Mr.DARKER STRANGE 第六章『ヒューマ』
第六章『ヒューマ』
「ごめん。結局、捕虜が増えただけだったよ。」
とは、血塗れの状態でフェルモアータを担いで帰還したヒューマの言葉だった。
フェルモアータを丁重に背負う傍ら、地面にずるずると引き摺られながら死んだ目をした女。それが、魔法少女のダーカー、アヌビス・メーデンだと気付いて、魔女は頭痛に頭を悩ませた。
「倒すかヤるかしか選択肢がないの?あなた。」
演算処理が片付いたのだろうか。瞑った瞼の上に蒸しタオルを置き、女の子にしては下品な座り方で生足を露出させるレンゲルは、浅い呼吸でしばしの睡眠に全身を委ねていた。タトゥーのちらつく健康的なふとももと、打って変わって死にそうな顔色の少女は、相当の無理をしていたのだろう。徹夜続きの人間がするしんどいの限界値で微かな安眠を謳歌していた。
おそらく近いうちに叩き起こされるのだ。どうせなら、とココアを用意して、自分も疲れているだろうに魔女はヒューマの対応にあたった。
「とりあえず、魔法少女さん。なんか、力が覚醒して、完全に他人に変身できるみたい。その人の素養まで扱えるとか。」
「本当に反則級の力じゃない……味方なら頼もしいけど、その有様で味方になってくれるのかしら。」
魔女が指差した先、ぐったりとした様子で床に投げ出されているアヌビスが目に入った。
ヒューマにずっと握られていた右手首は青紫に変色し、こひゅー、こひゅー、と痛々しい音色で紡がれる呼吸は規則性がなく、危うげな雰囲気を纏っている。
そのうえ、全身血塗れの惨状だ。これを味方候補ですと差し出されても信用できるはずがない。精々、ボコボコにした奴隷です。といわれて納得できるくらいだ。
「一応、僕に従ってくれるはず。そうだよね?」
ヒューマが眼下のアヌビスに目を向ければ、少女はビクッ、と震え、おぼつかない体で頭を垂れ、死んだ瞳で地面を射抜く。
本当に操り人形のように従順なアヌビスは、もはや魔法少女ではなく屍の傀儡。そこにいつかの自身も、狂気もなく、あるのは中途半端な反骨心のみ。
しかし、それもこうして呼ばれただけで鳴りを潜めるようなお粗末なものだ。特に思考に役立つとは思えない。
それは、道具であった。
弾除けでも、異能でも、ただ、使われるだけの道具。愛されることのない、道具。
「本当に何をしたのよ……でも、まぁいいわ。二週間、待ってくれてありがとう。」
魔女はそれ以上の処理を放棄して、本題に入る。
二週間。同盟を組んだ魔女たちが、ヒューマたちに指定した準備期間だ。
そこにヒューマたちが関わるのは経験則的に無理であったため、魔女たちが言っていることは二週間なにもするな、という軟禁に等しい言葉。ダーカーにとっては苦となるものだろう。
しかし、ことヒューマたちに至ってはそうではない。
「こっちこそだよ。僕はこの娘といれば二週間なんてあっという間だったし。それに、手伝えなかったのはこっちだから。本当に、ありがとう。」
「なら、お互い感謝ってことで手を打つわ。」
都合がいい、と冗談交じりに言って、後腐れのないように話を断ち切った。
魔女が二週間の空白の期間に対しての言葉を述べたということは、二週間の空白が、一瞬の成果となる瞬間が間近に迫っているということだ。
「フェルモアータは、重傷だったけど大丈夫。回復させてきた。あと少し休めば戦えるって言ってた。」
「?……まあ、それならいいんだけれど。」
魔女からしてみればそれは不思議な言葉だっただろう。フェルモアータはあくまで情報屋。ダーカーではあるが戦闘にはあまり関わらない立ち位置だったはずだ。
しかし、ヒューマを通して伝えられたフェルモアータの言葉は、まるで自分も物理的な戦力になれると言っているように見えるからだ。
事実、新たな異能の使い方を見つけたフェルモアータは、戦闘という行為に参加するに値する力を身に着けている。魔女が想像するよりずっと、立派な戦力となってくれるだろう。
思わぬ戦力増強の仕方ではあったが、魔女たちは魔女たちで、ヒューマたちはヒューマたちで、それぞれしっかりと戦果を持ち帰った。
「あまり堅苦しいのは苦手なの、簡単に済ませてしまいましょう。」
「……」
照れくさそうに頬を掻く魔女が、ヒューマに椅子に座るように促す。蕩けた表情で眠るフェルモアータを膝の上にのせて、ヒューマは魔女の言葉に無言の首肯で賛成の意思を示す。
それにありがたそうに瞠目して、数秒の後息を吸う。
「人類を滅ぼす研究所を、私たちの目指す研究所を、」
「叩き潰す。」
それは、人類を賭けた、人類でない者たちの戦い。
