあると思うので、それで確認してください。いま発行しますね!」


 周りは大盛り上がり、皆んな受付に近づいてきて、自分のことかのようにカードが来るのを待っている。


 「……どうぞ」


 係員も相当緊張しており、小声で呟きながら、カードを渡してきた。


 俺はカードのギフトという欄を開き、能力を確認した。


  •ギフト名     『具体化(エンボディメント)


 『能力』


  • あらゆるものを具現化した通りにできる

   使えば使うほど、活動時間及び睡眠時間を奪う


  •


  •


  三つ項目はあるのに、能力が書かれてない欄が二つもあるのは何でだ?

  それに……具体化って………どういう意味?



 

 

 


魔力は測定器を使わなくても観測することはできます。ですが測定器を使えば正確な値が出ます。

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