プリプリなおもひで
『プリプリ』
この擬音をみたとき、人はなにを連想するだろうか。
何がプリプリをプリプリたらしめるのだろう。
友人3人で京都旅行から帰路についていた時の出来事だ。電車に揺られ、各々の写真を見せ合い思い出にふけっていた。さて、写真を送りあおうか。iPhoneのエアードロップをオンにする。写真を一気に転送できる便利な代物だ。
私たちはiPhoneから視線を上げ、目を合わせる。
『プリプリ中華炒め━━━━?』
iPhone名がプリプリ中華炒めの人が居たのだ。この電車の中に。
「プリプリ中華炒めって何?」
「なんで名前がこれなの?」
「そもそも何がプリプリなん」
「この人、写真共有するとき、共有先はプリプリ中華炒めで!って言ってるんかな」
すぐさま私たちは近くにプリプリ中華炒めニキ/ネキがいるかもしれないと気づき、話を中断した。
プリプリ中華炒めって何。みんなの頭にこのモヤモヤが残った。家で飲み直していたとき━━━時計の針が9時を指す頃だ。友人Eは口火を切った。
さっきのさ、プリプリ中華炒めって結局なんなん?
私たちは堰を切ったように話し始めた。
「プリプリニキだね。プリニキと呼ぼう。」
「大きめのエビが入ってそう。プリプリってことは片栗粉まぶしてるんじゃない?中華炒めってことは、野菜も入っているはず。」
「プリニキは相当なエビ好きだね。エビって書かなくてもエビを連想させる。エビ食べたくなってきたなー。」
「エビって言葉を入れていないのが逆にいい。プリプリって擬音も想像を掻き立てる。プリニキって天才じゃないかな。詩的。」
こんな具合である。
3人とも酔いがまわり、話はここまでとなった。翌朝、二日酔いの私たちは意外な事実を目の当たりにした。
検索結果によれば
プリプリ中華いためは子どもたちに大人気の献立の一つです。名前の由来でもあるようにこんにゃくやうず卵、しいたけなどプリプ リした食感が楽しめ、ごはんにもよく合う一品です。
私たちに衝撃が走る。
え!?エビじゃないの!?
昨日の熱い語り合いはなんだったのか。エビでも詩的でもなんでもない。こんにゃくやうずら卵がプリプリだったのだ。
あれから、私たちはプリプリ中華炒めについて話していない。プリプリという言葉で安易にエビと決めつけた。苦い事実が私たちに突き刺さった。
このプリプリなおもひでは、今後話すことは無いであろう━━しかし色濃く残る京都旅行の思い出となった。