ダーカーの全面戦争と言っていい。
既に切って落とされたといっていいその戦禍の始まりを、あえてここで宣言する。
「ダーカーの未来は、私たちのものよ。」
「ああ。」
Mr.ダーカーの進撃が、小さな握手の音で始まろうとしていた。
★
人類最高の頭脳を持ち、その絶対的な思考能力から世界の判断、地球の意思と揶揄される、些か傲慢な研究結社『デュカイオ・シュレー』。その本拠地は、実際の所この地球上に存在しない。
地球の意思であり、地球の正義を騙るくせに、その本拠地を地球上に存在させることに恐れをなした卑怯者。彼らなりの言い方でいえば、知恵の結晶。
そう、彼らの本拠地研究所は、地球に存在しない。
その研究所は、地球に、存在しない。
ネアン―0384概皇衛星。
それは、約二年半周期で地球の成層圏ギリギリを通過するといわれている存在の不確定な星だ。
といっても、視認することは容易で、それを目視した者は誰もがその存在を確信するのだが、誰も視認というプロセスに辿り着けていないことから、その不確定が作り出されたものだというのが伺える。
約五十キロの天空。長い、長い距離だ。平坦な道ならまだしも、その距離は地上から遥か先、宇宙へと手の伸ばす、広大な距離だ。
しかし、それを科学的に見た場合、五十キロというのはミリと表現してもいいほどの長さとなる。
光年などという頭の可笑しい単位で世界をはかる科学にとって、五十キロなんてもはやあってないようなものだ。
そして、そんな都合のいい軌道を通る衛星など、本当に天文学的確率でしか現れることはない。
月よりも身近に感じられるその存在は、もはや存在していることこそが異質で、異常。この地球の理を変えてしまうのではないかという疑念すら抱かせる。
そして、当然のようにその星は『デュカイオ・シュレー』の手に落ちた。
秘密裏に飛ばされた有人ロケットは、不可能と言われる超近距離衛星への着陸を可能にし、更には意図も容易く『デュカイオ・シュレー』研究本部を作り上げたのだ。
誰も、宇宙空間で機動し続ける研究所にガサ入れをしようなどという突飛な発想は湧かない。治外法権同然のその衛星の中で、『デュカイオ・シュレー』は人体実験どころではない倫理の崩壊を、数えきれないほど行ってきたのだった。
「よく考えたら、頭おかしいよね。」
「常人の発想じゃないわね。だけど、それを実現してしまえる頭の良さがあるんだもの。」
吹きすさぶ風に晒されて、早朝の山の頂上で、魔女とヒューマは互いに眼前の星に向けて罵詈雑言を飛ばしていた。
その山は、オットーランド最大の山で、標高六千メートルを優に超える高さの山で、地面から計測した限りでは世界最高峰の山だ。そんな山の頂上にわざわざ上って、ヒューマたちが何をしているのか。その答えは、すべてその壮観な景色に詰まっている。
雲がくゆる透き通った空。それは比喩表現というわけでなく、近年超加速的に増大した汚染物質が熱を好むという性質から導き出される、確かな科学的表現だ。しかし、今はそんな御託ではないのだろう。そこは、本当に透き通った空だった。
透明水彩のようにグラデーションが靡き、それを越えた先、宇宙の黒に透かされる青空が不気味な雰囲気を滲ませ、それに呑みこまれそうになる。しかし、その不思議な蒼天に、今日だけは違う風景が見える。星だ。
開けた空に悠然とそびえる、途方もないほどに大きい星。
魔女から手渡された資料には、惑星にしては小さい方だと図解付きで明記されていたが、実際に目で見るのと聞くのとでは圧倒的に迫力が違う。それを見れば、自分なんてちっぽけな存在で、この宇宙のきまぐれによっていつ滅ぼされてもおかしくはないのだと、セクタへの感情に似た何かを感じた。
「あそこに、行くんだよね。」
「ええ。私たちが二週間に間に合わせた演算の集大成、見せてあげるわよ。」
「そう簡単には、いかないかも。」
「え?」
ヒューマが、ネアンを指差す。相変わらずの巨大な衛星。そこから、飛来する何かが、徐々にその面積を大きく、いや、徐々にこちらとの距離を小さく、切り刻んで、叩き伏して、食み下ろしてくる。
それは、なんだっただろうか。
「レンゲル!」
「認証コード【天使】」
ゴゥゥン、と駆動する円環機巧が、山頂の美しい空気を喰らい尽くして、暗く、淀んだ負の空気として放出される。
性質を負に堕とされた空気は、聖の空気に押されて刀の形を作り出す。この世界にたった一振りしかない、レンゲルにしか作れない。レンゲルにしか使えない。彼女だけの、天使だけの、どす黒い刀。
「ッ!!!」
山頂の岩肌を叩き割りながら、一歩一歩の破壊力は力を増しながら、レンゲルが跳躍する。
