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悪役令嬢令嬢と呼ばれた彼女を一途に思い続けた俺の話

悪役令嬢令嬢ルートをひらいたのは……やっぱり一途な愛でしょ?

作者: 木村 巴

明日8.29に発売のアンソロジーコミック収録された記念に、番外編をアップします〜(*´ω`*)

「悪役令嬢と呼ばれた彼女を一途に思い続けた俺の話」の番外編です。こちらをお読みくださると今作がよりわかりやすいかと思います。

https://ncode.syosetu.com/n2986jv/

アンソロジー本もこちらも、どうぞよろしくお願いします。




 学園の裏手にある庭は、ほとんど人が訪れる事のない場所の様だ。静かで、ほとんど手入れもされていない様子が見える。

 まぁ……都会に住む子供達には、草むらをかき分けて庭の中に入る行為自体、好まないのだろう。


 さあ〜っと吹く風が木々を、葉を揺らす。風で揺られたせいで、葉に遮ぎられていた日差しが差し込んできた。ゆらゆらと風に合わせて、木漏れ日も揺れている。

 その木漏れ日が顔を照らした為、眩しそうに顔を顰める──フランシス。




 チチチチッと一羽の小鳥が囀る。


 この小鳥が辺境の軍事を司る、監視用の魔法生物とは気がついていないなんて……英雄様も都会に出て、腑抜けたものだわ。


 ……いや、恋をして……かな?



 あ! ほら! フランシスが夢中になっている、悪役令嬢が来たわ!

 嗚呼! このヘタレ! 声をかけなきゃ!

 あ、ほら! 今よ、今!



「こらこらキャロル。また息子の様子を見ていたのかい?」


 そこに、静かに歩いて来たのは私の旦那様だ。今もなお衰える事のないムッキムキの、素敵な素敵な……私の旦那様。

 にっこり笑って、近づいて来た旦那様にぎゅっと抱きつく。


 いまだにこうやって抱きつくだけで、赤くなって慌てる旦那様が可愛い過ぎる。こんなに厳つい見た目をしているのに、いまだにこんなに初心(うぶ)だ。



「あら旦那様。だって、気になるんですもの。私の可愛い息子が変な事に巻き込まれてしまうかもしれないじゃない?」

「ん? あの子も一人前なんだから、あんまり干渉してはいけないよ」

「わかってるわ。あんまりな時だけよ」

「それよりも……私の事もかまっておくれ」

「! もちろんよ旦那様!」



 私は少し拗ねる可愛い旦那様に、満面の笑みで答える。



 でも……やっぱり、ヒロインも攻略対象も(みんな)いるのよねぇ。


 私は、ふうとため息をついてから魔力装置を止め流れてくる映像を切った。

 そして旦那様とお茶をすべく、軍事司令室を後にする。歩きながら、ふと横を見ると厳つい旦那様がニコニコしているのを見て……この世界(乙女ゲーム)について思い出した日の事が、鮮やかに蘇ってきた。





☆★☆





 私は物心ついた頃には、自分が転生者であると気がついていた。けれども、なんの取り柄もない平凡な主婦の記憶を持つ私に、いったい人生二度目だからといって何が出来るというのだろうか。いや、何も出来る事なんてない。


 ただ、周囲からは落ち着いた子供だと思われていただけだったと思う。


 それでいい。特別目立って良い事なんて何もない。静かに平凡に、前世の様な家庭を築いて……今度こそ長生きしたい。


 あんまりはっきり覚えていないが、事故か何かで死んだのだと思う。急に記憶が途切れているから。

 そうは言っても、うっすらとした……ぼんやりした記憶があるくらいなのだ。なぜ私に前世の記憶があるのか、本当に不思議だった。


 今世の私は、平凡な伯爵家の令嬢だ。


 家柄こそ平凡だが、まぁ〜それはそれは見た目が整っていた。貴族令嬢はみんな美人が多いが、その中でも美人だったと思う。

 自分で言うのもなんだけど、ね。


 そんな私には、兄と姉がいた。実家の伯爵家は兄が継ぐ。姉がお年頃になると、やはり美しい姉に求婚者は多かった。

 けれど、ついでとばかりに、まだデビュー前の私にも(いや、むしろ私の方が)求婚者はかなり多くいたみたいだ。


 両親はよりよい条件の家に嫁入りさせるべく毎日楽しそうに、あーでもないこーでもないと言いあっていた。


 姉の求婚者で有力なのは、同じ伯爵家ではあるが我が家よりも歴史も財力もある家か、子爵家ではあるがとにかく資産家な家のどちらかと思われた。


 ついでに私に来ていた求婚者は、公爵家や候爵家といった高位貴族からも打診があるようだった。


 姉は、私の求婚者の方が高位貴族な事に不満気だ。そんな事を私に言われてもなぁ〜別に私は高位貴族に嫁ぎたくなんかないんだけど……その辺は前世の記憶に引きずられているのかも。

