表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Two melons  作者: のりふみ
4/4

廃棄物

その時、ふいに雄太の携帯が鳴り出した。

(こんな時間に電話をかけて来るなんて)

番号は雄太の知らない相手からだった。


「君が603号を救い出してくれたのか。

 礼を言うよ。ありがとう」

電話の相手は、少女の事を知っているようだった。

「あなたは誰ですか?彼女は何者なんです。

 あの洋館で何があったんですか?」

「質問攻めだな。私はその娘の保護者のような者だ」

「我々は追われている。

 どうかその娘は外に出さないで欲しい」

「どういう事なんです」

「すまないが、今はこれ以上君に答える事は出来ない」

雄太の質問に答えず、そのまま通話は切れた。


少女はまだガタガタ震えている。

「今、君の保護者って人から連絡があったよ。

 きっとすぐに迎えに来てくれるよ」

「私は廃棄される。廃棄される」

少女は虚ろな目でうわ言のように繰り返す。

「大丈夫。僕がそんな事させない」

「マスター、嘘つかない」

雄太は右手を上げておどけてみせたが、少女は不思議そうな顔をしただけだった。

でも、雄太の言った事を理解したのか、少女の震えは止まっていた。

「それにしても泥だらけだな。シャワーを使っていいから、泥を落としてきなよ」

「私は一人でシャワーを浴びた事がない」

「え?」

「いつも身体は緒方が洗ってくれた」

「はあ?それはつまり、僕に手伝えと?」

少女はためらいも無く、その場で服を脱ぎ始めた。

脱いだグレーの服の下には何も付けていなかった。

「ちょつと」

雄太は、思わず顔をそむける。

「マスターが、シャワーを浴びろと言うから脱いだのだが。

ここでは服を着たままシャワーを浴びるのか?」

「そういう訳じゃないんだけど」

「じゃあ、マスター。私にシャワーを浴びさせてくれ」

あまりの出来事に、雄太の頭は混乱していた。

(あの娘、服の下に何も付けていないなんて、親の虐待?

それに、あの娘には羞恥心というものが無いのか?)


雄太はためらいながらも、少女にシャワーを浴びさせる。

「マスターは、服は脱がないのか?

服が濡れているようなのだが」

「あ、あのね。服はこの後、洗濯するからこのままでいいんだ」


(裸の女の子の身体を洗って、何も出来ないなんて、拷問だ)

浴室から出た少女は、さっきまで着ていたグレーの服を着ようとしていた。

「ちょっと、その服はボロボロだからさ。

少し待って、何か着るものを用意するよ」

雄太はそう言ったものの、この部屋に女性用の服が有るはずも無く、タンスの奥から少し大きめのTシャツを出してきた。

「今夜はとりあえず、この服を着てくれ。

いや、どうか着てください」

少女はグレーの服を握りしめ、離そうとしない。

「その服は大事なものなんだね。

大丈夫、捨てたりなんてしないよ。

キレイに洗っておくから安心して」

ようやく少女はグレーの服を離して雄太か用意した服を着た。

「僕もシャワーを浴びてくるから、そこで座って待ってて」

雄太が大急ぎでシャワーを浴びて出てきた時には、少女は既にスースーと寝息をたてていた。

(あんな事があったんだ。この娘も疲れただろうな。

それにしても似ている)

少女の顔は雄太が高校時代に好きだった彼女にそっくりだ。

(園部の奴、今頃どうしているかな?)

雄太は昔の事を思い出しているうちに眠ってしまった。


「身の程を知りなさい!」

そう言うのはクラスメイトの園部玲子。

「雄太ってさあ、ホント変わり者ね」

「私がさ。もし駆け落ちしてって頼んだら。

雄太は一緒に来てくれる?」

「私の気持ちなんか何も知らないくせに。雄太なんか大嫌い!」

パチン!

園部に平手打ちをくらった瞬間、雄太は目が覚めた。

「・・・夢か」

ベットの上ではまだ少女は眠っている。

少女の顔を眺めていてふとおかしな事に気が付いた。

夕べは身体中傷だらけだった少女に今は傷が一つも見当たらない。

血だらけだった足もキレイになっている。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