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マニュアル運転?普通にできますよ ※程度には個人差があります

 最後の機体を破壊後、隊長機の元へ向かう。ステルスモードを解除し、通信を試みるが反応が無い。どうやらまだ意識は戻っていないようだ。

 

 レーダーには敵反応がないので一度機体を降りる。


 そして、コックピットに近づいた。権限が俺のが低くハッチを強制解放できないみたいなので叩いて呼びかけた。


 しばらくそうしていたが反応が全くない。ため息を吐くと俺は自機に戻りシートに腰かけた。


 そして、携帯食料と飲料を摂取しながら次の行動を考える。



 これからの方針としては、①基地への撤退、②味方が展開されているはずの地点への移動のどちらかだろう。

 

 だが、正直俺たちの進行ルートに待ち伏せされていたことを考えると②は少し危険に思える。少し距離はあるが、基地に撤退した方がいいかもしれない。


 とりあえず、少尉の目が覚めたら判断を仰ぐか。



 そう考えているとレーダーが反応し、接近中の存在を教えてきた。



「おいおい。勘弁してくれよ」



 味方の識別コードは確認できず。敵と判断するほかない。

  

 

「しょうがねえなぁ。緊急時だし勘弁してもらおう。既に上官への体当たりの前科持ちだしな」


 

 隊長機のコックピットハッチを慎重にこじ開けていく。そして、少尉が出られるくらいの大きさになると、自機を降り、担いだ。



 そして、自機の手の上に乗ると遠隔で操作し再びコックピットに戻る。少尉を座席の後ろの荷物スペースに毛布や上着でくるんで押し入れると、ロープで固定し安全を確保する。



 レーダーを見ると敵はこちらに気づいているようでかなり接近されていた。まあ、こちらが気づいているのだから当然だろう。俺の機体は普通の量産機らしいし。



「敵影八、小隊が二つか。とりあえず逃げるっきゃないな」



 機体を軽くするため、武器はロングバレルライフルとナイフ以外は廃棄、それと同時に最低限の装甲以外をパージした。



「どうせ追いつかれたらやられる。当たらなければどうということない理論でいかせてもらおうか」



 ブーストを点火、最大速度で逃げる。敵もそれを追いかけるように速度を加速させたようだ。



「この減りようだと基地に着く前に燃料が尽きちまうか?今回は逃げきれても次会った時やばいしなー」



 少し考えると障害物の多いポイントに降下、レーダーに映らないようステルスモードに切り替えた。


 物陰に隠れながら様子を伺う。敵も同じように降下したが、こちらの詳細なポイントを割り込めていないため、警戒しながら慎重に移動を始めた。


 

 とりあえず、策を考える。こちらが優れていること、劣っていることを簡単に頭の中で明確化する。



 通常、機体の動きはシステムで補助されており、例えば右手の銃を構えて撃とうとすれば右手のレバーを少し動かしボタンを押すだけでロックオンされた敵に銃が撃てる。


 それに、敵がそこから移動しても移動場所を計算し、予測射撃をしながら自動で腕の向きが変わる。



 ステルスモードではこのシステム補助と自動制御がなく、いわば完全にマニュアルで動かしているようなものだ。


 このモード中はほとんどの電子制御をカットするため、蹴り一つにしても微細な強さや角度を自分で調整せねばならず、基本的に敵に接近した状態では使われないらしい。

 

 つまり、通常時はあらかじめインプットされた動きにより人間の負担が大きく軽減されている状態なのだ。




 普通に考えれば、現在の優位な点は敵に位置がばれないこと、不利な点は動きに関する全てが制限されているということになる。



「でも、本当にそうなのか?さっき敵と戦った時に操作した感じなんかいけそうな気もするんだよな」



 確かに操作は複雑になる。


 この機体のコックピットの主な構成は左右の足に大小のペダルが一つずつ。左右の腕にレバーが一つずつといった形になる。

 

 大きいペダルを前にずらせば機体の足を前に、後ろにずらせば反対に動き、左右のペダルを右に向ければ右に旋回、反対なら左に旋回する。

 足を屈ませるには動かす方のペダルを踏み込めばいい。

 そして、小さい方のペダルを踏むと踏んだ分だけブーストが噴射される。

 


 腕を動かすときは各腕側のレバーを動かして行い、両方同時に動かせば上半身全体が動く。

 レバーには指に合わせた握りが付いており、親指の下にあるボタンを押した後にその握りに入れた力がそれぞれの指に連動されるようになっている。



 隠れながらゆっくりと足や手の動きの細かい部分を慣らしていく。


 よし、なんとなくわかってきた。仕事で建設機械系の免許も持ってたし、趣味でバイクやマニュアル車を操作してたから操作に手足を加えるのは元から慣れてる。



 夜明けまでは少し時間がある。それならまだなんとかなるかもしれない。



「よっしゃ!いっちょやりますか」



 敵に見つからないように狙撃のしやすい高台に移動。


 


