0日目
──これは、私が見た夢の話である。
雨が降りしきる中、雨音に混ざって誰かの啜り泣く声が聞こえる。
それは、私のだったかもしれない、あの子のだっかかもしれない
彼のだったかもしれない、彼女のだったかもしれない。
たくさんの人間が今この瞬間、きっと泣いているんだろう。
ふと雨音が止んだ。
私の目の前に中学生くらいだろうか
幼さを残した子供が立っていた。
子供は帽子を被っていて顔は見えない。
僅かに覗く口元がニヤリと、ふいに笑った気がした。
「これは、夢オチの物語。」
小鈴の音の様な、どこか凛とした声だった。
段々と意識が遠のいていく様な気がした。
ここはどこだっけ?
私たちの教室だ。
周りにいる皆は誰だっけ?
クラスメイトの、仲の良い子達だ。
頭を働かせる事によってどうにか意識を保とうとする。
しかし次第に頭の中の疑問の答えが出なくなっていく。
今日の天気は?
今日何日だっけ?
今何時だっけ?
今日はなんで教室に集まったんだっけ?
教壇の上のアレは、なんだっけ…?
なんで皆眠っているんだっけ?
目の前のこの子供、見覚えがある気がする
誰だっけ?
あぁ、そうか
この子はたしか…
考えているうちにもどんどん靄が掛かるように意識が遠くなる。
なんだか凄く眠いな
みんなも寝ているから、少しだけならいいかな…
何かを言っている子供の声が何処か心地良い。
子供の口元はきっと終始笑っているのだろう
何の確信も無いが、そう思った。
「おやすみなさい、アリス…」
遠くで、まだ幼さを残した声が響いた気がした。