巨大な星を背負う正体不明の飛来物へと、研ぎ澄まされた一閃が刻まれる。
斬撃は、黒い軌道となり、負の象徴である瘴気がそれを一直線に撫で斬る。
空中でずるり、とズレて二つに分離した飛来物は、そのままレンゲルの左右を高速で過ぎ去り、山頂の雪に血液を撒き散らした。
空中で推進力を失ったレンゲルは、自由落下に任せて急斜面へと落下。うまくそこにつかまり、上ってくるだろう。
問題は、ヒューマたちのすぐ横で血液をまき散らしながらひしゃげた正体不明の飛来物。もちろん、それはヒューマたちに向けた牽制のようなものだろう。ここまで大それた登山をして、まだ気づかれていないなどという自惚れは魔女が許さない。
「肉……人間?」
「いや、そんな無意味なことをするはずが……」
人間ほどの質量を衛星軌道上から投下したら、それは下手な爆弾より高威力になるのは必至だが、そんなコストパフォーマンスの悪い爆弾など使わずとも、普通の爆弾を投下した方が生産的だ。人間をわざわざ殺させに落としてくるなど、悪趣味が過ぎる。
意図のわからない奇行に頭を悩ませる魔女に、物怖じしないヒューマは行動を選択した。
「これ、顔かな?」
少し離れたところで転がっていた頭部と思しき肉塊に、ヒューマが手を伸ばす。ひも状の何かが髪とおぼしき毛の間からどろり、と零れ落ちている。
それが脳髄だったのか筋線維だったのかはわからないが、ダーカーであるヒューマや彼女たちからしても、目を覆いたくなる程の惨状であったことは確かだ。
しかし、それが『デュカイオ・シュレー』からの精神攻撃だと考えるのは、その正義を甘く見過ぎている。
確実に、この些か派手すぎる投身自殺には意味があったはずだ。ヒューマたちになにかしらの危害を加えるための、被害足り得る、そんな明確な『悪意』だったはずだ。
もし、人間を放り投げて肉塊に変えることが、人間爆弾以上の脅威になるとしたら、一体どんな時だ?
その質量に任せた爆撃以外に、それが脅威となるのは、どんな時だ?
考えろ。考えろ。考えろ。
そうして、気付いた。
考えるという行為の頂点は、自分たちではない。
思考の頂点、意志の決定、正義。それは、決してヒューマたちが背負っていたものではなかった。
それは、紛れもない。彼女たちの領分だ。
『デュカイオ・シュレー』の、本懐だ。
弾かれたようにグロテスクな肉塊を拾い上げてその顔を拝んだ瞬間、ヒューマ纏う空気が一変した。
一瞬で広まる殺気が魔女たちに誘爆。魔女陣営の全勢力が、ギラついた殺意を剥き出しにして警戒心最大の厳戒態勢に入る。
ヒューマの拾い上げた頭部は、それは酷い有様だった。
鼻はひしゃげ、唇はズれ、口腔は固まった血液がどろりと糸を引く。顔の上半分に関しては、瞳が顔からねじれ落ち、視神経だけが頭部との唯一のつながりとなっていた。
しかし、絶対に見間違えることはない。その顔は、その瞳は、その、その、その少女は、
「ッッ!!……ダー、カー……!?」
とてつもない濁り方で、黒瞳に嗤った。
紛れもない。眼窩から零れ落ちたその瞳は、ダーカーのものであった。
★
魔女とレンゲルがエナジードリンクに対しての耐性ができてしまうほどに命を削って導き出した演算。
それは、この山の頂上からネアンに飛び立つための演算式だ。
たとえ成層圏周辺にあるといっても、その計算には相応のコンピュータが必要になるし、相応の時間がかかる。
かつて最強だったスーパーコンピュータ『普樂』。それを密かに盗み出した魔女は、そのスペックでごり押すように演算結果をもたらしたのだ。といっても、最強だったコンピュータという肩書だけ。
今の技術に当てはめてみれば、それは決して頂点に立つことのない演算機。
人が扱うには過ぎた技術であることは確かだが、演算能力に至って『デュカイオ・シュレー』に勝ることはない。そんな完全なる不利の中で、魔女はそれを見つけ出した。
ネアンへと飛び立つ最適解を、見つけ出した。
しかし、ネアンに行ける人数は、たった三人。誰かがネアンへの推進力を生み出さなければならない点。もし研究所内で全滅してしまった場合の予備戦力。そもそもの演算の不確定さ。様々な要因が絡まりあった結果の三人という数字。
しかし、二週間でそれならばむしろ僥倖と言える。
つまり、最初から、地上班と研究所班は分けてある。
「魔女さん!行こう!」
フェルモアータを抱いたヒューマが、魔女を呼んだ。
瞬間、ヒューマの放り投げた生首からピンク色の管が伸び、ぎゅんぎゅんとその質量を増やしていく。そして、雪の上にまき散らされた臓物と血液をかっさらいながら表皮を探しに行く。
