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朝の温度  作者: ほととぎす
5.私は考えるⅡ
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授業を軽く聞き流しながら私は昨日知ったことを整理する。

まことのMP3プレイヤーにあったもの、それはドラマCDというものだった。

ドラマCDとはCDに音声のみのドラマを収録した物である。

中でもあの迂闊にも再生してしまったものは「百合」というジャンル(?)、つまりは女性同士の恋愛を描いたものらしい。

他にも同じ系統のものが幾つかあったことからまことが収集したものなのだろう。

……明らかに18歳以下お断りの代物だったがそれは置いておいて。


百合ゆりとは、女性の同性愛、またはそれに近い友愛のこと。

また、それらを題材とした各種作品、漫画、ライトノベル、アニメ、同人誌のジャンルをさすことが多い。

「ガールズラブ(略してGL)」とも称される。


つまりまことは百合オタク(?)というやつだったのだ。

R18作品まで収集しているまことのことだ。

ライトアダルトノベルスの棚にいたのもその関係だろう。


ふぅー、ちょっと休憩。

ここまで調べ理解するまで私は膨大な労力を必要とした。

漫画やアニメ、ゲームの世界と無縁な私には凄まじく刺激が強かったのは言うまでもない。

ましてや女の子同士のその……情事の音声などいきなり聴くものではないのだ、決して。


まことの趣味に関し私が嫌悪感を持つということはない。

私は重度の本の虫だし人の趣味にとやかく言える立場ではない。

それにどんなことがあってもまことはまことに変わりないのだ。

しかし私の軽率な行動から秘密を知り、更には詳しく調べたということに罪悪感を抱いていた。


放課後に会った時に何を言われるのだろう。

ああ、まことはこのことを皆にばらされるかもと心配しているのだろうか。

世の中の腐女子やら百合オタやらに偏見を抱く人は少なくない。

秘密にするのも道理である。


だが、私はそんなことは絶対しない。


放課後にまず勝手にMP3プレイヤーを使ったことを詫び、そしてまことの趣味について秘密にすることを説明しよう。

とにかく謝って謝りまくろう。


残った午後の授業時間すべてをまことへの謝罪シミュレーションに使い、私は放課後を迎えた。



テスト期間前でもないこの時期図書館に来る人などほとんどいない。

それは学生が本に興味を持っていないという非常に嘆かわしい事態であるのだが今日に限っては都合がよい。

校舎に近い図書館の裏、つまりは裏口がある付近なのだが、思った通りそこには一人を除いて誰もいなかった。


「まこと、ごめん掃除が長引いてしまって。待たせたかな」

「だいじょうぶ、呼び出したのはわたしだから。それよりもね、彩季」


まことは目を伏せて言いづらそうにしていた。

そうだ、私からきちんと説明して謝らないと。


そして一瞬の沈黙の後、声をあげたのは二人同時だった。


「ごめん!!」

「ごめんなさい!」


お互いの大きな声に驚き、私たちは顔を見合わせる。


「まこと、何言ってるの?まことのMP3プレイヤーを勝手に使ったのは」

「いいの、彩季は黙ってって」


強い口調に圧倒され私は口を閉じた。

何時になく力強いまことの瞳から目が離せない。

何か決意を秘めたような表情は綺麗で凛々しい。

物語のヒロインのような君は一体何をしようとしているのか。

私には想像もつかない。


「ちゃんと説明するから。最後までわたしにいわせて」


まことは一歩、私に歩み寄った。


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