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朝の温度  作者: ほととぎす
1.彼女と出会う
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私は梅宮彩季。高校一年生。

趣味は読書。特技は目立たず平凡に平和に暮らすこと。

今日も私は平和に過ごす予定だったが、どうやら私は厄介な人と関わってしまったらしい。



月曜日。

私は早めに家を出て学校へ向かう。

道にはうっすら靄がかかっていて誰もいない。

私はこの朝の静けさ、空気の冷たさが好きだ。

ゆっくりと五感で感じながら歩く。

これが数十分後にはチビッ子とかちょっと怖いお兄さんの通勤通学ラッシュでかき消されてしまう。

だから少し眠くても頑張ってこの時間帯をキープしている。

学校についてからは自分の教室で読書をする。

誰もいない学校。

これもお気に入りの一つ。


今日読む本はデカルトの方法序説。

本屋さんで平積みしてあったから、恰好をつけてつい買ってしまった。

内容は難しくてページは遅々として進まない。

普段はファンタジーやSFの物語を好んで読む私にこの手の本はベリーハードだ。


「無駄な買い物してしまったかな」


ため息をして本を机に置く。

いつもは至福の時間が今日は頭を悩ませる苦悩の時間だ。

席から立ち上がり、窓に近寄った。

太陽は東に、空は青く、鳥は木でさえずる。

その景色の美しさにため息をつく。

朝の学校と校庭はまるで私一人しか存在しない異世界のようだ。

私だけの世界を堪能する。


「わたしは考える、だからわたしは存在する」

「えっ」


突然のことに私は声をあげて後ろを振り向いた。

教室にはいつの間にか人がいて、しかも机の上に置いていた私の本を手に取ってみている。


「デカルトの有名な言葉。でもそれが書かれているのが方法序説という自叙伝だということを知っている人は少ないんじゃないかな」


そこにいたのは一人の女子生徒。

真っ黒でサラサラの長い髪、とても綺麗な顔に赤い眼鏡。

美しく凛とした姿は本の中に出てくるヒロインを彷彿とさせる。

そうだ、間違いなく彼女はヒロインだ。

彼女は本から私に視線をうつす。


「これ、あなたの本なの?」

「う、うん」

「大切にね」


そういって彼女は教室を出て行った。

しばらくぼーっとして彼女のいた場所を見つめる。


「えーっと、誰?」


疑問とともに私は一人、教室に残されたのだった。


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