そして、死ぬ瞬間を圧倒的に凌駕する気色の悪さで、殺された人間の逆再生が行われた。
ヒューマとフェルモアータが抜け、魔女もそれに続く。この場は、レンゲルとアヌビスに預けられた。
その責務を全うするようにアヌビスには申し付けてあるし、レンゲルの覚悟はとうに決まっている。
山肌を駆けあがり、飛び出した先。そこは、再生するダーカーの背後。レンゲルの黒刀が、ぶれる黒煙の軌跡を描き出す。
「喰らエ!うめェダろ!?」
脳髄から下腹部まで、上から一直線に振り下ろされたレンゲルの刀が、それでも進むことを辞めずに岩肌にかちあたる。そして、その斬撃に満足した刀が霧散し、満足していない次の刀が瞬いて、それをただの肉塊の山へと変える。
微塵切りにされた肉塊は、瑞々しく血液を撒き散らし、麗しく内臓を振り乱す。
しかし、それでも、そのダーカーは死なない。何度でも、どんな傷でも再生し、ニタリとした笑みで、純粋な笑みでレンゲルを見る。
「ッ!!」
山頂決戦が開幕した。
★
戦線を離脱した魔女陣営の主戦力は、さらに高い山肌に上り、ネアンを見つめていた。
諸悪の根源、原初の絶対悪。その根幹を、見据えていた。
「魔女さん、推進力はどうする?」
「私がいるなら問題ない。だけど、そこまで力を使ったら私は使い物にならなくなるわ。本部の適当なところに捨てて行って。」
手にはめたグローブを念入りに確認する魔女は、なんの打算もなく、確定的な勝算しかみていない作戦を無機質にヒューマに吐き捨てた。
ダーカーらしい言葉だ。それは、人間の言う自己犠牲などではなく、自分という存在が消えたとしても、『デュカイオ・シュレー』が滅んでくれさえすればいいという、ある種の病的な精神によるものだ。
それがわかっているから、ヒューマはそれに異議を唱えない。
「わかった。でも、終わったら、絶対助けに行く。」
「あら、素敵ね。」
「痛い……」
男らしいヒューアの言葉にフフと笑い、それに嫉妬したフェルモアータの牙がヒューマの首筋に突き立てられる。その痛みに苦笑を漏らすヒューマに、緊迫していた空気がかすかに弛緩した。それを好機と、魔女は行動を開始する。
グローブの感触を手に馴染ませ、微笑んでヒューマの背中を押す。そして、その背中に背負われたフェルモアータの背中も押す。
「私を、信じてくれるかしら。」
「もちろん。」
「ん。」
ヒューマも、フェルモアータも、知っている。
この魔女が、どれほどの労力をかけてこの作戦を考えたのか。
天使と共に、それほど魂を削ったのか。
「命を、預けられるかしら。」
「こっちからお願いしたいかな。」
「ふんっ」
魔女も、天使も、絶対に妥協を知らないと、信用している。
「あなたたちを、信じてる。命を、託す。だから、勝ちなさい。」
魔女が、返答を聞かずに魔法を発動した。
もう、返事を聞く必要はなかった。ヒューマも、フェルモアータも、充分すぎるほどの覚悟でそこに立っていて、魔女のことを信じている。魔女がそうして魔法を発動したのは、そんな期待に報いる、ほんの少しの照れ隠し。それでいて、絶対に勝て、という発破。
勇気の注入。
「言ってなかったわね、私の名前。ジャンヌ、ジャンヌ・マレフィス。覚えておいてくれると、嬉しいわ。」
「うん。勝ちを持って帰るよ、ジャンヌ。」
「ん……」
語尾にハートマークのつきそうな甘ったるいフェルモアータの声を最後に、ヒューマたちから音が消失した。景色が消失した。恐怖が消失した。
世界は、宇宙に変わった。原初は、原悪へと王手をかけた。
★
さて。
ダーカーというものには、所謂役職のようなものがある。
人々の願いをカテゴライズしたのだから、たしかにそれに名前がつくのは当然のことだ。
魔女、天使、魔法少女、淫魔、科学者、錬金術師、被験体、ナース、愛する人。
ダーカーには必ず、そんな役職というものがあり、必ず、それに対応する能力がある。それが、絶対的なルールなのだ。
「話をしませんか。隣杯先生。」
椅子に腰かけた青年は、気だるげにそう言った。椅子、という表現は、少々失礼か。青年になぎ倒された警備ロボの数々が、山のように連なって巨大な玉座のように鎮座していた。
巨大な培養器の中に浮かぶ脳髄と、その正面で巨大な玉座に腰かける青年。異質だ。しかし、それでいてどこか美しい。絵画の中のような不気味な心地よさを感じさせる。
『ヒューマくん!来てくれたの?うぅ~情けない先生でごめんね?だから、リオンちゃんもどこか行っちゃったんだよね……うぅ……』
気色の悪い立体音響が、感情を孕んだ疑似声帯音声を響かせる。対する培養器の中の、脳髄の中の女。風 隣杯。
