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第十四章 伝説級の盾

「……まだ、金が余るねぇ」

店主は、もはやカルディの存在など視界に入っていないようだった。

カルディ

「ガタガタ……(なら、お釣りを……)」

そう言いかけて、ふと天井を見上げる。

そこには、店の天井いっぱいに鎮座する――

全身を覆い隠すほど巨大な盾が吊るされていた。

無骨で、重厚。

ただそこにあるだけで、空気が沈む。

カルディの視線を追って、店主が「ああ」と声を上げる。

「あの盾かい」

店主は軽々とそれを外し、床に立てかけた。

床が、きしりと悲鳴を上げる。

「異世界から呼び出された勇者ってのはさ、エクスカリバーみたいな剣は大好きなんだけど」

肩をすくめる。

「その“対”になる盾は、なぜか人気がないんだよねぇ」

にやり、と笑う。

「じゃ、これも付けとくよ」

カルディ

「ガタガタ……(え、ちょっと……)」

「――ただし」

店主は即座に続けた。

「これじゃ、足りないね」

指を二本立てる。

「金貨、あと二〇〇〇枚は頂かないと」

その瞬間。

カルディの横に、ずしりと音を立てて革袋が現れた。

いや、正確には――

現れてしまった。

カルディが指示したわけではない。

宝箱のママとコインが、勝手に、慣れた手つきで金を吐き出している。

止められない。

止める手段が、もう無い。

「毎度あり」

店主は満足そうに言った。

「いやぁ、一生分稼いだねぇ」

そう言って、伝説級の盾をカルディに押し付ける。

カルディは反射的にそれを収納へと放り込む。

だが――

身体が、動かない。

指一本、瞬き一つ、できない。

「サービスだよ」

店主はそう言うと、

まるで荷物のようにカルディを持ち上げ、

手荒に荷車へと放り込んだ。

そのまま、家まで送り届けられる。

――抵抗の余地は、なかった。

その後、カルディは高熱を出し、

丸一週間、風邪で寝込むことになる。

誰もが後に知ることになる。

この日手に入れた盾こそが、

彼の人生を最も重く、最も理不尽に変えた――

伝説級の災厄であったことを。

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