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第四十三章 行けない理由

「宗教講義はそこまででいい。本題に入ってくれ」

神学者は小さく息を整えた。

「……勇者ケンタ様の件です」

カルディの目が鋭くなる。

「ケンタに、何があった」

「彼は――サタン教徒です」

「夜ごと、サトウヌルス教の巫女と密会しておりました」

ラナが息を呑む。

「我々は再三、改宗を試みました。

人の時代を導く旗頭である勇者が、

神の時代を求めるサトウヌルス信者では、示しがつきません」

「結果、ケンタ様は耐えきれず――エジプトへ逃亡しました」

神学者はカルディを真っ直ぐに見据える。

「貴方様とケンタ様が親交深いことは承知しております」

「一部では、貴方様が“悪魔のささやき”を行ったという噂もありました」

一瞬、室内の空気が凍る。

「しかし」

「半年に渡る聖者教・マニ教合同の調査の結果、

貴方様が潔白であることは確認済みです」

「――だからこそ」

「その汚名をそぐためにも、ケンタ様を説得していただきたい」

カルディは黙ったままだ。

ラナが一歩前に出る。

「神学者様のお言葉通りです。

カルディ様は潔白。

戴冠式でもお世話になった聖者教を裏切るおつもりはありませんよね?」

カルディ

「だが、そこへは行けない」

「海路も陸路も、フェニキア人の領地を通る」

ラナ

「ただ通過するだけでは?」

神学者が首を振る。

「フェニキア人は、太陽神ヘリオスの化身――

不死鳥フェニックスを信奉する民族です」

カルディ

「……つまり、“人の時代”を掲げる我が帝国は、

改宗を強制する危険な国家と見られているわけだ」

机の上で、コインが小さく震えた。

『借金させりゃ、言うこと聞きそうなんだがな』

――カルディにしか聞こえない声。

神学者は立ち上がり、最後通告のように言った。

「もしケンタ様が改宗しない場合――

聖者教およびマニ教は、領内から教会を撤退させます」

「これは、共通の意思です」

そう言い残し、神学者は去っていった。

執務室に残されたのは、沈黙だけだった。

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