第二十五章 終わらない聖戦
「それは……無理だと思うぞ」
カルディがそう言うと、ケンタは顔をしかめた。
「帰る手段が無いって話か?」
半ば叫ぶように言う。
「違うんだ」
カルディは静かに否定した。
「転生者の僕も最初は混乱した。でも、この世界で言う“サタン”は、悪魔じゃない」
ケンタは眉をひそめる。
「この世界の根幹にあるのは、ギリシャ神話のディオニュソスだ。
ギリシャでの救世主とされ、その生まれ変わりが“聖者様”と呼ばれている」
「ディオニュソス教は、東の果てまで宗派を広げている。
今では、世界宗教の八割がその教徒だ」
カルディは淡々と続ける。
「ディオニュソスの血は赤ワイン。
彼は農耕神で、巫女と関係を持ち、子が増えれば作物も豊かに実る――そういう思想なんだ」
「つまり……巫女がエッチの対象ってことか!」
ケンタは目を輝かせて食いついた。
「それがサタンと、どう関係あるんだよ!」
「ディオニュソスは、国や文化ごとに別の名前で呼ばれている」
カルディは指を折りながら挙げていく。
「サトゥルヌス、バール、ヴァルナ、オシリス。
名前の揺れだけでも、ディオニュソス、ディオニソス、ディオニーソス……数え切れない」
「その中で、“サトゥルヌス”は、サタン、あるいはサンタとも呼ばれる存在だ」
「サトゥルヌスの木の下に贈り物を置く風習が、クリスマスの原型。
そして――この世界では、それが“サタン信仰”として残っている」
ケンタは、言葉を失ったまま、黙り込んだ。
この聖戦は、最初から終わるはずがなかったのだ。