『デュカイオ・シュレー』最高責任者にして、自分の孤児院の子供を異能開発の実験台とした外道中の外道。マッドサイエンティスト。
箇条書きでその罪状を並べれば、きっと地球十周分は堅いであろうほどの大罪人。人類始まって以来の大悪党。
原悪のダーカー。
「先生の謙虚なところは嫌いじゃないけど、僕はアリィの場所が知りたい。教えてもらえませんか?」
『あ、あ、ああの、でも、そ、そしたら、ヒューマくんは私のこと、そ、その殺しちゃうでしょ?……うぅ』
ヒューマの無感情を装った問答に、隣杯はオドオドしながら答えを返した。ヒューマから貰った嫌いじゃないという言葉に感激を覚えているあたり、本当に頭のネジが飛んでいるのだな、と再確認できる。
いっそ安心できるほどの狂い方をした彼女も、しっかりとダーカーだった。
『デュカイオ・シュレー』の目指すダーカーだけの国に、自分がいないことをそのマッドサイエンティストが許すはずがない。きっと、初期の段階でダーカーとなり、おそらくは科学者の異能を獲得している。
きっとここから始まるのは平行線だ。時間を無駄にするのは、ヒューマとしても容認できない。
最速の選択を小さく願って、二択を突きつけた。
「僕は、アリィの場所を教えてくれたら先生を殺す。けど、先生が教えてくれないんだったら、ボクは、僕を殺す。」
拳銃を抜き去って、確かに入っている弾丸の重みを感じながら、無表情のヒューマが銃口をこめかみに押し付ける。
鉄のひんやりとした感触が、その長い長い沈黙の果てへの期待を、状況の流転に関しての予想を、心臓の鼓動を、まるで永遠のように感じさせる。
隣杯の表情は、どう足掻いても読み取ることができない。誰も、脳髄の表情などという薄気味悪い読心術は心得ていないだろう。
だからこそ、こうして、待ち続けるほかない。
自分は選択を誤らなかったか?自分は、正解を引いたか?魔女の期待に、報いられるか?
鼓動が、うるさい。脳髄にヘイトが高まっていく。
はやく、はやく、はやく。まだか、まだか、まだか。
そして、
『おいで、あーちゃん。』
ギギギと、脳髄に繋がった電極から発せられた命令が、その巨大な部屋の一角。何の継ぎ目もない壁を押し開ける。もはや隠し扉と言っていいレベルの巧妙な壁面塗装。そこはセクタの封印施設と同じだ。
しかし、その扉は、重要なものを匿いすぎた。
その少女は、とても綺麗だった。
透き通った陽だまりのような金髪は、見ているだけ幸せな気持ちになるし、その男勝りな眉も彼女の豪快な美しさに拍車をかける。
奥底に眠っている記憶では、まだ幼かったその体型も、今となっては美しいボディラインを惜しげもなく晒しているし、豊満な胸と夢の詰まったヒップは見るものの視線を根こそぎ奪い取る。
「アリィ……!!!」
かつて、『フレンダーの審判』で別離するまで、共に食卓を囲み、共に本を読み、共に野を駆け、共に想いあっていた、幼馴染。それは、唯一ヒューマが拠り所とする、本当の意味での家族。
アングレット・エーデルパリィとの十年ぶりの再会であった。
「よかった、元気そうで!本当に、本当に!」
「ひゅ、ヒューマ……違うの、や、違うんです……あなたを置いて行ったわけじゃなくて、」
「アリィ?」
十年越しの再開に感極まるヒューマの涙のたまる濁った瞳。しかし、その瞳に映った幼馴染は、かつての活発な少女ではなかった。
それは、まるでヒューマに媚びへつらう、そこらへんの有象無象のような、何の魅力もない、本当に、抜け殻のようなメスで。
「私、とっても、頑張ったんです……頑張ってダーカーになって、……生き返ったし、こいつに言われてたくさん仕事して、ヒューマを探したし……」
暗く、淀んだ瞳。それを覆い隠す前髪が、ヒューマの表情を完全に闇の中に葬った。
アングレットの口調は、本当にヒューマだけに媚びへつらうもので、隣杯をこいつと称したり、度々抜ける敬語の裏にある常用的な言葉づかいも、そこは変わっていない。かつて生意気だと称されていた口調は、なにも変わっていない。
しかし、ヒューマに対する態度だけが、変わってしまっている。ヒューマへの偏愛だけが、醜く、どこにでもあるような安っぽい物に爛れていて、それにヒューマは心底
落胆した。
隣杯が嬉々としてその電子声を響かせた。
同時、アングレットがうめき声をあげて倒れ伏す。ガタン、という重い音を響かせて倒れたアングレットは、きっとろくに受け身も取れずに倒れただろう。それでも起きないということは、相当な過負荷によって意識を刈り取られている。
既にアングレットにアングレットとしての自覚があるのかすら疑わしい。
