僕には勇気がない。
次の日、朝8時に起きた僕は、いつも通りに朝食を食べてから自転車で大学に向かった。
自転車で大学まで20分なので、1限開始の9時20分の30分前に大学に着いた。
早めに大学に着いた理由は1限の教室に早く着いて隅の静かな席を早めに確保するためだ。
ぼっちには、静かな席を確保することも重要なのだ。
これに失敗すると周りがヤンキーだらけの真ん中の方の席に座る羽目になってしまうのだ。
ちなみに僕は経済学部なので、講義の授業が多い。講義の授業が多いのは、隅っこで目立たないで授業を終えたい僕に取ってうれしい事である。
なるべく目立たないように1,2限と授業を終えた僕は学食へと向かった。
経済学部の講義が基本行われるのは3号館である。
僕の通う大学は総合大学なので色々な学部があり建物が1号館から10号館までの10の建物に分かれている。
ちなみに1号館から5号館までが文系、6号館から10号館までが理系である。
その3号館の近くにある学食に僕は入った。
そこで僕はいつもどおりに、安くて美味しいので学食一番人気のカレーライスを頼む。
その後僕はお盆にカレーと水を乗せて、学食の2階の1番端っこのテラスに向かう。
このテラスは席が一人掛けなのと、入口から一番遠いこともあって、常に人で込んでいる学食の中にありながら、ほとんど誰もいない場所なのである。
今日も学食2階テラスには、僕と同じぼっち勢だと思われるいつもこのテラスにいる、一人で来ている男女数名がいるぐらいだ。
ちなみに僕は、この中の一人の女の子が物凄く気になる。
その女の子は、寂しそうな雰囲気やオーラが見て取れ、いつも一人でいるので、その女の子は僕と同じで、ぼっちで寂しい大学生だと思う。
ただ僕に、もちろん全く知らない女の子に話しかける勇気などあるはずもない。
このテラスには他にもぼっち勢が何人かいるし、周りに見られるのも怖い。
昨日健斗にはポジティブに明るく頑張ってみると言ったものの、それとこれとは別の話だと思う。
そんなふうに葛藤しているうちに、カレーを食べ終え、3限がそろそろ始まる時間になったので学食を出て3限の教室に向かった。
そんなこんなで、今日も大学での1日が終わった。
この胸に残る気持ちはなんなんだろ、あの子と話したい、あの子と仲良くなりたい、そんな気持ちばかりが胸に膨れ上がって苦しい・・・
誰かに相談したいけど、こういう相談は美雪ちゃんにはしづらいし・・・
健斗に相談するか。
健斗のためにも、あんまし僕から電話はかけたくないんだが仕方が無い。
この時間なら健斗は仕事終わった頃だろうし、仕事の迷惑でもないだろうし、まだ家に居ないと思うから安心だ。
『もしもしー。蓮だよ。急に電話掛けてごめんね。』
『蓮お前、運がいいな。俺今職場から外に出たところだよ。』
『よかったー。家に奈美ちゃんがいたら怖いからねぇ。』
『本当に、あいつはすぐ勝手に俺の家に転がりこんでくるし、お前と電話してるだけなのに浮気疑って1日口を聞いてくれなかったり愛もここまでくると怖いわ。』
『でも、健斗君は奈美ちゃんの事好きなんでしょ?』
『もちろんだよ。独占欲が強いところも可愛いからね。で、お前何の用だ?電話してきたからには用があるんだろ?』
『そうだよ、忘れかけてたよ。ありがとう。僕最近大学でさ、気になってる女の子がいるんだ。その女の子、僕がいつも飯食べてる学食の隅っこのテラスにいつもいるんだけどさ、なんか凄い親近感沸くんだよね。いつも一人ぼっちで寂しそうっていうかなんというか。とりあえず何とも言えないけどあの子と話したい、あの子と仲良くなりたいという気持ちが強すぎて苦しいんだ・・・』
『おいおい忘れるなよ・・・で、蓮お前よ、その気持ちは恋だ。お前はその女の子に恋してんだよ。ついにお前に好きな人ができたか。お前は高校時代、女の子に興味が無さ過ぎて俺とホモカップルじゃないかという噂が一時期立ったほどだからな、ははは。』
『やっぱ恋かぁ・・・って健斗君嫌な事思い出させないでよ。あの時健斗君全然否定してくれなくて焦ったんだってば・・・僕だって流石に女の子が好きだよぉ・・・で、僕どうしたらいいと思う?』
『どうしたらって、要はお前、その女の子の事が好きなんだろ。そんなの告白するしか無いじゃん!』
『そうはいっても・・・』
『お前昨日ポジティブに頑張るって言ったばっかりじゃんよー。勇気振りしぼって告白してみれば、結果はどうであれ、お前自身の何かが変わるかもよ?』
『そうだよね・・・勇気が大事だよね。健斗君ありがと。じゃあまたねー。』
『告白したら報告しろよー。じゃあなー。』
その後僕は美雪ちゃんとたわいのないメールをした後、心の葛藤をしながらベッドに入ったのだった。