第十九章 仇討ち、待ち伏せ
魔獣に乗った男が、正面から通路へ踏み込んできた。
その瞬間、カルディの視界の端で、空中を漂うコインが確信を告げる。
――間違いない。
ロングボウはすでに通路の入口を捉えていた。
「アル、モエのかたき……砕けろ」
放たれた矢は轟音を残し、一直線に飛ぶ。
魔獣の眉間へ吸い込まれた瞬間、頭部が弾け、乗り手の腹を抉った。
一撃。
魔獣も男も、声一つ上げることなく沈黙した。
だが、終わりではない。
死体とカルディの間へ、屋根の上から豹の魔獣に乗った男が舞い降りる。
カルディは即座に、全身を覆う巨大な伝説盾を取り出した。
盾を構えた瞬間、彼の姿は完全に隠れる。
八極拳の肘打ちを思わせる、低く沈んだ構え。
「いっけー!」
叫びと同時に突進。
ただでさえ速い八極の踏み込みに、身体強化と瞬歩が重なる。
――速すぎる。
狭い通路。
魔獣は横に避けられず、背後には死体が転がっている。
盾越しの視界は、上空のコインが補っていた。
カルディは肘の形で盾を密着させ、さらに加速する。
前脚を刈る。
崩れた魔獣と乗り手の胴体が、盾の上に乗り上げた。
「ドンッ!」
凄まじい衝撃が全身を叩く。
「砕けろっ! ――シールドバッシュ!」
八極の正拳突き、そのまま盾を叩き込む。
魔獣と男は地面を転がり、数百メートル先まで吹き飛んでいった。
二体は、まるで壊れた人形のように動かない。
――もう一人。
「あらあら、やられちゃったか」
猛獣に跨った革鎧の男が、路地へ姿を現す。
「これだけやって、ただで済むと思うなよ! ――面を見せろ!」
魔獣の前脚が伸び、盾を引っ掛けて倒そうとする。
カルディは即座に盾を壁へ向け、支点にした。
右手には、すでに鉄槍が握られている。
踏み込み。
突進の勢いのまま、槍が魔獣と乗り手を貫いた。
串刺しになった男は槍を抜こうと暴れるが、
最後までそれが叶うことはなかった。
静寂。
「……アルお兄ちゃん。モエ」
カルディは、その場に膝をつく。
「かたきは、うったからな……」
声を殺そうとして、できなかった。
涙が地面に落ちる。




