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Two melons  作者: のりふみ
3/4

マスター

登場人物

阿久根 雄太:本編主人公。バイトに明け暮れる、将来不安な23歳。

謎の少女(304号):雄太が高校生の時、コクって振られた相手に激似の少女。

あと少しでも遅かったら、二人は建物の倒壊に巻き込まれていただろう。

雄太は少女に聞いてみた。

「何故君は、あの状況で逃げなかったんだ」

少女は小さく震えている。

まるで人の手の中に居る小動物のように。

(この子、おびえているのか?)

「ごめん。今、怖い目に合ったばかりなのに。

 とりあえず、ここはまだ危ない。

 下まで降りるよ」

雄太は少女を連れてアパートの近くまで降りて来た。

電灯の明かりの下で見ると、二人共ひどい格好だった。

「僕の家がすぐ側にあるんだ。行ってもいいかな?」

少女は始めから全く雄太と目を合わそうとしないし、

問いには肯定も否定もしてくれない。

あまりの恐怖に自我を失っているのだろうか?


部屋に上げた少女は突っ立ったままだった。

「身体を拭くから、そこに適当に座って」

雄太がお湯を含ませたタオルを持って来ても少女に動きは無い。

洋館の庭で空を見つめてた時と同じだ。

「まさか、言葉がわからないの?」

「僕は、雄太っていうんだけど君の名は?」

「304号」

少女がしゃべった。

「さんまるよんごう?変わった名前だね」

少女は初めて雄太の方を向いた。

「私の名を呼ぶ、あなたは私のマスターか?」

少女はおかしな事を言い始めた。

(きっと記憶が混乱しているだけなんだろう)

雄太は今はとりあえず少女の言うとおりにしようと思って

「解ったよ。僕の言う事を聞いてくれるならマスターでも何でもなるよ。

 だから君の足の裏を見せて」

「解りました。マスター」


ここまで裸足で歩いてきた少女の足の裏は血まみれだった。

雄太がタオルで足の裏を拭くと、さすがに痛むのか少女の顔は

苦痛に歪んだ。

「良かった。君にも感情は有るんだね。

 何が合っても無表情なのかと思って心配したよ」

「感情は理解出来る。だが意識して実践した事は無い」


(どうもこの娘とは会話が噛み合ないな)

「君のご家族に連絡したいから、電話番号とか教えてくれないかな?」

「私には兄弟は居たが家族は居ない。博士からは最も優秀な者だけに

 家族が与えられると聞いていた」

そう言い終わると、突然少女の表情は強張った。

「私は落伍者。廃棄される物。

 何故生きている。あそこで死ぬべきだった」

そして頭を抱えてガタガタと震え出した。

そんな少女を見て雄太には、もうどうしていいのか解らなくなっていた。


その時、ふいに携帯が鳴り出した。

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