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68話 接触

※前回までのあらすじ


 ゼーガスにまでルーク達の情報が出回っていた!



 屋台の主人に顔を見られてしまっている。

 遅かれ速かれ、この町に俺達が居るという情報が伝わるだろう。



 濡れ衣とはいえ、見つかれば騒ぎになる。

 この国の皇王も黙ってはいないはずだ。



 悠長なことはしていられない。

 出来るだけ目立たないように町を出よう。



 俺達はこっそりと人集りを抜け出し、そのままの足で町の外へと出る。



 特に騒がれる事もなく離れることが出来たが、問題はこれからどうするかだ。



 折角、渓谷を越えてまでやって来たというのに、まるで状況が変わっていない。



 そういえば、ここに来るまでの間に、点在する小さな森がいくつかあったな。

 ひとまず、そこに身を隠すか……。

 あとのことはそれからだ。



 そう思って動き出そうとした時だ。



 俺達が進もうとする道を阻むように騎馬隊が現れた。

 その数、僅か三騎。



 騎乗している者は身に付けている国章の入った鎧から、この国の騎士のようだ。

 そして、三騎いる内の一騎は女性で他の二人とは格の違う、見るからに質の高い鎧を身に付けていた。



 彼女だけが位が高いのだろうということは見てすぐに分かった。



 背が高く、妖艶な雰囲気の中にも勇猛さが窺えるその女騎士は、俺達に向かって問いかけてくる。



「ルーク・ハインダー殿と、その一行とお見受けする」

「……」



 ――ちっ……もう見つかってしまったのか……。

 町に似顔絵が出回ってるくらいだ。国の対応はもっと早くてもおかしくはない。



 とはいえ、この状況……どうする?

 嘘を連ねて誤魔化せるような状態でもなさそうだ。



 ならば、裁縫スキルで切り抜けるしかないか……。



「だとしたら、どうするつもりだ?」



 俺は悟られないように言葉を返しつつ、指先に意識を集中させた。



 すると、どういう訳か彼女は馬を降りた。

 しかも腰にある剣を抜く様子も無い。



「我々はそなた達に危害を加えるつもりはない」

「……?」



 それは予想外の言葉だった。

 そして彼女の身分も予想外だった。



「私の名はエルヴィーラ・ゼーガス。神聖ゼーガス皇国の第二皇女だ」



「お……お姫様!?」



 思わずそんなふうに驚いた声を上げたのは、傍にいるアリシアだった。



 彼女がそうなるのも分かる。

 一国の姫が、こんな場所に馬に乗って現れるなど思いもしないだろうから。

 しかも、ろくな護衛も付けず、姫らしくない騎士の風貌ときている。



 そんな姫が俺を名指ししてきたのだから驚きもするだろう。



「その姫様が俺達に何の用だ?」

「そう警戒するな……と言っても無理な話か」



 そこで彼女は一呼吸空けると、俺の目を見据えた。



「エーリックの名を出せば、多少は信用してもらえるだろうか?」

「エーリック……だと?」



 彼女の口からその名前が出てくるとは思わなかった。

 俺達に反応があったと捉えるや否や、姫は口元を緩ませた。



「意味はあったようだな」

「どういうことだ?」



「数日前、ラベリアの聖騎士長エーリックから、私宛に伝令の鷹が届いた」

「……!」



「鷹に付いていた文には、ラベリア陥落の顛末と、これまでのルーク一行の功績。そして、そなた達を保護して欲しいということが書かれていた」



 ――エーリック……。俺達の為にそこまでしてくれていたとは……。



「しかし、なぜエーリックが姫様に?」



 彼とゼーガスの姫君との接点が見つからない。

 それに皇王宛てではなく、なぜ第二皇女に手紙を送ったのか?



「ラベリア騎士団との親善試合で彼と剣を交えたことがあってな。そこで良い勝負をさせてもらい――というだけの繋がりだが」



 この国の姫君は本格的に戦いに参加する姫騎士のようだ。



 剣を交えた者同士だからこそ分かり合える何か……というやつだろうか?

 俺は攻撃専門ではないので、その辺の感覚は良く分からないが。



 とにかく、エーリックには感謝したい。



「だがラベリア陥落の報を受けて、皇都では警戒が強まっている。ルーク殿も例の噂を耳にしただろう?」



 彼女が言う噂というのは、俺達がラベリアを滅ぼしたという掲示板にあったそれのことだろう。



「皇都でもそれを真に受け、不安視する者も多い。エーリックは恐らくそれを心配して私に直接、文を寄越したのだと思う」

「姫様は俺達のことを疑わないのか?」



 すると彼女は小さく笑った。



「そなた達が噂通りの者であったとしても、たった三人で一国を滅ぼせるとは到底思えない。それが普通の捉え方だと思うが、恐怖に煽られた人間は時々判断を誤るからな。それが問題なのだと思う」



 この人が常識人で助かった。

 俺の周囲には捻じ曲がった奴らが多いので、真っ当な人間が輝かしく見える。



「それにエーリックが寄越したラベリア陥落の顛末の方が余程、信憑性が高いからな」

「その顛末というのは?」



 それはずっと気になっていた。

 俺が王都を抜け出して数日の内にラベリアが無くなってしまうなんて、とても信じがたい。



 その間に一体、何があったというのだろう?



「そういえば、そなた達は知らぬのか……」



 そこでエルヴィーラ姫は、エーリックが記した手紙の内容を俺達に話してくれた。

 その内容に驚いた。



「あのカイエンが……ニヴルヘイムの魔物!?」



 その事実はカイエンと対峙したエーリックとガゼフ王しか知らない。



 王都に突如として現れたという黒鱗の翼竜(ワイバーン)

 外にいた兵士が、それを〝呪われし者〟が呼び寄せたのだと思うのは必然だった。




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