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朝の温度  作者: ほととぎす
2.彼女と話す
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3

ライトアダルトノベルスはアニメ・マンガ調のイラストを表紙や挿絵などに使用し、異性間もしくは同性間、さらには人外のものとの性描写を含む娯楽小説であり、官能小説の一ジャンルである。

別名ジュブナイルポルノ、エロライトノベルとも呼ばれる。


この手の本を私の残念な兄の本棚に一冊おいてあるのを発見したことがある。

もちろん読んだことはない。

いや、興味本位でちらりと覗きはしたことはあったがそれもほんの一瞬のことだ。


黒澤まことはやけに真剣に棚を見ている。

探している本でもあるのだろうか。

まさか官能小説で。


私が見間違えているかとも思ったが、どう見てもあの綺麗な女子高生は黒澤まことだし、本棚には非日常性ハーレム運動会だとか向えの人妻うんたらかんたらなど声に出すのも憚られるタイトルの本が並んでいる。


しばらく呆然と彼女のことを眺めていたがあわてて目をそらす。

幸いなことに黒澤まことはまだ私がいることに気づいていないようだ。

私は一目散に本屋の出口を目指したのだった。


家に帰り制服のままベッドに横になる。

本屋で見た光景が目に焼き付いて離れなかった。


「なんなんだろーな」


自分の部屋の天井を見つめ一人つぶやく。

まだ私は黒澤まことについて何も知らない。

まともな会話をしたこともない。

わかっていることは美人なことと、趣味を読書といったこと。

この二つだけでは何の解答も得られない。


しかし想像は自由自在だ。

実は弟がいて頼まれた本を探していたとか。

いや、これだとあの真剣な目が説明できない。

彼女の姿には恥じらいすらも感じず、むしろ堂々と探していたと言える。

実は官能小説を飲むのが好き、むしろ研究しているのだとか。

実は優等生オーラを出しながらも裏ではえっちいことが大好きな淫猥女子高生だとか。

実は日夜研究を欠かさず裏では幼気な男子生徒を……。


だめだめだめだめ。

やめよう!

何を考えているんだ自分は。

こんなことを想像している私のほうが変態じゃないか。


自分の顔がかっと熱くなるのがわかった。

うつ伏せになり枕に顔をうめ、足をバタバタさせる。

急に恥ずかしくなってきた。


「風呂入って水浴びて頭冷やそう、そうしよう」


よろしくない想像を跳ね除けるように頭を振り、私は部屋を後にした。



翌日。

私はいつも通り早起きして家を出る。

昨日のことは忘れていない。

忘れていないが見間違いだ、きっと夢だったのだと思えるぐらいには記憶が風化していた。

新鮮な外の空気を胸いっぱいに吸い込み学校へ向かう。


教室について一番に窓を開けた。

太陽は東に、空は青く、鳥は木でさえずる。

いつもと変わらない私の世界に安堵を抱いた。

鞄から本を取り出し窓枠に寄りかかりページをめくる。


今日の本はちょっとしたホラーファンタジーだ。

ある日森を散歩していた少女は河童が住む村に迷い込んでしまう。

家に帰ろうとするも森から抜け出すことは叶わず、その河童しかいない村でしばらく暮らすことになってしまった、そんな話。


しばらく読んでいると教室の扉を開ける音がした。

まだ時間も早いのにいったい誰が来たのだろう。

そう思い顔をあげるとそこにいたのは、黒澤まことだった。


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