婚約破棄された絶世の悪女
「アリアン・ラドリフ、俺はお前と
婚約破棄する。」
婚約者であるゼイファン王太子殿下から
冷たく吐き出された言葉は
婚約破棄だった。
「なぜ、でしょう。」
「なぜ?それはお前が1番わかってるんじゃないか?お前は神聖な女神の愛し子であるアイラをいじめただろう!?」
彼がエスコートしているのは私ではない。
アイラ・ネバーリア男爵令嬢。その人だ。
艶やかなピンクブロンドの髪に
アメジストの瞳、ゼイファンさまの髪色と同じスカイブルーのドレスに身を包んだ
愛らしい令嬢。彼女こそが女神の愛し子。
この国にはイリシリスと呼ばれる女神がいる。
女神イリシリスにはその昔、大切にしていた人間の娘がいた。それがこの国の初代女王であるマリア様だ。女神イリシリスは女王に未来視の力を与えた。
それ以来、数十年に一度女神イリシリスの愛し子が
現れ、その少女が代々女王から未来視の力を与えられるのだ。そしてこの代1234代目の愛し子として
ネバーリア男爵令嬢が選ばれたのだ。
「お言葉ですが,私はネバーリア男爵令嬢をいじめていませんわ。」
「そうやって嘘を塗り重ねても無駄だ!アイラから全て聞いている!!」
「男爵令嬢が嘘をついているという発想はないのね。」
「アイラが嘘をつくはずがないだろう!アイラを侮辱するな!」
「そう。ところで、私と婚約破棄したらそちらの男爵令嬢と婚約を?」
「もちろんだ!」
「レイフェルド様はどうするの?そちらの男爵令嬢らレイフェルド様と婚約を交わしていたはずだけれど。」
「レイフェルド様とは婚約を解消したの。」
それまで一度の口を挟まなかった男爵令嬢が口を
開いた。
「王命で結ばれた婚約を?」
「お義父様はわかってくださったわ。」
お義父様、ね。
「そう。」
まじめな国王陛下がここまで
使えなかっただなんて・・・。
失望したわ。
「婚約破棄を受け入れます。」
「金輪際顔を見せるな。」
「兄上,それは無理ですよ。だって彼女は僕の婚約者となるのだから。」