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第十二章 アキレスの呪い

店の中は、想像以上に物であふれていた。

棚から床まで、得体の知れない置物や魔具が雑然と並び、歩くだけでも一苦労だ。

「……歩きづらいな」

カルディは通路を確保しようと、邪魔そうな置物をどかそうとした。

その瞬間――

ボワッ

白い煙が立ち上り、瞬く間に人型へと変わる。

「え?」

次の瞬間、足首をがっしりと掴まれ、身体が宙に引き上げられた。

「なっ――!?」

逆さまにされたまま、床に溜まった水の中へ頭から突っ込まれる。

――ゴボッ。

視界が暗転し、肺に水が流れ込む。

引き上げられたかと思えば、また水の中。

出されては沈められ、沈められては引き上げられる。

延々と、繰り返される。

店主の女性は、口元に手を当てて目を見開いていた。

「……あら?」

カルディ

「ゴボゴボー!(助けてー!)」

「ゴボゴボゴボゴボ!(これは何ですか!?)」

「ゴボゴボゴボ!(いつ終わりますかー!?)」

返事はない。

ただ、無慈悲な上下運動だけが続く。

――どれほどの時間が経ったのか。

丸一日、二十四時間が過ぎたころ。

ようやくその拷問は終わった。

カルディは床に投げ出され、仰向けのまま微動だにしない。

足首には、くっきりと消えない手形が残っていた。

「……ピューピュー……」

口から水を吹き出す音だけが、かろうじて生の証だった。

店主が覗き込む。

「生きてるかい?」

カルディの瞳が、かすかに動く。

「これはね、『アキレスの呪い』っていう魔具さ。高いんだよ。……払えるのかい?」

「ボコボコ……(払える?)」

そう言った――その瞬間。

ドサッ。

カルディの横に、大きめの革袋が出現した。

「動けないみたいだから、代わりに払っておくよ」

宝箱のママの声だった。

店主は革袋を持ち上げ、「ジャラジャラ」と音を立てて揺すりながら笑う。

「さて……何枚入ってるかね」

テーブルの上に金貨を並べ、十枚ずつの山を作っていく。

「ひー、ふー、みー、よー……」

その光景を、床に転がったままのカルディは、薄れゆく意識の中で見つめていた。

――俺、スキル……買いに来ただけなんだけどな……。

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