呼んでいるのは
『お願い…絶対に忘れないで…私は……』
時々、夢に見る遠い記憶。あれはいつの頃か、誰だったのか…何を言っていたのかさえ、今はもう思い出せない。唯一つ、分かる…俺はあの子の事が好きだった。
不意に誰かを呼ぶ声がする。呼んでいるのは誰…
「…誰。」
俺のすぐ傍から声がする。
「誰じゃないの。ほら、遅刻するよ?」
そう言って肩で揃えた髪を耳にかけつつ、目の前で笑っているこいつは
「おい、綾瀬…」
「どうしたの?あと、茉里って呼んでよ。」
どうして、こいつがここに居るのか…。
「綾瀬…何故、ここに居る?」
「何故って…柊侑を起こしに来たんだよ?」
キョトンとした顔でそう答えた綾瀬。
…よし、一度整理してみよう。今は7:50、ここは俺の部屋。そして、俺と綾瀬が乗ってるのは…
「だからって何故、ベッドに乗ってるんだお前は!
あと、家の鍵はどうした。かけてあっただろ?」
そう。おかしいのだ。俺は昨日、ちゃんと戸締りをして寝た。勿論、玄関の鍵もチェーンを含めしっかりと閉めたはずだ。それなのに何故…何故、綾瀬がここに居るのか。
「えー、それは、勿論…愛の力で?」
ニコニコしながら答えないでくれ。
「愛の力で鍵が開いてたまるかぁ!!!!」
そう叫びつつ俺は、綾瀬を部屋の外に何とか押し出した。
「えー、何で追い出すのー。
せっかく美少女が起こしに来てあげたのにー。」
部屋の外でそう言って、文句を言う綾瀬。
「着替えるから、待っとけ!!」
…この朝から鬱陶しい自称美少女。こいつはいつからか俺に執拗に絡んでくるようになった。確かに元から仲は良かったし、普通の友達以上には話したり遊んだりもしたが…何がきっかけだったのか。
「藍葵君も外で待ってるから急いでね〜♪」
…何で藍葵まで来てるんだ。お願いだから、朝から余計な体力を消耗させないでくれよ…。
To be continued ……
初投稿です。至らない所も多々あると思いますが、読んでいただきありがとうございました。
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