第十三章 押し売り
店主はカルディの財布を一瞥すると、ぱっと目を輝かせた。
「――金貨二〇〇〇枚、かい?」
そう言った瞬間、返事を待つこともなく棚からスクロールを掴み取る。
「瞬歩、シールドバッシュ、身体強化!」
次々とスクロールが開かれ、光が弾けるようにカルディの身体へ叩き込まれていく。
「普通は自分でスキルをかけるもんだけどねぇ。今日は特別だよ、特別」
止める間もなく、身体が勝手に軽くなり、硬くなり、妙な力が満ちてくる。
「……これでも、まだ金が余るねぇ」
店主は別の棚へ移動し、同じスクロールを五枚まとめて引き抜いた。
「運が良くなるスクロールさ。クリティカルってのは、名人でもなかなか出せないもんだけど――」
にやりと笑う。
「このスクロールは確率を二〇%も上げてくれる。五枚使えばどうなる?」
答えを待たず、指を鳴らす。
「一〇〇%クリティカルってわけさ!」
カルディ
「ガタガタガタ……(もう、いいです……)」
歯の根が合わず、言葉にならない。身体は固まり、反論どころではなかった。それをいいことに、店主の手は止まらない。
今度は、さらに別のスクロールを五枚。
「クリティカルが出せるなら、これも必要だろ?」
「クリティカルは普通の打撃の数倍だ。それをさらに倍にできたら――?」
指を折って数える。
「ダメージ二倍を五枚。通常のクリティカルの、十倍のダメージだ。どうだい、凄いだろ?」
カルディ
「ガタガタガタガタ……(だから、もういいですって……)」
だが、その声は誰にも届かない。
「あ、そうそう」
思い出したように、店主が付け加える。
「さっきお前が触った《アキレスの呪い》って魔具ね」
「身体はフルプレートみたいに硬くなる代わりに、足首だけは通常の半分の強度になる」
にっこりと、悪意なく告げる。
「蹴り技なんか使うんじゃないよ? ――ポッキリいくからさ」
カルディ
「ガタガタガタガタガタ……
(弱点増やして金取るって、詐欺ですよね……)」
その日、カルディは“買い物”という概念に、深い恐怖を刻み込まれた。




