第十一章 夜に現れる魔法通り
カルディは訓練場の片隅で、息を整えている。
「毎日訓練を重ねても、アルに追いつけない……。それどころか、このままじゃ護衛職にすら就けないんじゃないか?」
思わず、ワン老師の方を見る。
「良い指導というのはな、後になって効いてくるものだ」
老師はそれ以上何も言わず、ただそう繰り返すだけだった。
――本当に、そうなのか?
沈んだ気持ちのまま立ち尽くすカルディを見て、コインが不憫そうに声をかけてきた。
「あるじ、あるじ。魔法通りの突き当たり左手の店で、スキルが買えるみたいなんですよ」
「……魔法通り?」
聞いたこともない名に、カルディは首をかしげる。
「この街に、そんな通りあったっけ?」
「その通りはですね、夜の二十二時に現れるんです。街の門を門番が閉めると、ひょっこり出てくるらしくて」
胡散臭い話だ。だが――
「強くなるには、行くしかないですよ」
コインが嘘をつく理由はない。
その夜、門が閉まる時刻に合わせてカルディは街門へ向かった。
観音開きの巨大な門が重々しく閉じられると、今までただの扉だった場所に、締まる事で道が現れた。
禍々しい店構えが並ぶ、薄暗い通り。
魔法通り――その名に偽りはない。
突き当たり左手の店に入ると、異様な空気が肌を刺した。
(瞬歩、シールドバッシュ、身体強化……)
コインに言われた言葉を思い出す。
「それを買えば、カルディもまともになるんじゃないか」
「……あいつら、俺のこと考えてくれてたんだな」
こみ上げるものをこらえ、そっと涙をぬぐう。
店の奥、正面の椅子に座っていたのは、色気を隠す気など微塵もない、ボンテージファッションに身を包んだ熟女だった。
カルディは一歩前に出て、言った。
「瞬歩と、シールドバッシュと、身体強化のスクロールをください」
「スクロールなら、そこにあるよ」
ぶっきらぼうにそう言うと、彼女は杖で棚を指し示した。
棚には、複数のスクロールが無造作に突き立てられていた。




