つけられてる?
前回変態を成敗したひろは、絶賛今日もぼっちなようだが…?
「つ…つけられてる…」
前世は暗殺ギルドに所属していた事もあったひろは、ここ最近感じる視線に悩まされていた。
相手はわかっている、この前助けた女の子だ。
流石は元暗殺ギルド、情報収集もお手の物。
だが何故つけられているかまではわからない、そこはぼっちのままなのだ。
そして話しかけようにも、ぼっちにはそれが出来ない。
そんな中女の子は日に日に距離を詰めてくる。
あせるぼっち。
(じゃ、じゃがこれは好機なのでは?)
もしやこれは友を作るチャンスなのでは?と。
女の子から悪意のようなものを感じとらなかったひろは、勇気を出して振り返る。
「へ、へい彼女、わしに何か用かい」
絶妙に言葉のチョイスを間違える。
そして擬音が入るなら、ニチャアとなりそうな気持ち悪い顔。
そんなひろの姿に女の子は電柱に隠れてしまった!
「あ、いえ、なんでもないです…調子乗ってすみません…」
ひろはボソボソと半泣きで前を向く。
(あー!なにがヘイ彼女じゃ!なんぱか!大体わしはもう合計で100越えじゃぞ!あのような幼子にそんな台詞吐いたらいかんじゃろう!?)
前世の自分が幼女に話しかける図を想像して鳥肌が立つ。
先日の変態も真っ青な事案である。
(しかし、相変わらず付かず離れずな距離をたもっておるのう…)
どうやら嫌われた訳ではなさそうだと一安心。
しかし対処法がわからないひろは…。
(よし、逃げるのじゃ)
とりあえず逃げる事にした!
そうと決まれば話は早い。
実は前世の知識と今世の努力によって、今世でも超人的な能力を持っているひろ。
だが、あえて一般的女児速度で駆け抜ける。
昔幼稚園で本気を出し、周りに引かれた事があり、それ以来能力は隠しているのだ。
背後ではひろが走り出したのに気づき、女の子も走り出す。
ひろはその最高速度を瞬時に見抜き、女の子よりやや速いペースで走り抜ける。
次第に女の子との距離が離れ、ひろは一安心、後方を振り返る。
「あっ…」
その瞬間目に入ってきたのは、女の子に急接近する車の姿。
女の子もそれに気づいたのか、慌てているが避ける事は出来ない。
助けに入ろうと急反転するひろ。
(いかん!いくらなんでも間に合わん!)
しかし女の子との距離はそこそこ離れている、このままでは間に合わない。
もはやここまでかと後悔した瞬時、ひろの周りで風が吹き荒れる。
(これは…魔力!?)
日本に転生して、一度も使えなかった魔法に驚きながらも、爆速で女の子を救出、お姫様抱っこで地面に降り立つ。
「はぁ…はぁ…大丈夫かの?」
この体では慣れない魔力の消費に肩で息をしながら、女の子の安否を確認する。
女の子はそんなひろを見てコクコクと首を縦にふると、何かに気づいたように、逃げ出してしまった。
「とりあえず元気そうで良かったわい」
ひろは遠ざかる女の子の背中を見ながら、満足そうに頷くのであった。