 そして、ライフルを装備、息を止め標準を手動で合わせていく。敵の中で二機だけアンテナの形状が違う。そのうちの一機に向けて引き金を引いた。


 一発目は外れる、敵が動き出すがすぐに修正、二発目で仕留めた。


 こちらに向けて敵は銃を撃つが既に動き始めているので当たらない。敵がブーストを吹かして飛んでくるが既に物陰に移動していた。



 敵が周囲を警戒している。物陰に隠れつつ、敵がそばを通り過ぎた瞬間、最後尾の奴にナイフを後ろから突き刺す。

 敵が振り返ろうとするが、倒した機体のブースターにライフルを当て爆発させ視界を奪った。



 すぐにその場から移動し、再び身を潜める。敵はかなり警戒しているようだ。


 

 慎重に索敵しながら進んでくる。だが、相手が狙えない位置でもやりようはある。

 

 敵が通る場所付近にある廃墟ビルに向けてライフルを放つ。支えていた柱が崩れ、瓦礫が敵に降り注いだ。土煙が舞い、広い範囲が覆われる。


 

 

 

 土煙が晴れると、立っていたのは三機。

 


 敵は半数以上がやられたがまだ戦闘を継続するようだ。もしかしたら、敵討ちを果たそうとしているのかもしれない。


 シールドを構えつつ、死角をカバーしながら進んでくる。大きなビル等があるルートを避けながら。



 

 

 ここまではなんとかなった。だが、ここからは少し無茶をしなくちゃ無理だろう。


 狙撃は難しい、搦手も警戒されている。ならば多少の無茶は必要だ。


 深呼吸して自分に言い聞かせるように言葉を放ち気合を入れる。



「とりあえず、ここからは搦手無しの正面勝負。負けたって文句のいいっ子は無しだぜ?」



 ブーストを全開で吹かし突貫、敵が銃を撃ってくるが即座に方向を変え、敵の予測射撃から強引に動きをずらす。凄まじい重力がかかるが問題ない。


 ヒール&トゥの感覚でブーストと移動を同時並行で行っていく。



「サーキットやら峠やらで浮名を流して来た俺を舐めるなよ?こんなの屁でもないわ!!」

 


 叫びながら銃口を相手に向け放つ。一機撃破。


 そして、壁を蹴り跳躍。再びブーストを吹かし鋭角な移動を行う。敵の銃口が定まらずに迷子になっているのが見えた。


 すると、凄まじい揺れで目が覚めたのか後ろから少尉の声が微かに聞こえてきた。どうやら目を覚ますようだ。突如邪魔されても困るので一旦後退し物陰に隠れる。




 しばらくして意識がはっきりしてきたのだろう。目を開けこちらに尋ねてくる。



「どこだここは?それになぜ私は荷物のようにロープで固定されている?」 



「ここは戦場です、少尉。ロープで縛られているのは座席が一つしかないからです」



 そのパーフェクトな答えが少尉は気に入らなかったのか、目を吊り上げている。



「……お前は死にたいようだな?二等兵の分際で私を舐めおって。女だからとバカにしていられるのも今のうちだぞ」



「後で事情はちゃんと話しますから落ち着いてくださいよ。せっかく可愛い顔してるんだから笑顔でいきましょう」


 

 彼女はこちらを殺すような目つきで見てくる。どうやら俺がギャルゲーで鍛えた話術はあまり有効ではないらしい。



「絶対にお前は軍法会議にかけてやる。絶対にだ」



「いや、ほんと調子に乗ってました。すいません。でも、今は戦闘中ですのでそちらに一旦集中します。舌を噛むといけないので、少尉も口を開かない方がいいですよ」



 その言葉に彼女は怪訝そうな表情をした。



「舌を噛むだと?お前は何を…………」


 

 彼女が言葉を言い切る前に急加速、敵が放ってきた銃弾を回避する。そして、ジグザグと動き予測射撃を外しながら急接近する。

 そして、腰に差したナイフを片手に掴むとすれ違いざまに突き刺す。残り一機。



 そのまま相手を足場にして跳躍した。



 着地の瞬間を狙って敵の銃口が向けられる。だが、俺は着地の寸前、片側のブースターだけを起動させて横にずれる。

 

 外れる敵の銃弾。そして、こちらの銃弾がお返しとばかりに放たれる。


 その銃弾は吸い込まれるように敵の胸部に命中、コックピットを穿った。



「よし!!」



 ガッツポーズを取る俺の後ろで少尉の呟くような声が聞こえる。



「……………………なんて出鱈目な動きだ……こんなものは見たことが無い。というよりなんか気持ち悪…………」

 


 狭いコックピットは酸っぱい匂いに満たされた。貰いゲロしたのは言うまでもない。



 

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