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49話 魔法剣

※前回までのあらすじ


 エリスが仲間に加わった!


 俺達は城の外郭内にある客人向けの部屋へと戻って来ていた。



 エリスは部外者だったが、事情を話すと案外、あっさりと中へ入れて貰うことが出来た。

 爵位特権というやつだろうか。



 しかし、エリスは里を追い出されたままの格好で、金も無く、身なりも決して良いという状態では無かったので、服と装備品を一揃え買ってやった。

 それがあったので然程、不審がられなかったということもあるだろう。



 今、アリシアとエリスは別室で休んでいる。

 この間に俺は竜玉の加工をしようと思う。



 革ポーチから竜玉を取り出すと、部屋の一角にあったテーブルの上に布を敷き、そこへ竜玉を置く。



 そして竜玉を覆うように両手をかざすと、複数の糸を放出させた。

 細い先端が黒光りする玉の内部へと浸透して行く。



 こいつの解析は回収した時に既に済んでいる。

 だが、その構造があまりに複雑で、そう簡単に加工出来ない。

 だから、まとまった時間が取れるまで置いておいたのだ。



 竜玉を構成している物質は、この世に存在している鉱物に照らし合わせてみても同じものは存在しない。

 まさに未知の物質というわけだ。



 それでも構造が分かるのは、それらが魔力を帯びた物質であることと、そこにある一定の法則があって組まれているところにある。



 竜玉の中に残る魔力の塊。

 それを残すようにして、破損した部分を切り離して行けば、有用な部分を取り出すことが出来るだろう。



 俺は早速、不要な部分の切り離し作業に取りかかる。

 それはまるで細胞一つ一つを切り取って行くかのような繊細で集中力のいる作業。



 下手に間違った場所を切り離せば、保存したい部分に亀裂を入れてしまいかねない。



 こんな神経を使う作業はアリシアの翼の移植以来だ。



 しかし、作業を開始して暫くすると、異変に気付く。



 思ったよりも効率良く、サクサクと進んでいる気がする……。

 もしかして……スキルのレベルがアップしたからか?



 テーブルの上に双角錐に切り取られた石が転がる。



「できた……のか」



 当初は半日かかると目算していた加工作業だが、思いの外、早く終えることが出来たらしい。

 それでもここまで数時間は要していた。



「あとは……こいつを嵌め込むだけか」



 アリシアから預かってきた剣に双角錐の石を嵌める。

 事前に糸で測り、大きさを記憶させたこともあってサイズもぴったりだ。



 ガード部分にしっかりと嵌まった竜玉の魔法石。

 剣をかざして、その姿を眺める。



「なかなか、良い感じだ」



 これで完成だが……あとは、この剣が実際にどんな性能を持っているかが気になる。



 竜玉の魔法石の力を試してみたい。

 ここまで作れば、そう思うのも当然の流れだろう。



 ただ、初めてのものだし、この竜玉はあの黒怒竜(ニーズヘッグ)のものだ。

 室内で使うのは危険な気がする。



 俺はその剣を持って部屋を出た。

 そして中庭と思しき場所へと移動する。



 そこは普段、騎士が稽古などに使用しているような場所だと思われる。



「ここなら多少のことなら大丈夫そうだ」



 早速、剣を鞘から抜くと縦に構える。

 このままでは普通の剣と変わらない。



 竜玉の力を発揮させるには、呼び水となるような魔力を魔法石に流す必要がありそうだ。



 俺は、ほんの僅かな魔力を魔法石に伝達させる。

 すると、石の中央がぼんやりと輝くのが見えた。



 直後、刀身が目映い光に包まれる。



「……!」



 一瞬、その明るさに驚いたが、どうやら刀身から熱を発しているらしい。

 剣の周囲の空気が熱せられて、陽炎のような揺らぎが窺えた。



 それを見て、黒怒竜(ニーズヘッグ)のファイアブレスを思い出す。

 あの高熱の砲弾。



 それが、そのままここに宿っているのだと感じる。



 試しに軽く剣を振ってみる。

 それだけで空気が震え、熱源が飛んで行く感覚を覚えた。



「……っ!?」



 次の瞬間には、中庭に立っていた石の彫像が溶けるように真っ二つに斬られていた。



「これは……あらゆるものを焼き斬る、高熱ブレイドというわけか……」



 想像以上の威力だ。

 扱い方を事前にアリシアに伝えておかないと危険だな。



「これだけの力があるとなると……」



 今回の竜玉を加工した残りの破片。

 そっちにも僅かだが魔力が残存している箇所がある。



 そのまま破棄してしまうのは勿体ないし、危ないので、使えそうな破片だけ拾っておいた方がいいな。



「それはそれでいいとしてだ……」



 俺は目の前に転がる真っ二つになった彫像を見つめる。



 さすがに、このままにしておく訳にはいかないだろうな……。



 割れた彫像に糸を巻き付けると、裁縫スキルで縫い合わせるのだった。




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