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第六章 金貨とダンジョン

ダンジョン当日。

アルは今日も金貨を握りしめ、何度もそれを眺めていた。

「そんなに好きなの、そのコイン」

カルディが覗き込むように尋ねる。

「キラキラしてて、キレイだろ」

アルは少し誇らしげに答えた。

ビルが前に出て言う。

「まず俺たちが先行して魔物を倒しながら進む。

お前たちは遅れずについて来い」

その言葉を聞きながら、カルディは自分の足が震えているのを感じていた。

アルが振り返り、カルディの顔を見る。

「……怖いか?」

カルディは無言で、こくりと頷く。

「実はさ、オレも怖いんだ」

そう言って、アルはランタンを掲げ、剣を握り直した。

「でもな、カルディは俺が守る。

だから、絶対に離れるなよ」

カルディは左手に木の盾、右手にランタンを持ち、アルの後ろについて歩き出した。

薄暗いダンジョンの中で、足音とランタンの揺れる光だけが頼りだった。

その時だった。

「あっ」

アルの手から、金貨が滑り落ちた。

カラン、と音を立てて金貨は床を転がり、壁際の溝で止まる。

――いや、止まった、はずだった。

溝の奥から、もう一枚の金貨がぬっと現れたかと思うと、

パクリ、と音もなく、落ちた金貨を飲み込んでしまった。

次の瞬間。

「ポコ……ポコ……」

不気味な音とともに、金貨が分裂する。

二枚になった金貨は宙を跳ねるように動き、

子供一人がやっと潜れるほどの、狭い横穴へと消えていった。

「な……」

呆気にとられたアルは、気がつくとその後を追いかけていた。

「アル、待って!」

カルディの声も届かず、アルの姿は横穴の奥へ消える。

「ビルさん! アルが――!」

必死に呼びかけるが、先行していた大人たちは気づかないまま、

ズンズンと奥へ進んでいってしまう。

一瞬、迷いがカルディの胸をよぎる。

――でも。

カルディは歯を食いしばり、横穴へと身を滑り込ませた。

狭い穴を抜けた先は、

ひっそりとした回廊になっていた。


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