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Two melons  作者: のりふみ
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火事、救出

登場人物

阿久根 雄太:本編主人公。バイトに明け暮れる、将来不安な23歳。

飯星 菜々子:雄太のバイト先に勤める大学生。雄太が告白したが振られた。

森枝 綾子:雄太が住むアパートの大家の娘。アラサー。若い頃結婚したが出戻ってきたらしい。

謎の少女:雄太が高校生の時、コクって振られた相手に激似の少女。

次の日、雄太がバイトに来てロッカーで着替えて出て来たら、

夕べ告白し振られた彼女が待っていた。

彼女の名は飯星菜々子。

同じバイト先の仲間で大学生。

「雄太くん、昨日はごめんね。

 私、別に雄太くんの事、キライって訳じゃないのよ。

 なんて言うか、今は恋愛対象って見られないっていうか、

 雄太くん、優しいし、当分はお友達で居たいなって」

「菜々子ちゃん」

「そういう訳だから、これからも今までどうりじゃダメかな?」

(良かった、嫌われてる訳じゃ無かったんだ)

「僕も気まずい雰囲気は嫌だから、これまで通りでいこうよ」

「うん」

彼女は手を振って仕事に戻って行った。

(思ってた通り、菜々子ちゃんはやっぱり良い子だな。

 でもまてよ。今の状況が続く限り、二人はお友達止まりって事?)

雄太は違う意味でダメージを受けたのであった。

(まあ、『お友達』って言っても、あの時よりはましか)

ーーーーーーーーーーーーーーーー

高校の入学式の次の日、雄太は昼休み、裏庭まで園部玲子に呼び出された。

「あなた、昨日私の事見てたよね?」

「なんだよ。別にお前の事、ストーカーしてた訳じゃねえよ」

「どこまで見てたの?」

「は?」

「まあいいわ。あなたこれから私の下僕になるのよ」

園部はとんでもない事を言い出した。

「な、何言ってんの?」

「表面上は私の友達って事にしといてあげるわ。まあ、他人の目も有るからね。光栄に思いなさい」

「もし、あなたが昨日の事を誰かにしゃべったら殺すから」

「それはさ、あれは見られたらマズい事だったのかな?」

それから3年間、園部から『友達』という名の下僕をさせられるのであった。


ーーーーーーーーーーーーーーーー

雄太がバイトから帰って着替えていると、玄関チャイムが鳴った。

出てみると、綾子さんが居た。

「雄太くん、今日はマロンの事、ありがと。

 お礼という訳じゃないけど、夕飯のおかず、作り過ぎたから持って来たの。

 良かったら食べてね」

「綾子さん、いつもすいません」

「それから、今夜は両親不在なの。

 良かったら夜這いに来て私の事、食べてね♡」

「それは遠慮しときます」

「え〜。雄太くん、私、淋しい〜」

「マロンも戻って来たんだから淋しくないでしょ?」

「冗談よ。雄太くんって、ホント真面目人間ね」

(この人の言ってる事、どこまで本気なのか解らない)


夜中、妙な寝苦しさで目が覚めた。

窓の外がぼんやり赤い。

カーテンを開けると、朝にマロンを見つける為に登った丘の上に

火の手が上がっていた。

(まさか、あの洋館が火事?)

雄太はあわてて飛び起き、アパートを出て丘へと登って行く道に行ってみた。

そこには既に大勢の野次馬で人だかりが出来て居た。

「何が有ったんですか?」

雄太は集まっている一人に聞いてみた。

「警察の説明では、高台にある廃屋が燃えているらしいんだがね。

 どうやらそこまで消防車とか車が入っていける広い道が無いらしいんだよ。

 しかも土地の所有者が消防隊が入るのを拒んでいるらしいんだ」

雄太の頭に今朝有った少女の顔が浮かんだ。

(まさか、あの娘。まだあそこに居るなんて事はないよな)

目の前の道は警察が封鎖しているので登っていけない。

(そうだ、今朝、マロンと登って行った道なら)

雄太は大急ぎでアパートまで引き返し、暗闇の中、朝登った道無き道を

草むらをかき分けひたすら登って行く。

悪戦苦闘して、何とか迷わずに朝と同じ洋館の前に出る事が出来た。

目の前の洋館は火に包まれていた。

消防隊もまだ到着していない。

(あの娘は)

雄太の予感は的中した。

少女は朝と同じフェンスの向こうにぼんやり立っていた。

「君、早く逃げるんだ。そこに居たら焼け死んでしまう」

雄太はフェンスに貼り付き叫んだが、少女は動こうとしない。

雄太が居るフェンスの外でも相当の熱さだ。

フェンスの金網は既に火傷するほど熱くなっていた。

(どこかに中に入れる場所は?)

左右を見渡したが、入り口は見当たらない。

「あ」

燃え盛る炎の熱風で少女はよろけた。

入り口探して大回りしていたら間に合わない。

フェンスは時間をかければ、雄太になら登れない高さでは無いが

あの少女には越えられないだろう。

(悩んでいる時間は無い)

雄太はフェンスに突進した。

(これだけ錆び付いているんだ。きっと何とかなる)

「痛っ」

焼けた金網は雄太の身体に食い込み焦げた匂いがした。

「もう一度」

雄太は再度突進した。

ガシャーン

3度目の突進でフェンスは大きな音を立てて倒れた。

雄太は倒れていた少女を抱き上げ、草むらに向かってダイブした。

二人はそのまま坂を転げ落ちた。

その直後、大音響と共に建物が崩れ落ちる音がした。

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