王子様はリスペクトされる。
光葉の家に行った次の日。
「眠いー」
「ほら、光葉。移動なんだから起きろ」
「うぇえ…面倒…」
机の上で突っ伏している光葉を教科書で軽く叩く。
眠いのか反抗も何もしてこない。
「光葉くん…大丈夫?」
「うん!大丈夫だよ〜」
女子が心配して声をかければ、ぱっと顔をあげてイケメンスマイルを浮かべる。
そういうところは尊敬するぜ。
「さーて孝弥!行こうか!」
「はいはい」
教科書を持ち、廊下を並んで歩く。
歩いている時にも光葉に声をかける女子は多い。
それに完璧に応える光葉は本当にすごいと思う。褒めていいのか悪いのか。
そんな中、1人の男子が光葉に声をかけた。
「光葉さん!」
「んー?あ!海月くん」
「ちわっす!」
にこっと一般女子よりもかわいらしい笑顔を浮かべる彼は冠野海月くん。
あまり高くない身長にぱっちりとした目。生まれる性別を間違えたんじゃないかってぐらいかわいい子だ。
しかし性格は容姿と真逆。口が悪く、性格も良いとは言えない。
なのにかわいいと言われるためイケメンで女子に人気の光葉をリスペクトしているらしい。
光葉も大変だな…。
「海月くん、移動教室?」
「いいえ!光葉さん見かけたので!」
「そうかそうか〜」
ほわほわ〜っと2人の周りに花が見える気がする。気のせいかな。
「あ、光葉さんの近くにいる陰キャラさんもちわっす」
「あ、うん。こんにちは」
「光葉さんなんでこんな奴と仲がいいんです?」
「孝弥は一緒にいると落ち着くんだよ〜」
「光葉…!」
「へぇ…こんな奴がねぇ…」
ジトっと海月くんに見られる。うわぁ、全然怖くない。
だけどこんなこと言ったらキレそうなのでやめておこう。
「光葉さんすみません!もうすぐ授業なので行きますね!」
「はいは〜い」
「あ!今日一緒に帰りませんか!」
「いいよ〜」
「じゃあお迎えに上がりますね!」
「待ってるね!」
ペコッとお辞儀をして去っていく。
礼儀正しいんだか正しくないんだかわからない子だなぁ…。
「光葉、俺らも急がなきゃまずいぞ」
「やべ!急げー!」
「ちょ、早い!」
ほとんど寝ていたが授業が終わり、放課後。
光葉とだべっているとバタバタと廊下を走る音が響く。
と思っているとガラッと思いきりドアが開いた。クラスの奴らはなんだなんだと一斉にドアの方を向いた。
「帰りましょ!光葉さん!」
「海月くん、もう少しドアに優しくしてね…」
「はっ!すみません」
しょんぼりとした顔にクラスの女子たちがかわいいと騒ぐ。
その瞬間ギロりと海月くんが女子を睨みつけた。
「あはは、ごめんね?海月くん可愛いって言われるの嫌なんだって」
「え、そうだったの?」
「だから言わないでもらってもいいかな?」
パチンっとウインクをすると顔を真っ赤にしてわかったという女子。
さすが女子キラー…。
「さ、さ、さ、さすがです!光葉さん!」
そしてキラキラとした目で光葉を見つめる海月くん。
そんな姿を見て、改めて光葉はいろいろと大変だなと思うのであった。
王子様もかわいい女の子なのになぁ…。
次回ぐらいに新キャラ登場します!