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第一章 三歳を越えた禁忌
人は、生まれた時から前世の記憶を持つ者は、三歳まで生きられない――
それが、この世界の常識だった。
理由は誰も知らない。
ただ、そういう子供は例外なく、三歳になる前に死ぬ。
クラウディア家の四男として生まれたカルディは、五歳の春、その“禁忌”を踏み越えた。
ある朝、目を覚ました瞬間だった。
自分が「子供」であるという違和感。
言葉にならない知識が、頭の奥でゆっくりと形を成していく。
――数字の並び方。
――文字の組み方。
――歴史という、積み重なった時間の感覚。
だが、不思議なことに「自分が誰だったのか」だけは思い出せなかった。
名前も、家族も、暮らしていた場所も。
残っていたのは、学びの“輪郭”だけだった。
カルディは小さな手を見つめ、意味もなく握っては開いた。
五歳の体に、五歳ではない何かが宿っている。
誰にも言えなかった。
言えばどうなるか、なぜか分かっていたからだ。
――三歳を越えた者は、生きられない。
それでも、カルディは生きていた。




