第4話 ~異世界に召喚されるまでの前の話~
~異世界に召喚されるまでの前の話~
「んっ!?」
目を覚ますと見知らぬ場所にいた。
天使っぽい像が13体。
俺を囲むように置かれてある。
「お目覚めのようですね」
瞬きをした僅かな瞬間に、目の前に現れた女性。
その女性を視界にとらえた瞬間、身体が条件反射かのように、片膝をつき頭を下げた。
「あなたさまは、いったい!?」
あなたは?と聞こうとしたのだが、あなたさまと『さま』づけになった。
不思議な力が働いたかのように。
「なんとも、あなたは似ていますね。懐かしいです。私は、いわゆる、女神です」
俺に近寄ってきた女神と言う女性は、俺の顔を右手で触り、俺の顔をじっくりと眺める。
確かに、神秘的な雰囲気を感じる。
懐かしいといっているが俺には記憶はない。
似ているとも言っているから、俺の家族とでも間違っているのだろう。
「さて、あなたを呼んだのはですね」
優しく微笑む女神。
女神が指パッチンをすると、ソファーとテーブルが現れた。
「どうぞ、お座りください」
薄ピンクのゆったりとした羽衣を羽織っている女神が柔らかい口調で俺にソファーへの着席を促す。
「はい」
その言葉に従い、ソファーに座り、ふんわりしている。
落ち着く。
「さて、何から話しましょうかね」
女神は、テーブルの上に出した紅茶に砂糖を入れスプーンで混ぜる。
「簡潔に言うと、あなたは天使の血を引く者ということです」
「はぁ!?」
自分でもマヌケっぽい顔をして声を発したと思う。
「失礼しました。はいっ」
また、不思議な力で、敬語で謝ってしまった。
「昔から、不思議なことはありませんでしたか?」
女神は俺に質問してきた。
不思議なこと……
宝くじが買うと必ず当たる。
ゲームで出現率、0.001%の品が一発ででた。
中学校の屋上で飛び降り自殺しようとしたクラスメイトを偶然見つけ、助けに行ったが、ギリギリ説得が間に合わなくて、一緒に屋上から地面にダイブした。
『あー、これはやばい』と思ったのだが、清掃員が落ち葉を集めゴミ袋に入れていた上に落ちて助かった。
最近の話になると、ケガしている子猫を公園で見つけ、動物病院に連れて行こうと抱っこしていたら、連れて行く間に外傷が全くないほどに治癒して、動物病院に連れて行く前に、子猫から『大丈夫にゃ。治ったにゃ、ありがとうにゃ』と子猫が喋った。
あのときは、化け猫っているんだなーと思ったな。
今は、ショコラと名付けて、一緒に住んでいる。
「どうやら、心当たりがあるようですね」
「はい」
「無意識のうちに天使の力を使用していたのでしょう。それで、何故ここに天川くんを呼んだのかと言いますと、天使の血を引く者は15歳になるまでの14歳の間に、人間として暮らすか天使となるかを選択できるのです。そのためにあなたを連れてきました」
「天使ですか……」
いきなりそんなことを言われても驚いてしまう。
天使になったら何かをするのだろうか。
まぁ、仕事はあるよね。
漢字で天使は天の使いって書くくらいだからね。
そもそも、俺、14歳じゃないんだけど、高校を卒業した18歳だ。
「もしも、天使を選んだ場合は、地球ではない世界で、天使として生活してもらいます。そこで、自主的に行動して、その時の行動に応じて、どの神様のもとに配属されるかが決まります。年齢に関しては、神界(最上階)や天界(上界)と、地球などの下界では、年齢の捉え方が異なります」
「異世界ということでしょうか?」
天界で生活をし、仕事をすると思ったのだが、ちがうみたいだな。
年齢に関しても納得だ。
「はい。地球とは異なる世界です。医学や科学の発展は乏しいですが、その代わり魔法があり魔物と呼ばれる竜・ゴブリン・トロール・スライムなどのモンスターが存在し、魔族、エルフ・ドワーフ・獣人・小人・精霊・妖精など様々な種族が存在します」
人間以外の種族に会えるのは、興味がわく。
天使にならなくても、両親には会えるのだろうか?
