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目が覚めたらきれいな女性が座っていた。
椅子が二つ。そして女性の後ろには扉と大きな鏡。
周りは何もない。
『残念ながらあなたの人生は終わってしまいました』
「えっ…いやいやいや…うそでしょ?」
『嘘ではありません。ほらここにあなたのお名前が』
差し出された紙に私の名前が書かれていた。
死者と書かれている。
そして変哲のない私の名前が続く。
「書いてますけど…私変な男に殺されたんですよ!?」
『???』
そんな可愛い顔で首を傾げられても…。
「えっと…?あの私の最後の瞬間とかって映像残ってないんですか?」
『ないですね』
「その後ろの鏡に映るとかは!?」
『ないですね』
「えー…じゃ…じゃあ私はどうなるんでしょうか…?」
私は弁明を諦めて、この後起こるであろう事を再確認する。
『あなたが居た世界とは違う世界に転移させて頂きます』
異世界ですか…。
『それに伴いあなたに少しばかりお力を授けましょう』
「力?」
『お好きな力を仰ってください』
好きな力って言われても…。
「他にも私みたいな人っているんですか?」
『そうですね…少なくはないです』
「その人達はどんな力を?」
『例えば不老不死や、魔法能力とか』
「とかってなんか雑ですね…」
『し、仕方ないんですよ…何かと難しい注文をされて簡潔にまとめるとそう言わざるを得ないんです…』
少しむすっとする顔が可愛い。
はっいけないいけない。
「た、例えばその力とかって具体的に何個とかって決まってます?」
『それでは…3つだけ願いを叶えましょう』
「3つも?少しばかりどころか贅沢な…分かりました」
△△△
『分かりました。できる限りその要望を承ります』
私の願いを聞いた女性がそう言う。
やっぱりめんどくさい要求してしまったのかな?と思いつつ、
私は次の世界を楽しみにしていた。
前とは違う、誰も私を知らない世界。
生まれ変わりとは違うけど、新しい自分。
転校生ってこんな気分なのかな
『最後に貴女のお名前を』
「はい?」
『向こうの世界でのお名前を聞いても?』
えっ?
今までの名前じゃいけないの?
まぁ…前の世界の名前を律儀に名乗る必要はないって事かな…
「そうだなぁ…じゃあ アイで」
『ふふふ…それではアイ。よき人生を』
「えっとちょっと待って!あなたの名前は?」
『私はイリア。女神イリアです。アイ私にはここまでしかお力になれませんが、強く生きてください』
「イリアさんね…。ありがとうイリアさん。結果はどうあれ私は自由になれたよ。またね!」
女神イリアの後ろの扉が開き私を吸い込んでいく。
イリアさんは手を振りながら私を見送っていた。
おかあさんが居たらこんな感じで毎日見送ってくれたのかな…。
そこで私の意識は途切れた。
△△△
『またね…ですか…何とも不思議な少女でしたね』
「本当によかったのか?」
イリアの後ろの鏡から黒いコートを羽織った青年が現れる。
青年は先ほどまでアイが座っていた椅子に座りイリアの方を向きながら
「あの子は前の世界で何にもやっちゃいないだろ?」
『この世から消えたいと強く願ったのはアイです。最初は脅しのつもりでしたが、だんだんアイも自分の力の説明をしている時に目がキラキラ輝いていました…。あの世界には純粋な気持ちが必要なのですよ…』
「そんなもんかね…」
青年はため息をつきながらそう言う。
イリアはくすくすと笑いながら
『それにあの子は…もう長くなかったですからね…』
「あぁ…まぁ死相が見えてたからな…」
『だから貴方に頼んだのです。私の元へ連れてい来てもらうために』
「恨まれ役の身にもなれよな…」
『ふふ…それでは見守りましょう。これからのアイを』