第二十三章 水で竜を救う
カルディは両手を組んで大きく伸びをした。
「さて……やるか」
高圧収納から、水を取り出す。
竜種に向けて、ほんの一瞬だけ――
高圧水を浴びせた。
「よし、成功」
竜は反応した。
井戸に突っ込んでいた頭を引き抜き、周囲をきょろきょろと見回す。
乾ききっていた体表が、わずかに潤いを取り戻していく。
竜が伸びを始めたのを確認し、カルディは声をかける。
「そのまま動くなよ」
上体が持ち上がった瞬間を狙い、高圧水を斜め下――湖の方向へ射出した。
「噴射っと!」
水流に押されるように、竜はまるで泳ぐかのように湖へ戻っていく。
巨体が湖に沈み込んだ、その直後――
「次だ」
今度は湖の中心から、上空に向けて高圧水を噴射する。
「……よし、これも成功」
水は霧となり、雨のように降り注ぐ。
湖面はみるみるうちに水位を取り戻し、干上がっていた湖が再び満ちていった。
◇
その光景を遠巻きに見ていた、魔法使いの装いをした姉姫は、困惑した声を漏らしたらしい。
「……私たち、竜を捕まえに来たのに。どうしましょう?」
――と。
それを聞いていたのは、コインだ。
◇
カルディは、そのまま逃げるように家へ帰った。
そして父に事情を話す。
「王族はお前の顔を知らん。まあ、大丈夫だろう」
父はそう言った。
だが、世の中はそう甘くなかった。
カルディが牢に入れられている間に、現地へ後から到着した兄のどちらかが、
目撃証言を集め――
「竜を湖に返したのは、カルディだ」
と、あっさり口にしてしまったのだ。
報告を受けた父は、深いため息をついたあと、こう言った。
「……反省してるフリをして、牢屋にでも入ってろ」
というわけで――
カルディは、今ここにいる。




