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ともだちの形

部屋は、昔とあまり変わっていない。


窓の位置も、机も、本棚も。


カーテンの色だけが少し落ち着いた。


ベッドは少し大きくなった。


でも。


まくら元にいるものは、同じだった。


クリーム色のテディベア。


水色のリボン。


右目が少しだけ下がっている。


もこ。


星乃結音は、ゆっくりとベッドに腰かけた。


長くなった髪が肩に落ちる。


高校の制服。


少しだけ大人びた体つき。


でも動きは、昔と同じだった。


両手でぬいを持ち上げる。


胸に抱く。


顔を寄せる。


綿の匂いがする。


洗った布と、時間の匂い。


もこはもう動かない。


話さない。


笑わない。


光らない。


それでも。


結音の腕の中には、ぬくもりがあった。


体温ではない。


記憶でもない。


もっと静かな何か。


長い時間を一緒に過ごしたものだけが持つ重さ。


結音はベッドに横になる。


もこを抱いたまま。


天井を見る。


昔と同じ場所。


昔と同じ角度。


結音はいろいろなことを知った。


出会いも。


別れも。


それでも残るものがあることも。


指がリボンに触れる。


やわらかい布。


結音は小さく笑う。


「……ね」


声は部屋の中で消える。


でも言う。


「ずっと、ともだちだよ」


答えはない。


ただ静けさだけがある。


否定しない静けさ。


結音は目を閉じる。


大丈夫。


もう一人で歩ける。


学校も。


街も。


世界も。


自分の足で進める。


もう泣かない。


夜も眠れる。


寂しくもない。


だって。


人生にはずっと。


願いでできた友だちがいるから。


ぬいぐるみの姿で。


静かに。


ここにいる。


永遠に。


窓の外で風が揺れる。


カーテンがわずかに動く。


もこのリボンが揺れる。


結音は抱きしめる。


昔と同じ強さで。


結音の部屋には、ずっと同じぬくもりがある。


形を変えても。


時間が過ぎても。


願いでできたともだちが、ここにいる。


【完】

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