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第五十八章 凱旋と嫉妬

ラナは、どうやら夢中になりすぎていたらしい。

「あっ、いけない。凱旋パレードだった」

ようやく我に返ったラナに、カルディは呆れたような視線を向けた。

遅れてパーティー会場に到着すると、すぐに皇帝の声が飛んでくる。

「ここだ、ここだ」

案内された席順はこうだった。

皇帝、長男ラグナ、その隣にカルディとラナ。

続いて、エマとその婚約者、ユリアナとその婚約者、そしてジェニファーと――まだ十六歳の少女。

長男であるラグナの隣という配置は、明らかにカルディとラナへの配慮だった。

序列を重んじつつも、立場を強く示す席順である。

その対面には、勇者一行が並んで座っていた。

カルディが周囲を見渡す。

「……ケンタがいないな」

ラグナが肩をすくめる。

「ケンタなら、ボヘミアン衣装の女性五人に連れていかれたよ」 「なんでも、“もう終わったからエジプトがどうのこうの”って」

それを聞いた対面の神学者が、頭を抱えてぼそりと呟いた。

「……またやられた」

さらに続ける。

「ボヘミアン衣装の女性たち、毎日カルディ様に手紙を送っていたそうですよ」 「返事が一度も来なかった、と」

カルディは思わず首を傾げた。

「そんな手紙、来てなかったよね?」

ラナに同意を求めると、即答が返ってくる。

「一日一通どころか、十通ありましたよ」

カルディは呆然とした。

「え……?」

ラナは涼しい顔で続ける。

「“いとしのカルディ様”なんて書かれた手紙、貴方に直接渡せると思いますか?」

隣でラグナが吹き出した。

「ははははは!」

そこへ、ユリアナとエマが揃ってラグナの席に詰め寄ってくる。

「ねえ、この席順おかしくない?」 「どう考えても不公平でしょ」

ラグナは気楽に答えた。

「親父いわく、国の面積順らしい」 「姉さんたちの婚約者はいい人だけどさ」 「帝国内では小国だからね」

そして、さらりと付け加える。

「親父と俺、それにカルディくんは“皇帝枠”なんだよ」

一瞬で言葉を失うユリアナとエマ。

不満をぶつけきれなくなった二人は、話題を変える。

「……それより、私の杖は?」

エマが言い終わる前に、ラナが動いた。

カルディに絡まれる前に、さっと一歩前へ出る。

「私がもらいました」

そう言って、指で軽くつまんで見せる。

「返しなさいよ!」

エマが飛びかかる。

そこへユリアナも参戦した。

「まったく……お姉様に譲る気持ちもない妹ね」

ユリアナはラナから杖を取り上げ、得意げに掲げる。

「これは、私にしか使えないのよ」

次の瞬間。

杖の先からプラズマが伸び、周囲に走った。

「アワワワワ!」 「イギャー!」

感電した貴族たちの悲鳴が会場に響く。

ラグナが即座に立ち上がった。

「雷耐性もない奴が、こんな杖を使うな。危なすぎるだろ」

ひょい、と杖を奪い取り、そのままラナに返す。

「ほら」

ラナは何事もなかったかのように受け取り、静かに微笑んだ。


カルディは、エマの視線を真正面から受け止めたまま、低く言った。

「……わざと奪わせただろう」

「持ち主が変わったって、はっきり分からせるために」

エマは鼻で笑う。

「それは私の杖よ。すぐに――私に“調整”されるわ」

ラナは何も言わず、杖を差し出した。

次の瞬間。

「アワワワワァァッ!!」

エマの悲鳴と同時に、杖が激しく拒絶する。

ラナは即座に杖を奪い取った。

エマは歯を食いしばる。

「……もうすぐよ。杖が“変わる”から」

再び、ラナは杖を渡す。

「グァァァァッ!!」

今度は叫び声が歪んだ。

空気が凍りつき、視線が一斉にエマに集まる。

ラナは淡々と、再び杖を引き上げた。

エマの顔が真っ赤になる。

「……もう、いいわ」

「そんな杖……」

「私に、こんな恥をかかせて……!」

言い捨てるように叫ぶと、エマは踵を返し、会場を走って逃げていった。

ざわめきだけが、その背中を追った。


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