僕は天国から地獄へと突き落とされた。
迎えた初デート当日。
僕は待ち合わせ場所のビルの下に居た。
梅雨も終わり、大分暑くなってきた中、僕は葵さんを待っていた。
『れーんくーん!!!』
葵さんが走ってきた。
『葵さん、おはよー』
『おはよー!待った?』
『僕も今来たところだし全然待ってないよ。大体今集合時刻の10分前だし。』
『だよねー。いやーテンション上がっちゃって早く来すぎちゃったよー。もっと蓮君もテンション上げてこうよ!!!』
『僕だってテンション上がってるけど・・・いやー、こないだの事思うと本当に申し訳ないなと・・・』
『もー、蓮君ったらー。切り替えてこようよ!折角正式に付き合うことになったんだし!!!』
『そ、そうだよね。今日は楽しんでいかなきゃだよね。』
僕たちは、まず喫茶店で軽く昼食を取ることにした。
『私アイスコーヒーとフレンチトーストでー。蓮君はどうする?』
『僕アイスコーヒーだけでいいや、朝飯食べてきちゃったし。』
『えー、デート前に食べてきちゃったのー?もう蓮君たらデート慣れしてないんだから。』
『本当にごめん・・・え、葵さんってデート慣れしてるの?』
『いやー私も始めてだけどデート関係の本とかめっちゃ読んでイメトレして慣れたもん!』
『そうなのかー。じゃあ今日のデートプランとか任せるよ。僕この辺り良くわからないし。』
『どーしよっかなー。まずカラオケとか行こうかなー。』
『カラオケかー。僕始めていくなー。』
僕たちはカラオケで、お互いの好きなバンドやボカロ等の歌を歌いあった。
密室なのを良いことに葵さんがやたらと密着しようとしてきたのには、困ったが・・・
それだけ愛されてるということなのかな・・・
その後僕たちはゲーセンに来た。
『ねぇクレーンゲームやってー。あのキャラクターのぬいぐるみ欲しいー。』
『2人プレイのゲームやりたいから一緒にやろーよー。』
僕は絶賛振り回されております。でも楽しい。幸せってこういうことなのかなと感じています。
携帯が何回か鳴っているようですが、後で見ます。今デートの邪魔だし携帯の電源切りました。
『ねぇ最後にプリクラ取ろうよー!記念!記念!』
『恥ずかしいけど・・・良いよ・・・』
『蓮君はプリクラ撮ったことある?』
『無いよ・・・だって男一人じゃプリクラ入れないじゃん・・・』
『そうだよね・・・最近のプリクラ男だけじゃ入れないもんね・・・私も男の子とプリクラ取るのは初めてだよ!』
『じゃあ蓮君行くよー。笑顔でポーズ取ってよー!』
初めて撮ったプリクラを見て驚いたのは。プリクラ補正って凄いなって事。葵さんの可愛さが増してるのはもちろんだが、こんな僕ですら目が大きくなってたり、肌がきれいになってたりしてイケメンに見える。
それに慣れた手つきで落書きしていく葵さん。
葵さんの落書きはみんな可愛くて羨ましい。僕絵下手だし・・・
でも流石に、初デートの文字にハートマークは恥ずかしいよ・・・
そんなこんなでデートは終わり、幸せを噛みしめながら電車に乗った僕。
そういえばメール来てたな。携帯の電源入れるか。
なんだこれ・・・受信メール37件だと・・
全て美雪ちゃんだ・・・
「寂しい・・・相手してよ・・・」
「なんで無視するの・・・もしかして私の事嫌い?」
「レン君に捨てられたら私もう生きていけないよ・・・」
「ちょっと待ってよ・・・本当にレン君は私を捨てたの?」
等のメールが続きそして最後に・・・
「もう良いよ・・・レン君に嫌われたなら生きてる意味無いもん。サヨナラ・・・」
と残してメールが止まっている・・・
これを見てショックを受けた・・・
葵さんとのデートにうつつを抜かしてる間にこんなことになるなんて・・・
自分は人一人救えないのか・・・
とりあえず、生きてることを信じてメールを送るしかない・・・
「ごめんね・・・美雪ちゃん・・・課題ずっとやってて携帯見てなかったよ・・・もう許してもらえないかもしれないけど許して・・・美雪ちゃんの事大好きだし、絶対美雪ちゃんを見捨てたりしないから・・・生きててほしいよ・・・」
葵さんとの約束も破っちゃってるし・・・本当に自分駄目人間だ・・・
二兎を追うものは一兎も得ずということわざがあるように、みんなを救うなんて贅沢無理なのかな。
僕は電車の中でそう思ったのだった。