Save1 何故ここにいるの?
一期を読んでいない方はそちらからお願いします。
夜が明け朝になった。
『おはようなのじゃ』
「おはよう、クレア」
いつの間にか戻ってきていたクレアに挨拶をして、八雲は自室から出た。
手にはクレアが入ったスマホを大事そうに握りしめている。
「おはよう、八雲。何故ここにいるの?」
「いちゃいけないのか」
「いいえ、そうじゃないわ。だって、八雲なら日付が変わる瞬間に行動を起こしそうだから、今ここにいることに驚いちゃって」
「ああ、全くその通りで、俺はもう目的を達成したから帰ってきたんだ」
「え?」
リビングには、八雲の母がいた。キッチンに立ち、自分と琥白の朝食を準備していたのだろう。発言通り、八雲がいるということは全くの予想外だったらしい。
『キラ』
「わかってるよ。ほら、母さん。これが俺の四人目の嫁だ」
クレアに促された八雲は、母にスマホの画面を見せながら、クレアを紹介した。
「朝食の時に聞くから、今はとりあえず顔を洗って席についていなさい」
「わかった」
洗面所に向かった八雲は、冷水で寝起きの顔を洗って、テーブルの席に着いた。
丁度その時に琥白も起きてきて、母と全く同じ反応をした。
「それで八雲。四人目の嫁、とはどういうこと?」
「あ、おにぃ、私も詳しい事は知らないから説明よろしく」
「説明って言われても……最後に嫁になった、としか説明のしようが」
一応説明しておくと、未来が最初の嫁で、次いで薫、その次にさくらの順だ。この順番は八雲が決めたのではなく、未来たちが話し合って決めたようだ。
とはいっても未来が一番であることに異論はなく、後の順は単純に告白した順だそうだ。
「他に三人もお嫁さんがいるということ?一体誰なの?」
「母さんは会ったことなかったっけ。未来と薫とさくらって子だよ」
「・・・だれ?」
「今日来ると思うから、その時に紹介するよ」
「それと、日本では四人と結婚なんてできないけど、どうするつもりなの?今は俺の嫁だ!みたいに思っててもいいけど、そのうち別れないといけないのよ。わかってる?」
「・・・わかってる」
日本は一夫多妻制ではなく一夫一婦制だ。未来、薫、さくらと同時に結婚はできない。クレアはヴァーチャルなので大丈夫かもしれないが、三次元の女の子と結婚するのならば、一人に決めなければならない。
とは言っても、決められるわけがない。さくらにはゲームの中で未来が一番だと言ったが、今となっては全員が同等に愛おしく、全員を愛していると言って嘘偽りない。
だからこそ一人を選ぶことなんてできるわけがない。
「とりあえず、後はその三人が来てから一緒に話します。いいわね?」
「ああ」
ひとまず会話はここで区切られ、それからは会話なく朝食が進んでいった。
ご飯を食べ終わったら、八雲は部屋へ、琥白も部屋へ、母は洗濯ものをしに洗面所へ向かった。
そのまま交流なく時が進み、時間はお昼へと差し掛かった。
インターホンが鳴った。恐らく未来たちだろう。八雲は部屋を出て迎え入れようと玄関を目指すが、それは既に開いていた。
「話は少しだけ聞いてるわ。入って頂戴」
「「「お邪魔します」」」
改まった雰囲気で、未来たちが玄関を潜る。
八雲は先にリビングで待っていることにした。
「あら、八雲ももう下りてきてたのね」
母たちがリビングに入ってきてからは早かった。
テーブルの片方に椅子を四つ並べて八雲たちが座り、反対側に母が座る。座り方は向かって左側が八雲で、八雲の隣に未来、薫、さくらと続く順番だ。クレアは八雲の前のスマホスタンドに置かれている。
「それじゃあ早速だけれど、説明してもらえる?」
「朝にも言ったが、説明と言われても何を説明すればいいのかわからないんだが」
「それもそうかもしれないわね。じゃあ質問するから答えて。いい?」
「わかった」
ゲームの中では色々ありすぎたので、説明しろと言われても簡単には纏められない。ならば質問されてそれに答えた方が、的確に聞きたいことにこたえられて時間の短縮にもなる。
「まずは、あなた達の事を教えて頂戴」
自己紹介をしろということだろう。
その意を正確に汲み取った未来、薫、さくらの面持ちが少し強張る。緊張しているようだ。
「私は明日葉未来と言います。八雲君のクラスメイトで、AWOでは結婚して、お嫁さんという立場でした。今でも私は八雲君のことが好きです」
「私の名前は朝倉薫です。未来と同じ八雲のクラスメイトで、ゲームの中では妻としてそばにいました。八雲のことは今も好きです」
「・・・瀬戸、さくら。・・・クラス、メイト、で・・・お嫁さん、だった。・・・今も、好き、です」
『妾の名はクレアシオンじゃ。未来に付けてもらった名で気に入っておる。クレアと呼んで欲しいのじゃ。AWOの中にいた存在なのじゃが、八雲のおかげでこうしてゲームの外に出ることができたのじゃ。この四人の中では最後に嫁になったの。じゃが、八雲を想う気持ちはだれにも負けておらぬと思うておる』
「未来ちゃんに、薫ちゃんに、さくらちゃんに、クレアちゃんね。わかったわ」
未来たちの自己紹介を聞いて、母は頷いた。
そして顔を上げると、真剣な目をして、八雲たちに問いかけた。
「それで、私はどうやってゲームの中から出てきたのか、ということには興味が無いの。ただ無事に帰ってきてくれた、それだけで。だから私が聞きたいのは一つだけよ」
そこで言葉を区切って、母は八雲、未来、薫、さくら、クレアの顔を見回し、問いかける。
「──今後の事は、どう考えているのかしら」
というわけで始まりました第二期!一期の更新一年待たせた挙句新シリーズかよ、と思われるは百も承知です。ですが、書いているうちにどこで区切ればよいのか分からなくなってしまったため、ここで区切らせていただきました。
どうぞ今後とも、この作品をよろしくお願いします!