君と僕の合い言葉
――はぁ、はぁ、はぁ、なんでこうなった……!!僕は……やってない……!!
夜中の住宅街をひたすら走る一 雄二。
―三十分前
夜中の0時。気がつくと雄二の手には包丁が握られていた。
そして、そこには血まみれの見知らぬ三人の死体。
どうやら、一家三人を殺害してしまったようだ。
だが雄二にはその記憶はない。それはそのはず。雄二は解離性同一性障害、つまり二重人格だ。
そう、雄二のもう一つの女の人格がやったのだ。
ここでは人格Sとしておこう。
しかし雄二自身は、自分が二重人格だということを知らない。
雄二はわけがわからず、そのまま包丁を床に落として逃げてしまった。
――なんでこんなことに……!
すると、雄二の中に潜む人格Sが思う。
――逃げる姿も可愛いわ
そして、警察に見つかってしまった。
被害者の悲鳴を聞いて、誰かが通報したらしい。
いや――通報したのは彼自身。正確に言えば、人格Sだ。
「僕は……やってない!」
雄二は必死に訴えるが、聞き入れてもらえず、そのまま逮捕されてしまった。
しかし、当然諦めるわけにはいかない。弁護士を呼び、無実を証明しようとした。
だが、雄二は自分が二重人格ということを知らない。つまり、そのことを主張ができない。
そのため、知らないうちに自分がやったのではないかと思い始めてしまう。
弁護士は言う。
「どう頑張っても、あなたがやったというところに辿り着いてしまう。何か他に、自分はやってないと証明できるような根拠はありますか?」
雄二は答える。
「わかりません……」
そして裁判当日。
人格Sは思う。
――これで君と心中できる……愛してるわ、もう一人の私。やっと一つになれる♡これが私と君の愛言葉♡
そして裁判長から判決が下される。
「判決を言い渡す。被告人、一 雄二は……死刑に処す。」
弁護士は、悔しそうな表情を浮かべる。
「被告人、最後に言っておきたいことはありますか?」
裁判長にそう問われると、雄二は少し沈黙したのちに言う。
「僕は……誰なんですか」




