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第二十七章 巫女と赤ワイン
「じゃあ、今晩一緒に巫女に会いに行ってみるか?」
カルディの一言に、ケンタは即座に反応した。
「不純異性交遊!」
「いやいや。畑を豊かにするための祈願だろ?
不純な要素は一切ない」
「……じゃ、行こう」
その晩、二人は牢獄をこっそり抜け出した。
――翌朝。
何事もなかったかのように、二人は牢獄へ戻っていた。
ケンタはというと、やけに上機嫌で、興奮が冷めやらない様子だった。
「すげぇ……すげぇ世界だな……」
ディオニュソスの血――赤ワインの味も、すっかりお気に召したようだ。
カルディはふと尋ねる。
「昨日の村の女性たちを見て、どう思った?」
「最初は、角のある鬼かと思ったぞ。
……あれ、つけ耳だったんだな」
「そう。この世界では、あれがエルフであり、鬼なんだよ。
ディオニュソス教の耳飾りなんだけどな」
「ってことは、日本にもディオニュソス教が信仰されてたってことか」
ケンタは大きくうなずき、カルディの肩を叩いた。
「お前、いい奴だな。
帝都には俺の方からうまく言っておく」
そう言って、牢の鍵を開ける。
「もう牢獄に戻らなくていい」
ケンタはそのまま帝都へと帰っていった。
――数週間後。
カルディのもとに、女王の妹であるユリアナ姫から、帝都への招集状が届いた。




