表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
珠音いろ  作者: 今安ロキ
第2章 プロ野球編
76/76

9回裏 珠音いろは奏で続く

長いシーズンが終わり、新生活に向けて準備する珠音と茉穂。

翌シーズンから生まれ変わるチームでの生き残りをかけ、覚悟を決めた上での転居。

新たな挑戦の日々を迎えるべく、彼女たちは一歩前へと踏み出した。

9回裏 珠音いろは奏で続く


 これほどまでに慌ただしい年末進行の経験はなかっただろう。

 珠音は自宅の荷物を段ボールに詰めながら、つくづく自身の物欲の無さに感謝した。

「こっち終わったし、手伝おうか?」

「大丈夫、こっちももう終わるから」

 同居人―”茉穂”―も同様らしく、自室の荷物はほぼほぼ完了している。

 思い返せば、女子プロ野球チームや栃木プラーゼンズでチームメイトとなっていた際も、とても年頃の女性2人が住んでいるとは思えない暮らしぶりだ。

 実家がカフェ経営ということもあってか、茉穂が休日の気晴らしになればと、キッチン用品やカトラリー、調味料一式に拘っていたくらいだろうか。

 余談だが、料理上手な茉穂はプラーゼンズ在籍時代より球団の勧め―”話題性の維持継続”―もあって動画配信チャンネルを開設している。

 学生時代より同性をして”美少女”と言わしめた容姿も相まってか、チャンネル登録者数と再生数は順調に伸びて僅かではあるが収益化も達成し、サンオーシャンズへの移籍以降も継続していた。

「結局、ここには2年も暮らさなかったな」

「そんなこと言ったら、私はちょうど1年ってところだよ」

 ペナントレースの劇的優勝、更には勢いそのままに日本一となった静岡サンオーシャンズは、当初予定通り球団21年目を迎える来シーズンより保護地域を沖縄県に変更し、球団名を沖縄サンオーシャンズに変更して生まれ変わる。

 二軍は静岡に拠点を残し、地元後援会の懇願も相まって静岡サンオーシャンズの名称を維持、ペナントレース中の公式戦でも草薙球場を事実上の第二本拠地として継続使用することも決まっている。

 球団借り上げの寄宿舎は静岡と沖縄の双方に用意されることになったが、珠音と茉穂など一軍での活躍を期待される多くの選手が、覚悟を決めて沖縄への引っ越しを決めた。



 球団の手配した業者が荷物を手早く回収し終えると、部屋の中はガランとして物悲しくなった。

 この日は浩平や洋輔など仲の良いチームメイトと忘年会の約束をしている。

 珠音の”プロ野球人生”と言えば、ファームリーグでも弱小のプラーゼンズに所属し、移籍先も”弱小”とされた静岡サンオーシャンズでの日々。

 海外ウィンターリーグへの挑戦など、年中無休の野球漬け生活を送っていた珠音にとっても、日本一まで全力で駆け抜けた今シーズンのペナントレースは、過去一番の長さを感じさせた。

 シーズン終了から秋季キャンプを経て以降、テレビ番組の収録に引っ張りだこの日々もようやく落ち着き、ようやくひと段落。

 今年一年の労を気の置けないメンバーでねぎらった後は、2人揃ってホテルへ宿泊し、翌日に不動産屋へ部屋を引き払ったらその足で沖縄の新居へと向かう予定だ。

「あれ、もうこんな時間か」

 スマートフォンのアラーム音が、静かな部屋に鳴り響く。

「ぜんぜん準備してなかったね、急がないと」

 手元に残しておいた必要最低限の荷物をまとめ、部屋を後にする。

 流石に会場へ荷物を持っていくことも気が引けるので、宿泊予定のホテルに預けてから向かうとなれば、時間に余裕はない。

「それじゃ、行こうか。みんなを待たせるわけにもいかないし、ちょっと急ごう」

 積まれた段ボールを横目に、珠音は玄関の扉を開き、後に続く茉穂を促す。

 今年はもうすぐ終わるが、既に来シーズンは始まっている。

 小走りでリズミカルな足音を奏でながら、珠音と茉穂は住み慣れた部屋を後にして、次なる一歩を踏み出した。

Pixiv様にも投稿させていただいております。

https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=27152387

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