side.女の子
「はぁ…好き」
女の子は、ある日変な人に話しかけられていた時、颯爽と助けてくれた少女の事が忘れられないでいた。
あの人はなんという名前なのだろう、どんな人なのだろう、そんな事ばかり考えていた彼女は、その少女と再開する。
再開といっても、一方的に発見したという表現の方が正しい。
それ以来その少女をストーキ…後をついてまわるのが習慣になっていた。
今日も今日とて少女の後をつける女の子だが、決して話しかける訳では無い。
ただ遠くから見つめるだけで満足なのだ。
(好き好き好きすーきー)
(いつも自信なさげに歩いてる姿も、人の視界に極力入らないよう歩く姿も、青ざめている顔もぜーんぶ好ーきー!)
もはや病気とも言える女の子の思考は大分ねじ曲がっていた!
そんな日々を過ごしていたある日、ついにその恋?に進展が訪れる。
なんと件の少女が話しかけてきたのだ!
「へ、へい彼女、わしに何か用かい」
女の子はその尊さに目眩を起こしまう。
(ああ、好き!)
だがあまりの尊さに隠れてしまった。
これではお話なんてとっても出来ないわと、少女は後悔する。
ここは私から話しかけ直すべきよ!と女の子は勇気を振り絞る。
「あ、あの…」
しかし少女は逃げ出してしまった!
これは大変と追いかけるが、どんどん距離を話される。
「待って…」
そんな悲鳴にも似た声を上げたところで、赤信号にも気づかず車道に飛び出してしまう。
「あっ…」
気づいた時にはもう遅い、目の前に迫る車。
もはやここまでかと目を閉じたところで、体が宙に浮く感覚に襲われる。
(車に轢かれるのって思ったより痛くないんだ…)
そんな的はずれな事を考えながら恐る恐る目を開けると、なんといつも追いかけていた少女の顔が間近にあるではないか!
そしてお姫様抱っこされている事に遅ばせながら気づき、顔を真っ赤に染める。
お礼を言わないとという気持ちもあったが、少女のその凛々しくも青い顔をまともに見れず、ついつい逃げてしまう。
(ああ、やっぱり好きー!)