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第四十七章 改宗しない勇者
「よう、カルディ。久しぶりだな」
軽い口調で声をかけてくるその男こそ、帝国が指名手配する犯罪者――ケンタだった。
「こちらは女王陛下のバトラーだ」
ケンタは肩をすくめて笑う。
「今は護衛兼……まあ、情夫ってやつをやっ
てる」
「今日はゆっくりしていけるんだろ?」
「積もる話もあるし、派手にやろうぜ」
カルディは目を細める。
「……相変わらずだな」
ケンタは金貨を手に取り、刻印を眺めて口笛を吹いた。
「へぇ……マジで皇帝になったのかよ」
「しかも姫と婚約? 奥手に見えて、やるじゃねえか」
カルディは言いかけて、言葉を切った。
「俺は実は――」
「わかってるって」
ケンタが遮る。
「どうせ、俺を改宗させるために連れ戻しに来たんだろ?」
「帝国の狗になる気はねえけどな」
そう言って、にやりと笑う。
「今日は無礼講だ。婚約者も見てねえ」
「酒と女くらい、付き合えよ。釣れないこと言うな」
一瞬の沈黙のあと、カルディは小さく息を吐いた。
「……わかったよ」
二人の視線が交差し、かつての因縁と、これからの波乱を予感させるように、夜の宴が始まろうとしていた。