 前世の記憶がなくても、私の性格からして上を目指すタイプじゃない。


 ただ勤勉な日本人気質のせいか、学園でも真面目に過ごすため、先生や周囲の評判がすこぶる良くて……更に求婚者は増えるばかりの日々だった。


 本当にどうしたものかと思っていた矢先に──我が家に辺境伯からの婚約の打診が届いた。


 これは王家も絡む婚約の打診で、順番や年齢のタイミングをみると、姉に来た縁談だろう。


 なにせ私はデビュー前だから。

 この世界では、高位貴族以外は()()()()デビュー後に正式に婚約するのだ。




「い……嫌よ! 絶対に嫌っ!!」


 姉は辺境伯は高位貴族とは言えども、辺境に住む人達の様なムキムキな人は嫌だと叫んで泣いた。

 両親には、王家も絡む婚約を断る事も出来ないのに姉が嫌だの一点張りで、ほとほと困り果てていた。



 いやいやいや、ゴリゴリマッチョいいじゃない!


 王都に住む貴族は嫌がるかもしれないが、前世の記憶がある私には魅力的なだけだ。

 むしろ、マッチョは好みだ!


 はっ! そうか。そのための前世の記憶なのねと、まるで天啓かの様に感じた私は、すぐさま両親の元に向かった。


 泣き崩れるお姉様に、とうとう怒り始めたお父様の声が扉越しに聞こえる。


「いい加減にしないか! これはもう王命なんだ! 格下の我が家から断る事なんて出来るわけがないだろう!」

「だって! 嫌なものは嫌なんだもの!」



 室内はカオスだ。

 父は激昂し、姉は泣き叫び、母は貴族の義務を解きながら言い争っている。



 私はそっと部屋に入り、届いた釣書を確認した。

 怒りで我を忘れている両親とお姉様は、私の存在にすら気がついていないようだ。釣書を確認してから、私は静かに話しかけた。


「お父様お母様、婚約の打診は我が家に来たもので、お姉様の名前は記載されておりませんわ……お見合いには私が行きます」


 私の発言に、一瞬シンと時が止まったかのように静かになった。


「……馬鹿を言うな。お前にはブラッドレイ公爵家からも婚約の打診が……」


 一番最初に冷静になったお父様が、微かに震えながら弱々しく言う。


「ええ。けれどもまだデビュー前で正式なものでもありませんし、こんなに嫌がる姉様よりも私の方が丸く収まるでしょう」


 だって王命でしょう? と言えば、確かにそうだとみんなが思ったのだろう。


 両親はだまりこみ、姉は手のひらを返した様に満面の笑みで笑う。


「ああ! キャロルありがとう! 本当にありがとう!」





 こうして、私が辺境伯とのお見合いに向かう事となった。


 辺境伯は現在二十五歳だという。前当主が隣国との戦いの後遺症から、五年前に急遽引退した。そのため、若くして当主を継いだ苦労人だ。


 そのせいもあって(それだけではないが……)結婚相手も探せない状況だったらしい。


 私とは十歳差となるが、貴族間の婚姻としては……まぁ許容範囲だろう。

 それにしても……と、手元にある釣書をもう一度みた。


 王都ではまず見かけない程のゴリマッチョだ。王都は騎士ですら、そこそこの細マッチョだ。


 ああ、なんて素敵なお姿なんだろう。強そうで、逞しいこの腕に触れてみたい!

 王都で人気がないのが、不思議でしょうがない。こんなにかっこいいのに。

 釣書を胸に抱き、ほぅとため息が漏れる。そんな私をお父様が複雑なお顔で見ていたが……完全に無視した。


 私とお父様は未だ燻る辺境の警備の為に、領地を離れて王都に来る事が出来ない辺境伯の元に向かっている。辺境に向かうにあたり、国王陛下から直接「頼む」とのお言葉を頂いてしまったときには、流石の私も「そこまで!?」と震えた。


 まぁ、辺境の防衛を任せている家の跡継ぎがいないのは大問題か。

 それに、王家が何も手を打たないのも外聞が悪い。それでこその王命だろう。


 高位貴族過ぎず低過ぎす、お金持ち過ぎず無さ過ぎず、問題も大きなものは特にない平凡な伯爵家。

 そして、婚約者がいない美しい娘がいる家。


 条件が当てはまり過ぎて、(うち)以外にそんな家はないだろうと、私も……後から思った。




 王家と辺境伯家から出して貰った豪華な馬車に揺られる事、七日間。(これでも早く到着した。我が家の馬車ならば十日以上かかるだろう)


