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「狩人の主人公がピンチで燃え上がる話」

作者: 結晶蜘蛛


 狩人として呪魂を倒した後、遺跡で何か売れるものがないか漁ることにした。

  どうせこの世界に先はないけど、生きてるのだから少しぐらいはいい暮らしをしたい。

 都市シティより外に出ると廃墟となったビルが並んでいる。

 生命エネルギーは人工の街のほうが淀みやすい。

 そのため私たち狩人が倒す呪魂は遺跡となった街に足を運ぶことが多い。

 そして、そこで「ジャンプ」と書いてる絵が描かれている本を発見した。

 もしかして売れるかもしれないと、私は持って帰った。



 そして、あーしはギャルになったのだ!

 いやさー、ジャンプとやらを読んで漫画にドはまりして、漫画ってやつをネットアーカイヴから読みあさったの。

 特に気に入ったは青春ものかな。

 あーしの家族って10人ぐらいに子供がいたんだけど、あーしは口減らし代わりに狩人組合に売られてからずーっと狩人として呪魂と戦ってきたから、こんな風に仲良く遊んだことなかったの。

 だから、あたしもこんな日常を過ごしてみたくて形から真似てみることにしたの。

 ギャルって明るく、みんなと楽しく遊ぶ存在だからね。

 あーしはそんやつになってみたい!



 あーしら狩人って呪魂を倒すのが仕事なのさ。

 呪魂ってぴえんな存在で、練魂術で使われたエネルギーがたまり淀んで現れる存在なの。

 周囲の生命エネルギーを吸い取って周囲の生物や土地をからしていく上に、特殊な力まで扱っちゃうから困ったものよね。

 そのうえ、成長した後はだいたい都市シティに向かって襲撃に来ようとするの。

 いまの主流エネルギーって練魂術を用いた生命エネルギーを変換したものだから呪魂にとっては絶好の餌なのよね。

 だからほうっておくとぴえんあことになるから、呪魂を積極的に狩りにいくのがあたらしら狩人ってわけ。



「うぎぎぎぎ……! これはマジでヤバイっていうか……!」

「うるさい! 音を乱さないで! なんてうるさい人間なの!」


 あーしは獣のように四肢で地面を蹴って、地面を転がった。

 葬送器で身体が強化されてるとはいえ、今回の呪魂の攻撃はマジパネェ。

 なにせ、黒い人型のような靄が大音量を放ってくるのだ。

 真ん中に黒い燕尾服と白いシャツ、お洒落な蝶ネクタイをした女性――そして、レコード頭!

 そんな珍妙な恰好の呪魂が指揮棒を振るうのに合わせて、20はいる黒い楽師たちが音の衝撃破をこちらにはなってくるのだから超大変。

 攻撃が当たると体内がかき回される感じがして気持ちが悪い、吐きそう。

 さっきも瓦礫にあたって一発で粉みじんになってたから威力がマジパネェわ……。

 葬送器で身体を強化してなかったら木っ端みじんだったわ。

 葬送器ってのはあーしら狩人が扱う特殊な武器。

 生命エネルギーを使って武器を作り出し、狩人を強化するんだけど呪魂に取り込まれないようにそれぞれの狩人の魂とリンクさせているの。

 だから、それぞれ狩人特有の心象が反映されて特殊能力を発現させているわけね。

 あーしの葬送器「熊崩ゆうほう」の能力は「獣化」。

 生命エネルギーでできた爪や毛皮をまとう能力だし。

 ネイルから伸ばした爪で地面をつかみ、いまも四つん這いに近い態勢で地面を駆け回っている。


「どうして私の演奏を乱すの! 私はここで演奏できればそれでいいのに!」

「あんた陣取ってる場所は練魂釜の共通路だし。あんたがどかないと都市シティへの練魂エネルギーが流れなくなるの! そうしたら、病院とかが止まって人が死んじゃう!」

「うるさい! 音を乱すな。なんだ、そのうわついた格好は!

 そんな軽い恰好で私の会場に入るな」

「なっ……! あーしの恰好は最先端のファッションだっつーの!」

「最先端? スカートの丈が短い、裾からシャツが出ている、肌ら焼けてる、爪が長い……どれもこれも格式がない。物事は格式をもってこそだ」

「くっそー! あーしが無学だからってファッションのことをとやかく言われる筋合いはねーっての!」

「本当に癪に障る――そら、砕けろ! フィナーレだ!」


 呪魂が指揮棒を振り上げ、采配と共に黒楽師たちが音を重ねだした。

 彼女らを中心に半円状に衝撃破が放たれ、あーしは吹き飛ばされる。

 壁にうちつけられたあーしを押しつぶすように衝撃の壁がおしつけられる。

 痛い痛い痛い痛い、肋骨がみしって音をたててる。

 音が大きすぎて、頭がぐわんぐわんと鳴り響いた。

 鼻や目から血がぼとぼとこぼれおちてる……。


「う、……ぐへぇ」

「む、まだ生きてるか。狩人というのは頑丈だな」

「……あーしのさ、熊崩ほうゆうってあーしに似てなくて意外とのんびり屋でさぁ」

「何を言っている」


 あー、視界がぐらぐらする。

 口のなか血の味しかしない感じ?

 ずきずきしすぎて、マジヤバイ。

 目に血が入って赤く見えるわぁ……。

 ああ、でも、だけど。


「だからさ、ここまで追い詰められないとやっと本気を出してくれないの? まったく誰に似たんだか」


 先ほどまで半透明な爪までしかでてなかった熊崩の輪郭が濃ゆくなり、太く厚い腕があーしを覆う。

 毛むくじゃらの毛皮にぶ厚い脂肪の胸、毛皮。

 あー、生きてるって感じになってきた!

 いっつもいっつも昔から簡単に勝てたことなんてなかったもんね! 


「ぐおおおおおおおおおおおお!!!」

「なんだ、お前は! 来るな! 規律を乱すな!」


 黒楽師たちが超音波を放ってくる。

 あーしは深く地面をえぐるほど爪を突き立て、力強く、走っていく。

 衝撃破を受けるが、引いてたまるか!

 これがあーしの熊崩ほうゆうだ!

 あーしは邪魔な黒楽師を跳ね飛ばし、呪魂を引き裂いた。


「馬鹿な……っ!」

「どんなもんだい! ギャルをなめるからだよ!」


 黒楽師が霧散していくなか、あーしは勝利の雄たけびをあげる。

 葬送器には淀んだエネルギーを浄化させ、通りをよくする機能がある。

 これで呪魂が居座りおきていた澱みは解決されるはずだ。


「はぁ、疲れた……」


 熊崩れを解除し、あーしは大の字で寝ころんだ。

 あー、血がどくどく出てる。

 目がかすんでるわぁ……まぁ、葬送器が治療してくれると思うけど。

 とりあえず、疲れたから、少し休んでからかーえろ。


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