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侘しい夜

作者: 杉将

 海苔の佃煮なんて母ちゃんが出すもんだから、肉を食わせろ! とつい怒鳴ってしまった。お金がないんだから仕方がないじゃない、と正論を持ち出す母ちゃん。その言葉の続きは飲み込んだようだった。つまり、あんたが働いてくれたら……というような言葉だ。確かに俺は、働いていない。俺の仕事は文章を書くことだが、今日は一文字も書いていない。俺は、俺と自己を切り離すことで精一杯なんだ、と母ちゃんに言った。母ちゃんは、呆れたような顔をした。俺としても、悲しすぎる言い訳だった。それから、海苔の佃煮で飯を二杯食った。

 俺は机に座り、何かを書き出そうとした。途端、虚しさに襲われた。その何かが、見つかりそうもなかった。あ、と書いてみた。続けて、き、と書いた。あきの始まり、柿の匂い。俺はキッチンに向かい、冷蔵庫から発泡酒を取り出して、飲んだ。柿の匂いを嗅いだような気がした。俺は書くことが嫌いじゃない。

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