しかし、もうそんなことすら、ヒューマにとってはどうでもよかった。
アリィは、変わってしまった。自分が好きだったアングレット・エーデルパリィは、死んでしまった。
胸中を満たすのは、そんな寂寥感と孤独感、喪失感。虚しさの参列する葬儀の様相を呈している。ヒューマの中のアリィは死んだ。
そこにいるのは、ただそこにいるだけのアングレット・エーデルパリィだ。
そんなアングレットが、ビクビクと痙攣して不可解な動きで立ち上がる。
「ヒューマくん……私、まだやらないといけないことがあるんだ?だから、ヒューマくんのいうことは聞けない。うぅ……ごめんね、でも、ヒューマくんが幸せになるためだから!」
それは、アングレットではない。
濁った瞳の奥底に、確かに存在を主張する狂気。そして、情緒の欠片もない壊れ腐った涙腺。感情。
そう、それはまるで。
「先生……?」
アングレットの身体に、隣杯が乗り移った様だった。
事実。動きずらそうにしているのは久しぶりの人の身体に対応しきれないということだろう。
しかし、いくら科学の頂点と言っても、そんな芸当が容易にできるはずがない。たとえ地球の頭脳と言っても、あくまで彼女たちは地球の頭脳なのだ。地球のスケールで収まっている時点で、その規格外な力が科学でないということは分かる。
気付く。
「それが、異能。」
風 隣杯の異能、それが人の身体に乗り移ることだというなら、納得がいく。
科学者の根底にあるのは、解き明かしたいという欲求。それを、隣杯は自分の身体に囚われずに実践できるのだ。なぜなら、彼女に身体は存在しないから。ただの脳髄に成り果てた彼女だからこそ発現させた、異能。
「戦うしか……なくなっちゃった。うぅ……ごめんね?」
それは、完璧な作戦であった。
ヒューマはアングレットとの再会を望んでいる。しかし、隣杯がアングレットに乗り移ってしまえば、ヒューマはアングレットに手は出せない。アングレットの掌握は、同時にヒューマをも掌握していることになるのだ。
アングレットがアリィでいたのなら、きっとその作戦は効果抜群。きっとヒューマは捕らえられ、原初のダーカーとして『デュカイオ・シュレー』に組み込まれただろう。
「だから、大人しくつかまっ」
ぐしゃあああああああああああ。
癇癪を起した子供が、クレヨンで画用紙を塗り潰すように、赤いインクが無機質な部屋に綺麗なアクセントを生み出した。まるで現代アートのように絞られたインクの流線型は、その中心へ行けばいくほどどす黒くなり、グラデーションですら芸術的に見えた。
「もう、いいや。」
「いや、ま」
ぐしゃあああああああああああ。
両腕を引きちぎられたアングレットが、何が起こったかわからないという風に隣杯の声を漏らす。
簡単な話だ。ヒューマの膂力が、アングレットの身体の耐久力を上回っただけのこと。なにも、不思議なことはない。
「かうああ。あああ、きゃああああああああああああああ!!!」
風 隣杯の恐れる唯一のものは、無理解だ。どうしてそうなるのかわからない。どのプロセスがその答えを導き出すのかわからない。そんな無理解は、科学者からしたら発狂してしまうほどに怖い。
今のヒューマの行動は、無理解そのものだった。
アングレットは、十年ぶりの感動の再会を果たした幼馴染なのだ。なのに、どうして、どうして。
簡単だ。
「それはもう、アリィじゃない。」
血塗れのアングレットはぐったりと倒れ込み、ぴくりとも動かなくなった。
そして、間髪置かずにヒューマのポケットの携帯端末がけたたましく鳴り響く。もしもの事態のために、魔女に持たされていた端末。
それは、封印施設に取り付けたカメラが、何者かの侵入を感知した音だ。
わかる。それは風 隣杯だ。
誰に乗り移ったのかをはかるには情報が少なすぎるが、彼女が人類を人質にとってヒューマとの交渉のテーブルに就こうとしていることだけは理解できた。
今、封印施設にいるダーカー、誰でもいい。それがセクタだろうと、他の『デュカイオ・シュレー』のダーカーであろうと、その意識がイカれたマッドサイエンティストの餌食になったことは確実だ。
しかし、もうヒューマにストッパーというものはない。
『ヒューマくん!よく考えて!!!』
カメラから響く音質の悪い凛とした声。レベリリオンの声だ。すでにボロボロなのだろう。その声に覇気はなく、わずかに見えた肢体も、かろうじてつなげてあるだけで、いつ四肢がもげてもおかしくない。
うるさい。うるさい。
★
どうしてボクは、唯一の家族を奪われて、こんな辛い思いをして、原初のダーカーなんていう面倒くさい肩書を背負わされている?
