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第五十六章 宝箱ママの朝
朝方、カルディの圧縮収納の奥から、宝箱ママの声が頭の中に響いた。
『起きてるかい? あちらさんの皇帝が、話があるんだってさ。つなぐかい?』
宝箱ママが交換手の役割をしてくれなければ、無数に存在するコインの中から、どれの声を拾えばいいのか――カルディには判別できない。
その声に、隣で眠っていたラナがむくりと身を起こす。
「なになに、何事?」
以前、皇帝宛にコイン通話をしたのをきっかけに、最近はこうして頻繁に連絡が入るようになっていた。
カルディは半分眠ったままラナにコインを渡す。
「君のパパからだってさ」
ラナは即座に声を弾ませた。
「パパー、おはよう! 今日は何?」
役目を終えたとばかりに、カルディは再び眠りに落ちようとする。
――が、次の瞬間、毛布を容赦なく引き剥がされた。
「こら、二度寝禁止。早く準備して」
眠気眼で目をこするカルディに、ラナは続けて告げる。
「ラグナお兄様がね、妲己を倒して帰国したんですって」
一瞬の間を置いて、満面の笑み。
「凱旋帰国パーティーよ。ほら、支度!」
カルディの朝は、強制的に終わりを告げられた。