「両親に関しては、心配いりませんよ。天川くんが天使にならなかった場合は、天川君が人間としての寿命を全うするまで側にいますし、天使になった場合は、地球での生活を切り上げ、本来の天使の業務を行う為に天界にもどってきます。まぁ、天川くんが天使になる決断をした場合は、天川君の神様の配属先が決まるまでは会えなくなりますけど」
女神さまの話しぶりだと、天使になると寿命は人間よりも長そうだ。
長生きしたいし、天使になるのが得策かなー。
それよりも、モンスターとかがいるような世界に行っても、俺は生きていけるのだろうか?
科学レベルが低いとなると、トイレットペーパーとかなさそうだよな。
葉っぱとか布とかで拭くのは嫌だな。
食べ物も、気になる。
「その点は、心配いりませんよ。天使は行くことになる異世界で、何者よりも強いステータス・能力といわれています。トイレットペーパーなどについても、さまざまな物をエンジェル化できるエンジェルフォンをお渡ししますので、エンジェルフォンで、木を撮影し、その後、いろいろとエンジェルフォンの表示される内容に従い入力していくとトイレットペーパーが作れます」
なんか、天使って優遇されている感、半端ない。
あれっ、それにしても、俺口に出していないのに……
もしかして、考えていること読まれてる?
「私は、女神ですので、天使や天使と同等の存在の悪魔よりも下位の者の思考が読めますよ。だから、天川君の思考は読み放題です。大天使や大悪魔などの天使・悪魔の上位職の者や一定の場所では思考を読み取ることは制限されますが……」
ちなみに悪魔が使う→魔法
天使が使う→天法
下界に過去に悪魔が教えたのが魔法。
天使が教えたのが、天法のようだ。
天法として治癒天法、浄化天法があるが、下界の者は天法の存在を知らない為、治癒魔法、浄化魔法と認識しているらしい。
因みに、悪魔と言っても悪い者と言う意味ではなく、攻撃にもなりえる魔法やスキルを得意とする存在らしい。
悪魔は下界で、寒くて困らないように『火魔法』を伝え、飲み物に困らないように「水魔法」を伝えるなど、日々の生活に困らないように教えたのだとか。
天使は、癒やす系のスキル・天法を得意とする。
ケガを治療するために『治癒魔法(治癒天法)』、迷える魂を救う為などに『浄化魔法(浄化天法)』を伝えた。
天使や悪魔と神様は分けているが、天使も悪魔が得意とする攻撃魔法も扱えるし、逆もまた然り。
いたずら好きな者を『悪魔』それ以外を天使にしたという話もあったとかなかったとか、俺にいろいろと教えてくれた女神さまは、神様の中でも若手らしく、悪魔と天使の成り立ちについては、そこまで詳しくない様子だった。
今回の俺の今後についての話も、初めての仕事みたいだ。
『間違って伝えてしまうこともあります。もしもそのような事態になりましたら、大変、申し訳ありません』と予め頭を下げて謝られてしまった。
天使や悪魔と言う種族は、下界に存在しない者の為、『 』が本来の数値であるが、目だないように隠蔽してあるらしい。
『翼術』 神様と一緒に飛行訓練を神界でしてきたから、問題なく空を動き回れる。
翼は見せなくても空を飛ぶことが可能なため、風魔法の上位属性である雷魔法の使い手だと下界の者は勘違いしてくれるとのこと。
空を飛べる種族に、翼の生えたハーピィ族(魔族扱い)、フェアリーと呼ばれる妖精族、ラミリュと呼ばれる精霊族、そして翼のある魔族がいるとか。
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