悲観だとか、哀愁だとか、そんな同情を誘うものじゃない。ただただ、ボクの嘆き。
ボクには、あの再開のまま幸せに暮らす選択肢があった。あの再開で、諸悪の根源である研究所を潰して、壊しつくす権利があった。でも、世界はそれすら許さない。
挙句の果て、人類がかかっているんだぞ?
そんな薄っぺらい同情を誘う、安っぽい脅迫。もう、うんざりだ。どうして、どうして。
僕を救ってくれない人類を、僕が救ってやらないといけないんだ。
「異能、解放。」
ボクは小さく、呟いた。
★
「もう、ダーカーですらないのですね、ヒューマ様。」
真っ暗だった。
己の瞳に酷似したその暗く、黒い、救いようのない世界を見て、そこから投げかけられた声を聴いて、ヒューマは恐怖心の欠如に気付いた。
それは、決して機能不全だとか、驕りだとか、マイナス面の欠如ではない。
人は、進化の過程で、必要のないものをそぎ落としていく。そうして、自分を完璧な存在へと昇華していく。それと、なんら変わらない。
もう既にヒューマには、恐怖心などという警戒神経は必要ない。彼は、もう、ダーカーという化け物の枠組みにさえ、留まれないのだから。
「君は、最初から分かっていたんだね。」
そうして自己の昇華を消化したヒューマは、真っ暗な中で白い光を放つ、放っているように見える少女に問いかけた。
もちろん、その闇の中で光を放っていれば、闇は闇でなくなる。光は放たれていない。それなのに、その少女の白い髪と、黒い装いは、なにもかもを照らすように輝いていて、やけに眩しかった。
そうして問いかけられた少女は、己の視界を覆う拘束具に触れて、微かに口角を緩めた。
「you know、か……言葉遊びが好きなんだね。」
「はい。セクタにできることは、そんな妄想、空想、想起の類だけでしたから。」
白髪の少女セクタは。
愛する人を想って生み出されたダーカー、セクタは、その寵愛を一心に受け、強大過ぎる力を授けられた。それに対して拘束具という反動が課されるのは、人間の脆さを、ダーカーの醜悪さを考えれば、当然のことだった。
暗闇の中に幽閉された彼女のできる思考が、そんな想いの類であったことは、誰にも口を挟ませないほどの、正当な権利であるといえた。むしろ、その間に世界への祈りを募らせていないところこそが僥倖といえる。
流石にそこは『愛』から生まれたダーカーとでもいうべきか。
セクタからは、ダーカー特有のおかしな雰囲気が感じられない。むしろ、普通の人間ですら到達できないほどの、聖なる精神。マイナスを付与されたダーカーが、プラスすら超えた天上に居るのだ。それはそれで、可笑しいといえばおかしかった。
「僕は今から君を殺す。」
「ええ。セクタは、殺される宿命に、死する運命にあります。この命は、きっと、存在していいものではなかったのです。」
「……」
物わかりの良い。というよりも、それが当然であるかのようなセクタの言葉。
彼女が前述したように、セクタはわかっていた。この結末を、どこか予感していたのだろう。そこに、己の命への後腐れというものは、皆無であった。
なにより、彼女は最強を誰よりも恐れた。最恐を、誰よりも忌避した。
もはやそれは殺害ではなく、救済だったのかもしれない。
「最後に、聞いてもいいかな?」
ヒューマは、セクタに手をかける前に、ほんの少しの疑問を投げかけた。
そこにあったのは、コイントスのような葛藤だ。
二択の選択肢。どちらでもいいが、どちらかしか選べない。そして、どちらか、選べない。いわば優柔不断な葛藤だ。きっとその問いかけは、そんなコイントスの表裏を決める、トスの役割だったのだろう。
「人を害する想い、人を超えた想い、人を歪める想い。人非ざる想いを受けた僕たちが、こうして濁った瞳を持っているのは、当たり前だ。」
目元の覆われたセクタは、まるで見えているかのようにその疑問に首を傾け、続くヒューマの言葉を聞き逃さぬようにと、人の域を出ない聴覚で青年の声を待った。
「愛する人を想う美しい想いから生まれた君は、一体、どんな瞳をしてるの?」
それが天使でも、魔女でも、淫魔でも。それらは、決して人の域にない想いから生まれた。
そんな人非ざる化け物たちが、濁った瞳を持っているというのは、ヒューマにとって満足できる結果だった。
もちろん、ダーカーの瞳の混濁にはある程度の化学的仮説が立っている。そこに、非現実的なスピリチュアルが割り込む余地がないことは、わかっている。