 とうとう辺境伯のお城に到着した。

 馬車の窓から、要塞の様な雰囲気の堅牢な城が見える。城は、どこまでも黒くそして高くそびえ立っていた。


 そして、城門から並び立つ多くの兵士や騎士達に見守られ、馬車で城の入口までゆっくりと進む。


 カタンと小さな音が鳴って、馬車が止まった。ああ、緊張する。

 髪型の乱れはない? お化粧も大丈夫よね? ちらっと横を見ると、違う意味で緊張し顔色の悪い父が見える。気の小さい……所謂小心者だ。まぁ、王都に生まれ育った貴族は、みんなこんなものだろう。だからこそ、この縁談は私にとって魅力的なのだから。


 コンコンと馬車の扉を小さくノックされた。返事をした父がまず馬車を降りて、続いてエスコートされて私も降りる。


 昼過ぎの太陽は少し傾いていて、大きな体躯の辺境伯様の真後ろにあるせいか……彼の顔は影になりよく見えない。


 私は父とともに、正式な礼を取り辺境伯様のお言葉を待った。



「二人とも顔をあげてくれ、遠路はるばる辺境の地にお越しいただき感謝する」


 低いバリトンボイスで、耳から聞こえる声までも好みすぎる。顔をあげて見上げた先に見える辺境伯様は、大男という表現で合っているのか……それはそれは大きな人だった。

 とにかく、まず目を惹くのは……釣書の倍はあろう、ムキムキ筋肉!



 そう、想像以上の超ゴリマッチョだった。


 そうか、盛るというか……逆に筋肉を小さく描くとか……そんなのもあるのか。そうか。盛るの逆で削る。

 うんうん。釣書の筋肉を削ったんだな。もったいない。



 ただその辺にウロウロしている辺境の兵士達も、騎士達もみんなすべからくムキムキしていた。

 その中にいて、なお一際大きくムキムキしている。それが初対面の辺境伯様だった。


 お姉様は嫌がる訳だ。私は嬉しいけどね。もう、その盛り上がった胸筋に、差し出す腕の筋肉にトキメキしかない!


 顔は厳ついけれど、整っている。頬に大きな傷痕が見えるが、イケメンの部類だと思う。なんて、理想的なの!



 ただ、この世界で顔に傷痕があるだけで醜いと拒否されてしまうのだ。こんなに素敵なのに。こんな時、前世の記憶があって良かった。


「まずは部屋に案内しよう。そこでゆっくりしてくれ」



 大きな体を小さく見せようと、精一杯縮こませる姿に……キュンと来てしまった。

 私はもうすでに、このまま王都に帰る事なくこの人に嫁ぎたい気持ちでいっぱいだった。


 可愛い過ぎるでしょ〜!!




☆★☆




 旦那様はとにかく大きく、逞しく、そして……この上なく優しかった。



 お父様は初日に正式な書類にサインだけをして、逃げる様に王都に戻った。後は、私達で決めて良いとの事だ。そうは言っても王命だし、伯爵家から断るという事はない。


 シルベーヌ城に滞在して数日すると、毎日所謂「後は若いお二人で……」という様な二人きりのお茶会がある。


 城内は要塞の要素が強すぎて、庭という概念があまりない。城から出れば自然豊だから、庭を作る概念がないのかもしれない。

 今日も朝から騎士達との訓練を終えた辺境伯様を待って、訓練場の近くの執務室でお茶会となった。

 辺境伯様を待つ間、訓練するムキムキの騎士達が見えてむしろご褒美だわ。とホクホクだ。


「遅れてすまない」


 訓練後に水浴びをしてきたのか、しっとり濡れた雄っぱ……ゲフンゲフン、胸筋が素敵だ。鼻血が出そう。なんとか取り澄まして「お待ちしておりましたわ」なんて答える。




 ああ、辺境伯様が持つとティーカップすら小さく見える。あんな、ごっつい指でティーカップの取っ手を持つの、器用すぎない? そして可愛いすぎない? はぁ~好き。


 いつもは辺境伯様の事が知りたくて、質問攻めをしてしまうのだが、今日はそんな事をぼんやり考えていると…………いつもよりも真剣な顔の辺境伯様が、咳払いを一つしてから話し始める。


 え、かっこいい。



「キャロライン嬢、君は若くて、その……とても美しい……そして、王都での評価も高く、ものすごい人気で釣書も山の様に来ていたと聞いた」


 いや、誰だよ情報漏らしたの! 事実だけに否定も出来ない。いや、辺境伯家でも嫁候補の情報は集めるか……


「もし……こんなおじさんとの縁談は、王命だからと断りにくいなら……その……」


 ええ~っ! これ、振られてる?? ヤダヤダ!


