4.魔道具師
暴風が止み、静寂を取り戻しつつある天候と時を同じくしてノアとシエルも静まり返っていた。
理由はお互い分かっている。魔術に対する認識の差によるものだった。
「魔術について全く知らないの?」
「全くというわけではないけど、ほとんど無知ってレベルかな」
「これまでこの国に現れた転移者はみんな、魔術のことを知っていたと言われているの。そうなるとノアは、本当にその転移者たちとは別の世界から来たのかもしれない」
「そうだと思う」
もし仮にこの国に来た転移者全員が地球から転移してきたなら、魔術を知らないと言う人間も少なからずいるはずだ。
転移者が全員厨二病の可能性もあるけど……
まあ、その可能性も低いしやはり世界はいくつもあるとみていいようだ。
「魔術について俺に詳しく教えてほしいんだけど、いいかな?」
魔術がこの世界では一般的なものならば、知らないと暮らしづらいだろう。それに、部員の皆んなを探す為には、力が必要だ。知っておいて損はない。
「分かった。まずは魔力から説明するね!」
楽しそうに、どこか嬉しそうにシエルはそう言うと、新しい本を本棚から取ってきて、ページを開き、説明を始めた。
シエルから聞いた話をまとめると、魔術には魔力が必要なようだ。
また、魔力回復は自然界に存在する魔から回復するか、魔力の篭った物から取り出すかの二つがあるらしい。
昔、魔術師は自身の魔力が切れたらそれで戦闘不能だったが、現在は魔石という魔力のこもった石で、自身の魔力を回復させて再び闘うことができるらしい。それによって個人の魔力量が多い必要性がなくなってきている。
また、魔術には、攻撃魔術、防御魔術、治癒魔術、召喚魔術の4つがある。
それぞれ役割は名の通り。また、防御魔術には強化魔術も含まれるそうだ。
そして、魔術は詠唱と魔法陣のどちらか、あるいは両方を使って発動させるそうだ。
詠唱も魔法陣も、魔術によって異なり、魔術学校では様々な詠唱の言葉、魔法陣の書き方などを教わるそうだ。
「じゃあ、俺たちの世界の住人は魔力が全くのゼロという訳じゃなくて、発動方法がわからないだけってことなのかな?」
俺は魔術に関する話を書き終えて、疑問に思ったことを尋ねた。
転生した俺には関係ないが、部長たちには関係のある話だ。魔力を持っているのなら魔術も使えるから、この世界で生き抜くのが楽になる。
「んー、確かにそういうことになると思うけど……」
おっと、俺の世界の話をシエルにしていなかった。
話も聞いてないのに、俺たちの住人の話なんてわかるはずもないか。
「その前に、俺の世界の話を話さないと。答えはその後に聞くよ」
そう言って俺は、俺の住んでいた世界の話をした。
シエルが途中途中質問をすることもあり、説明し終えた頃には日が暮れていた。
シエルは大変満足そうな顔をしており、俺の世界のことをだいぶ理解したようだ。
「……うん。ノアの世界でも発動方法が分かれば魔術を使えると思う」
「そうか、そうなのか!」
「あ、あと話を聞いてて思ったんだけど、ノアの世界の住人が魔力を持っているにしても、科学?っていうのが相当発展しているみたいだし、別に使われないと思うな」
シエルの意見は最もである。しかし俺たちは、他の人にはできないことをしたいという欲がある。魔術はその欲の結晶、憧れの的なのだ。
「いや、そもそも魔術というものに対して憧れを抱く人が多いんだ。便利不便はそこには絡まない」
「へぇ、そうなんだ」
そう言いシエルは納得したような表情を見せる。
「魔術があるってことは、この世界には魔術師がたくさんいるのか?」
「いや、あまり居ないよ。魔道具師の数の方が断然多いと思う」
「えっ……魔道具師?」
「そう、魔道具師。一般的には魔導士っても呼ばれてる。魔道具を使って魔法唱えたり、特殊なことをする人たちのことだよ」
名前を聞いて、どのような役職かは大抵理解できるが、その……魔道具師は比較的数が少ないものだと思っていた。
