転校生に覚える既視感
課題提出…完全に忘れてた…。さて、どうするか。誰かのを見せてもらって写すか、手伝ってもらうか。こいつらに……いや、ないな。藍葵に頼んだら馬鹿にされるうえ最終的に手伝ってもくれないだろうし、綾瀬は頼めば手伝ってくれそうだが見返りが怖すぎて到底頼む気にはならない。そんな感じで考えているうちに、いつの間にか学校に着いていた。
「何か昨日までより人多いね。」
「当たり前だろ。昨日までは補習だったんだから。
あーあと、今日転校生が来るらしいな。だからだろ。」
二人の声が聞こえるが、俺にはそんなことより課題をどうするかで頭がいっぱいだった。
「ねぇ、柊侑?聞いてる?」
「あ、ごめん。聞いてなかった。」
そう言われて綾瀬を見ると、仏頂面で俺を見ていた。
「あ・そ・こ!男子に絡まれてるのって噂の転校生ちゃんじゃない?」
綾瀬と藍葵の視線の先を見ると、確かに男子数人に絡まれている子がいた。ここからだとよく見えないが、多分その転校生なのだろう。
「ねぇ、君。帰国子女って本当?」
「可愛いね。転校してくる前も相当モテたんじゃない?」
そういった男子の台詞をすべて無視したその子は、少し視線を泳がせた。…と言うより、周りの様子を伺っているようだった。その内に俺たちに気付いたのか、こっちを見ていた。
「なぁ、気のせいか?見られてないか?」
…気のせいじゃなかった。男子の台詞を完全無視でこちらに向かってきている。
「すみません!助けてください!
男子に絡まれて…怖くて困ってたんです!」
何故だろう…台詞と表情があってない。台詞こそ可愛らしく気弱な印象を受けるものの、表情が(さっさと助けろよ)とでも言いたげな…はっきり言って怖い。
……………………………
何とか男子を追い返し、元いた場所へ戻るとさっきの転校生が今度は笑顔で迎えてくれた。
「先ほどはありがとうございました。とても助かりました。」
そう言って笑った転校生。柔らかそうな長い髪を二つに結び、意思の強そうな目が特徴的だ。さっきは気がつかなかったが、こうしてみると確かに美少女なのが分かる。綾瀬もなかなかのものだが、それに劣らずまた違う可愛さがある。
「私は叶瀬紫音といいます。今日からこの学校に通わせてもらいます。」
聞けばこの子は、本当に帰国子女らしく中学三年間はイギリスの学校に通っていたという。
「それで紫音は何で絡まれてたんだ?」
藍葵に聞かれると、とても嫌そうに叶瀬は答えた。
「別に…ワタシが可愛いからでしょ。
あと、気安くファーストネームで呼ばないでくれます?」
俺は、この子の話し方に何となく既視感を覚えた。さて、どこでこの話し方を…。そう考えていると、藍葵が言った。
「何か…あれだな。こいつの話し方、会ったばっかりの時の茉里に似てるな。」
あぁ、そうか。分かった。藍葵に会ったばかりの時の綾瀬のキャラそっくりなんだ。あの頃の綾瀬は荒れてたな。話しかけてくるやつ全員に突っかかっていって。昔は普通のやつだったのに。いつからだったかな…。
To be continued …
やっと、3話にいきました。まだまだ核心には触れていません。
次回、綾瀬の過去に若干触れていきます!