「違います!! 辺境伯様は本当に最高の雄っぱいです!」


 あ、ヤバい。間違えた。



「違います! あの、最高の胸筋……じゃなくて、筋肉……それも違うか。えっえっと、顔もかっこいいし、優しいし、声も好きだし……」



 ああ、これじゃただの変な女だわ! どんどん焦る私は、いらない事まで言い募ってしまう。



「えっと、あ! そう! タイプ! 私の好みのど真ん中です!」



 そう言い切ると、目の前のムキムキマッチョは文字通り頭の先から足の先まで、真っ赤に染まって硬直した。



 頭から、湯気出てたかもね。



 でも私も、負けないくらい真っ赤だったと思う。二人して、短くない間見つめ合った後……


「でっ……では、このまま婚姻を進めても……」

「あ、はい。ぜひお願いします」


 こうして私達の婚約はすぐに決まり、一年待って結婚した。




☆★☆





「こんな私に、こんな美人が嫁いでくれるなんて……今でも夢だったんじゃないかと、朝起きて君の姿が見えないと思うんだ」


 これが口癖になる程に、私を大切にしてくれる……もう、旦那様そっくりの息子を二人も産んだのにね。更には私のお腹には三人目がいる。次こそは私に似た女の子が欲しいんだそうだ。


 すでに子供ながらムキムキマッチョとなっている息子二人も、とても可愛いのに。まぁ、女の子が一人いてもいいなぁと、私も思ってはいたが……。



 そうして産まれたのは、私にそっくりな、それはそれは可愛い男の子だった。もう、性別とか関係なく自分に似た子が一人いても嬉しいものだと……その時はそう思うだけだった。



 衝撃を受けたのは次の日だ。ウキウキとしながら、主人が二人の息子を連れて来た。どうやら三人目の息子に考えた名前を報告に来てくれ様だ。


 その名前が──



「男でも女でも通用する様に考えていた名前があるんだ! 顔を見てこの子にピッタリだと思ったんだ! フランシス良い名前だろう?」




 「フランシス」と──


 そう名付けられた我が子を見て茫然とする。そして、頭の中を一瞬にして情報が駆け巡る。



 私に似た容姿で銀髪に藍色の瞳。

 ムキムキな兄弟の末っ子。細身で筋肉のつかない自分に自信がなく、劣等感の塊で卑屈な性格。

 本来は魔術師向きな事に気がつかず、兄達に追いつきたい一心でひたすら身体を鍛えていた。学園で魔術師の適性に気がつき、その後魔術師として大成し、英雄と呼ばれるまでになる。

 ……陰キャな魔術師。いつもは、魔術師のローブを目深に被り顔は見えない。顔が見えるとその美しい顔に驚くという隠れ美形キャラ。

 そこをヒロインに「あなたはあなた」「お兄さんと比べる事はないんです」と癒され……

 最終的に魔術の才能を人前で出せるようになり、在学中のイベントで「英雄」と呼ばれる魔術師になる。


 陰キャのため、自分以外に決して靡かない美形溺愛キャラ。



 攻略対象人気ナンバー三位のフランシス・シルベーヌ!



 って!!!! ああああああああ〜! これ、ウチの子じゃん!!!!


 どうしてシルベーヌで気がつかなかったの!


 辺境伯家の家名シルベーヌじゃない!




 いやいやいや、当事者でもなく親世代って! 気づくかい! 気づかないわ! はっ!


 つい一人ツッコミをしてしまったわ!


 そっかぁ〜これ、乙女ゲー転生だったかぁ〜。うう〜ん。

 もし、私の転生に意味があるなら、これはうちのコを幸せにしてもいいって事よね?





 そこからは、もう魔術の才能があるってわかってるんだから楽勝よ!


 魔術師の専門家につかせて、自己肯定感マシマシになるように、他の兄弟たちもあわせて大切に大切に育てたわ!


 ちなみにゲームでは三兄弟のはずが、その後二人の妹も産まれたわ! この世界は、魔法で出産も楽なのよ? 無痛分娩みたいな魔法があるのよ。



 娘もお兄ちゃん達が大好きだし!