「一昔前は魔術師や剣士が数多くいたんだけど、魔術師は多量の魔力が、剣士には才能と剣技が必要だった。そうすると必然的にその数は少なくなるの」
ここまでの話をまとめるとこうだ。
•魔術師 自身の魔力が高い必要がある
•剣士 才能と高い剣技が必要
結果、魔術師、剣士になる人間は少なくなる。
「現在、魔道具師の数が多い理由は大きく分けて二つあるの。一つは魔道具が急速な発展をして魔術や剣技よりも強力になったから。もう一つは魔道具はレベル分けされていて、下位のレベルなら誰でも使えるから」
現在魔道具が主流の理由をまとめると
•一つ目 こちらの世界でいう科学のように急速な 発展を遂げたから
•二つ目 魔道具はレベル分け、そして一致率というものが存在し、レベルが低いものだと大抵の人は使えるだからだそうだ。
レベル分けはこんな感じ
•レベル0 レベル1に届かないほどの駄作
•レベル1 著しく性能が低い
•レベル2 性能が低く、欠点が多い
•レベル3 欠点が少ない。使用率が最も高い
•レベル4 性能が高い。使用率は二番目
•レベル5 性能がとても高く、需要が高い
•レベル6 性能はレベル5以上で、
一致率によって大きく性能は異なる
•レベル7 国宝レベル。世界に数個しかない
性能は一致率が低くても異常に高く、
一致率が高ければ国一つ消し飛ばせるレベル
•レベル王 英雄ロージアが堕天の王を撃ったときに
使ったと言われている伝説上のレベル
•レベル??? 全くの不明
•レベル神 神のみが到達できるレベル
レベル王からは詳しく分かっていないようで、伝説上の存在らしい。
次に一致率についてだが、一致率とはその名の通り、魔道具とどのぐらい一致しているかをMAX100%で表したものだ。
一致率が高ければ、その魔道具の性能を多く引き寄せ、低ければあまり引き出せない。
一致率が10%以下だとすべての性能が無くなるらしい。つまり使えないということだ。
また、一致率はレベルが低いほど高い傾向にあり、レベルが高いほど一致率は低い傾向にある。
中には、レベル3の魔道具との一致率は25%なのに、レベル5の魔道具との一致率は40%なんて人もいるらしい。結局は、魔道具との一致率は人それぞれ違うということだ。
「魔道具との一致率ってどうやったら分かるの?」
「冒険者ギルドカードとか、魔道士カードとかに自分の魔道具を登録すると、一致率が分かるようになってるの」
この世界のカードも俺の世界のカードに負けず性能がいいなと感心した。
「説明は以上。まぁ、普通に過ごしている内は魔道具も魔術も使わないけどね」
「そのことについて、話があるんだ」
俺は、転移時に他の部員に離れ離れになってしまったこと、生きているか分からないということ、探しに行くための力が必要ということを話した。
「………」
話を聞き終えたシエルは黙り込んだ。一応、転生したこと天使になったたことは話していない。この世界での天使の立ち位置がまだ分からないからだ。
「それなら、まずは魔力を測定しにいくべきかな、明日一緒に行こっか」
「明日って、俺どこに泊まればいいの?」
「そっか、別世界から帰る場所がないのか。うーん、それならこれからずっと家に泊まってていいよ!」
「本当!ありがとう」
こうして俺はシエルと共に生活することになった。
異世界に来て、とりあえず住める場所は確保した。
ーーーーー作者からのお願いーーーーー
「面白い!」
「続きが気になる!」
「応援したい!」
すこしでもそう思ってくれましたら、広告下のポイント評価を
【⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎】から【★★★★★】にしていただけないでしょうか
ブックマークもしてもらえると嬉しいです。
作者のやる気が出たりします。