しかし、ヒューマは確認せざるを得なかった。彼は、自分の言葉を引っ込めることができなかった。コインを弾かずにはいられなかった。
ダーカーの異能は、当人を歪めることはない。それは既に確定した事実だ。
では、どうしてダーカーとなる人間は最初からどこかイカれているのだろうか。それを、ヒューマは異能は宿るべくして宿ると考えた。
異能を欲している、または異能を持つに相応しい。そんな人間に、異能は宿るのではないか。
その考えの決め手となったのが、フェルモアータのような例だ。彼女は、その力を望んでいた。
ならば、ダーカーの濁った瞳というものも、その想いに、元来の人間性によって左右されるのではないか。まだ、ダーカーに狂わされていないダーカーが、いるのではないか。
このダーカーによる絶望の坩堝は、希望を内容しているのではないか。ヒューマは、確かめたかった。
前のめりに答えを欲したヒューマに、セクタは優しく拘束具に触れた。
「セクタは、あなたより年上です。多分、六個くらいは、離れていると思います。」
「……?」
見当違いな方向から発生した言葉に、ヒューマは小さく疑問符を浮かべるも、それを美しい会話の旋律に乗せることなく続きを促した。
それを心地よさそうに受け止め、セクタは触れた拘束具を小さく弾いて続ける。
「時間をください。人生の先輩と、愚か者の先駆者と、地獄への先導者として。」
可愛らしい声で、しかしそこに並べられた言葉は、額面通りに受け取ればただ事ではない意味を持つ。
流石に静観の姿勢を保っていたヒューマも、不可解なセクタの語り口に口を挟まずにはいられなくなった。
「君みたいな人も、地獄に行くの……?」
ヒューマがただ知りたかったのは、それだけだった。
ダーカーという括りでも、人間というくくりでも、きっとセクタはその頂点にいてもいいほどの聖人だろう。性善説が本当だとしたら、きっと彼女は何も変わっていない。
それこそ、イデアから丸々こちら側に来たように。
想起すら、必要ないかのように。
がしかし、そんなヒューマの言葉に、セクタは故意的に説明を封じて応じた。
「私は、今から罪を犯します。だから、」
瞬いた赤の輝きが、闇の中を走って消えた。
本当に小さく瞬いたそれは、どこか危うげな雰囲気をヒューマに抱かせ、ダーカーという存在すら超越した青年に、恐らく最後になるであろう恐怖を抱かせてくれた。
「ッ、。そう、か。」
淀んで、沈殿して、ねじくれた、混沌。
セクタの瞳は、ちゃんと歪んでいて、淀んでいて、下手すればヒューマすら凌駕するほどの醜悪さで、世界を睥睨していた。
「アドバイス。この世界は美しくて、残酷で、宝石みたいです。でも、」
セクタの真っ黒な瞳に覗き込まれて、溢れ出しそうな感情を漏らして、青年はコインを掴んだ。
「そんなに、甘くはない、なのですよ。」
掴んだコインは、その会話の中で投げられたコインは、その表裏を見ることすら面倒くさくなって、酷く億劫になって、それでも、身体の下の方に沈殿していく感覚を取り払うためには、これからの自分を決定するためには、見なければならない。視ようとしなければならない。
「セクタは、最期だけ、貴方だけのセクタです。」
パァン、と。湿った薬莢と爆ぜた火薬。響き渡った銃声は、異能によるものではない。
人類を、いや、セクタという少女を、異能などという得体のしれない力で殺すことを、ヒューマは容認できなかった。
それは、本当にどうでもいいこだわりだった。今更ヒューマが善人ぶったところで、彼が根っからの性悪人であることは世界に刻み込まれている。このダーカーという存在によって刻まれている。
だから、それは本当に彼の最後の我儘だった。
「表、か。」
ひた隠しにしていた裏の顔で、ヒューマはセクタだったものを見た。
世界を掻き抱いて、人類を抱きすくめていた少女を、人類丸ごと撃ち抜かれた少女を、見た。
今、世界はどうなっているだろう。こうして、『デュカイオ・シュレー』の考えていた通りになってしまったのだから、どうにも腹の虫がおさまらない。
これから、どうやってダーカーを殺そうか。
どうやって、この終わった世界を終わらせようか。
この奇妙な世界で、奇妙になった世界で、自分だけが、ダーカーを超えた、奇妙な存在だ。
キョウシュウ・ヒューマの物語が終わる。
Mr.DARKERとしての物語が始まる。
誰よりもダーカーだった青年が、ダーカーを超えた物語。
プロローグを、どうやって始めよう?