 私も旦那様と今でもラブラブなの。最高ね。


 後から考えると、もしかしたら本来の世界線(ゲーム軸)で嫁いだのは、姉だったのかもしれない。見た目というか、大まかな容姿は近しいもの。


 そもそも、姉に来ていた縁談だったし、私が強引に姉と入れ替わったんだもんなぁ。



 あのゲームで、辺境伯家の家族仲が良かった描写は無い。

 もし姉が嫁いでいたら、こんなに仲良し家族じゃなかったんじゃないかしら?

 辺境では子沢山が求められるから、三兄弟だった可能性はあるけど……。


 ゲームで魔術師の母に触れる描写は無いし、兄達と違う自分が嫌だから、フランシスは陰キャになっちゃうんだもん。


 いや、あのゲームのフランシスはもう今のフランシスとは違うって事かも? 上の二人の兄も?


 まっ……まぁ、ほら、今は子供もゲームの設定よりも多いし。家族仲は良好! 結果オーライ…………よね?



 フランシスなんか、あれよあれよという間に大魔術師の称号を得て、スタンピードで「英雄」の称号を獲得してたわ!


 当時十三歳よ? え? もう? って思ったわよ。本来なら、学園のイベントで貰う予定の称号なのに……うちのコすごい!


 スタンピードでは、一人先陣をきって高台から微笑みながらバンバン魔法を撃ちまくる姿から「戦場の悪魔」とか「戦場の天使」とか言われているって聞いて、母は腰抜かしたわ。


 怪我しませんようにと、毎日泣いて祈った日々を返して欲しい。

 そんなに強いなんて、どうして誰も教えてくれなかったのよ!



 美形なのも隠してないし、ちょっとヘタレだけど自慢の息子だ。




☆★☆



 そしてとうとう学園の卒業パーティーの日。


 フランシスは仲良しのアラン君といちゃいちゃしながら、楽しそう。


 エリザベス子女は腐女子ねぇ……なんて、途中まで楽しく見ていたのに、ヤキモチを焼いた旦那様に、あれよあれよという間に寝室に連れて行かれて…………





 朝よ。





 あれ? 断罪とかどうなったんだろう? 悪役令嬢ちゃん大丈夫かしら? あのヒロイン転生者よねぇ????



 くるんと寝返りを打つと、あらまぁ素敵な私の旦那様。朝日に照らされるお顔も、雄っぱいも、上腕三頭筋も素敵!


 ほぅ。と素敵すぎてため息が出ちゃう。



 ああ、こうやって、今も毎日、旦那様に恋してる。


「……旦那様、大好き」

「私の方が好きだ」

「やだ。起きてらしたの?」

「もちろん。私の最愛の事は、一言だって聞き漏らしたくないからね」


 うふふと、また少しベッドで仲良ししてから、のんびりと起きる。



 しばらくすると、一階が何やら騒がしい。旦那様が、渋々様子を見に行ってくれた。

 しかし、なかなか帰って来ない。しょうがないので私も、支度でき次第一階に降りた。



 そしたら、王都新聞の一面にフランシスが初恋のあの子と大きく写されていた。

 急いで新聞を奪い取る。



 うふふふふ。さすが、私の息子ね!




 自分から動いた結果、好きな人と上手く行ったのね。

 ……見れなかったけど。



「神獣様に乗って、あの子がお嫁さん連れて来てくれるでしょ〜。さあ! お迎えの準備しなくちゃね!」





 だって、家の息子が悪役令嬢ルートに入ったって事だもの!















この後、悪役令嬢が可愛いくて悶える母、父、兄妹とフランシスが悪役令嬢をひたすら可愛いがるという新たな辺境の日常がプラスされたとか、されないとか。


また、ムッキムキの辺境で脳筋に囲まれて、脳筋とともに辺境の戦いの中で活躍する悪役令嬢(ハイスペック令嬢)が、意外とこちらの生活に向いてるな〜となったり、母の筋肉ムキムキ愛と旦那愛をひたすら聞かされる生活になったりするなんていうのは……よく聞く異世界あるあるよね( ー`дー´)キリッと母がドヤ顔してるらしいけれど、みんなからハイハイと流され、旦那様だけがデロデロに甘い顔で「そうだね」と返事してくれるという日常がプラスされたとか。





本編をたくさんの皆様にお読み頂きありがとうございました!

おかげ様で素敵な漫画にして頂きました!

「悪役令嬢が婚約破棄されたので、今から俺が幸せにしますアンソロジーコミック4巻」に収録されておりますので、ぜひお読みくださると嬉しいです。

他、豪華な先生方と共演出来て感激です!


|д゜)チラッあ……

ちなみにA面はやっぱり見当たりません……泣いてません。゜(゜´Д`゜)゜。

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― 新着の感想 ―
フランシスと悪役令嬢の辺境伯領でのドタバタ劇読みたいです。
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